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高精度や実用性、そして十分なアフターケアといった特徴はこの30年、何ひとつ変わっていない。
2025-11-18 10:07:16
Posted by pndekopis
Category: 国内市況
今年、発表から30周年を迎えた「ザ・シチズン」。シチズンならではの実用時計として生まれたこのコレクションは、2005年以降、同社のフラッグシップと位置づけられるようになった。しかしながら、高精度や実用性、そして十分なアフターケアといった特徴はこの30年、何ひとつ変わっていない。そのユニークなキャラクターから透けるのは、シチズンの歩みそのものだ。
シチズンの創立65周年を記念して生まれた「ザ・シチズン」。1995年5月に発表されたそのファーストモデルは、「壊れないキカイはない」というキャッチコピーと、風防が割れた時計を大写しした広告ビジュアルで大きな反響を呼んだ。シチズンがこのモデルで目指したのは「ユーザーが自身の分身と考えて長く愛用できる時計」である。そのため同社は、生涯修理保証、10年間無償保証、保証期間内の無償定期点検といった画期的なアフターサービスを打ち出した。もちろん時計自体の完成度も高かった。デザインこそシンプルだったが、外装の質感は大きく向上し、搭載するムーブメントには、シチズンで最も高精度な「Cal.0350」が採用された。このムーブメントのベースとなったのは「エクシード」や「アセンダ」が搭載する年差クォーツのCal.03系である。シチズンは電池の寿命を3年から5年に延ばしたほか、ICで温度補正を加え、エイジングした水晶振動子を選別するなどの工程を加えることで、年差±5秒という超高精度を実現してみせた。
シチズンが設定した当初の年産数は、メタルバンド(CTZ57- 0523)とレザーストラップ(CTA57-0521)が各1000本ずつ。もっとも前者が12万円、後者が10万円という価格は、同年に発表された多機能モデル「アテッサ チタン」の2倍以上。シチズンが敢えて生産本数を抑えたのは、サポート体制まで含めて熟考された結果だが、企画担当者が売れ行きを怪しんだのも当然かもしれない。しかし発売日の5月28日には、ザ・シチズン用に開設したホットラインがパンクするほどの反響があり、初回出荷分はたちまち完売。ユーザーからの高評価に確信を得たシチズンは、以降、毎年のように、ザ・シチズンのラインナップとその機能を充実させることになる。そもそもは良質なベーシックウォッチとして作られたザ・シチズン。しかし同社はやがて、このコレクションをフラッグシップと位置づけるようになった。その試みのひとつが、機械式ムーブメントの採用だ。2010年、シチズンは約30年ぶりの新規開発ムーブメントをザ・シチズンに採用した。このCal.0910は、同社を代表する機械式のミヨタ8200系と異なり、ETA2892A2の互換機となりうる高級機だった。加えて初のザ・シチズン メカニカルには、優れた仕上げと、まとまりのあるパッケージが加えられた。
再びシチズンが機械式時計に力を入れるようになったのは2012年以降のことだ。この年、同社はムーブメントメーカーのラ・ジュー・ペレ、そして完成品メーカーのアーノルド&サンを擁するプロサーホールディングを買収。翌年には時計本体の製造関連部門を一本化し、時計製造を担う「シチズン時計マニュファクチャリング」を設立した。スイスとの協業と、マニュファクチュールとしての進化が生み出したのが、21年の新型自動巻きであるCal.0200だ。ムーブメントの設計と基本的な部品の製造はシチズン、そして地板と受けの装飾は、ラ・ジュー・ペレによるもの。結果として、このムーブメントは、ETA2892どころか、老舗の作る第一級の自動巻きに比肩するものとなった。しかもその精度は、ザ・シチズンにふさわしく、スイスのクロノメーター規格を凌駕していた。シチズンはこの傑作ムーブメントにふさわしい凝った外装を作り上げ、「メカニカルモデルキャリバー0200」としてまとめ上げた。








