5
2025-01-13 10:35:35
Posted by pndekopis
Category: 国内市況
時代の変化や流行に流されず、一貫してクオリティを提供する時計ブランドには、創業から1世紀を超える存在も少なくない。とりわけ機械式時計に対するこだわりの強いブランドは、ユーザーが求める厳しい基準を満たして信頼や安心を獲得してきたからこそ、現在の地位を確立しているのだ。本連載では、1世紀以上の歴史を持つ10の名門をピックアップ。第3回は【タグ・ホイヤー(TAG HEUER)】で、モータースポーツとの関わりに焦点を合てて解説する。
スポーツ計時のパイオニアにしてベンチャー企業のように挑戦的
モータースポーツとの関わりにおいて、タグ・ホイヤーは常にその最先端に位置してきたブランドだ。1911年には自動車用の旅程計付きダッシュボードタイマー「タイム・オブ・トリップ」を開発。1933年にはダッシュボード用クロノグラフ「オータヴィアー」を発表。これらにより、モータースポーツ分野で一目置かれる存在となる。
1960年代、ドライバーとしてレースに出場するほどのクルマ好きだったジャック・ホイヤーが4代目当主になると、その関係はいっそう密接になった。米国の国境からグアテマラの辺境地までメキシコ国内の公道3000kmを走る、1950年代の名門レース「カレラ パナメリカーナ メヒコ」のレベルの高さに感銘を受けたジャック氏は、1963年に完成したレーシングクロノグラフを「カレラ」と命名。信頼性の高いムーブメントと視認性抜群のダイアルが好評を博し、トップレーサーたちに愛用されたのだった。
↑1916年にホイヤー社が特許を取得したマイクログラフは、1/5秒計測が限界だった時代に初めて1/100秒計測を可能にした。青針が1周で100秒、目盛り1つが1/100秒を表す。
計時分野では、1916年に世界で初めて1/100秒単位の計測ができる「マイクログラフ」を開発したほか、1/1000秒、1/1万秒という精度の限界を最初に突破してきたのは常にタグ・ホイヤーである。そんな高精度時計の実績を活かし、F1やインディ500など、数々の名門レースでも公式計時を務めた。レーシングチームや著名ドライバーとの関係も広範囲に及び、1971年からフェラーリチームの公式計時を担当したのを皮切りに、アイルトン・セナなど数多くのチャンピオン誕生に立ち合った。
↑フェラーリの公式計時担当を始めた1971年、1/1000秒の精度を記録できる電子計時装置ル・マン センティグラフを開発。そのあまりの精度の高さに、フェラーリチームの抗議によってF1公式タイムが何度も訂正された。
2021年には、モータースポーツ界で長年共に活躍してきたポルシェと、長期かつ緊密なパートナーシップを組んだ。そもそもポルシェ カレラのネーミングの由来はタグ・ホイヤーカレラと同じレースで、ポルシェ911の誕生も同じ1963年。何か運命的なものを感じざるをえない。すでにコラボレーションモデルも2021年から継続中で、限定版は毎回すぐに売り切れるほどの人気ぶりだ。
2016年に発売されたスケルトン文字盤の「カレラ」をさらに大胆に再解釈し、最先端素材と革新的デザインを融合した2024年9月発売の新作。グレード2チタンケースに、マットブラックのセラミックベゼルと、クルマのエアインテークに着想を得た新しい一体型ラバーストラップを与えた。ほかにブラックとブルーもラインナップ。
新コレクションに共通するグレイン仕上げの凹型加工の側面を持った18Kローズゴールドケースに、セラミックベゼルを装備。文字盤のオープンワークはブランドロゴマークを象っており、日付ディスクまで丁寧にスケルトン加工。ダイナミックにして洗練された美学が伝わってくる。
https://www.rasupakopi.com/vuitton_z9.html
もちろん、スポーツ計時以外でも、現在のタグ・ホイヤーはチャレンジングな姿勢を多方面で発揮している。たとえば2022年、天然ダイヤモンドと同じ成分と組成を持つ”ラボグロウン(研究所で育てた)ダイヤモンド”搭載モデルは、時計界に衝撃を与えた。また、ブランドアンバサダーは、レーシングドライバーやスポーツ選手だけでなく、ハリウッド俳優など幅広いジャンルから起用。いま第4世代にあるタグ・ホイヤーコネクテッドにしても、スイス伝統の時計作りに基づいた外装の品質は、いわゆるIT系スマートウオッチとは一線を画す高級感だ。164年の歴史を持つタグ・ホイヤーだが、スポーツ計時と歩んできた歴史に敬意を払いつつ、まるでベンチャー企業のように未来を志向している。