経済学者って……

 先日荻上チキさんと話していて投げかけられた質問は,


「経済学者って何であんなに偉そうなんですか?」


というもの.あぁぁぁぁもう自分も含めて思い当たる節が多すぎる.その時は茶飲み話だったんでたいした話はしませんでしたが,実際どうなんだろ.

 僕の仮説は経済学帝国主義みたいな意識.経済学帝国主義って言うのは,ざっくり言うと「進んだ理論的的基礎と分析・実証手法をもつ経済学」を「他の社会科学に注入しなければならない」っていう意識です.経済学の啓蒙やメディアでの発言をする経済学者はこの意識が高いからこそ啓蒙やメディアで発言するわけです.僕自身もこの意識がないと言ったらウソになる……得に日本では経済学の適用範囲が狭く限定されすぎていると日々感じます.んで,多くの人は布教のノウハウがないから外から見てると「偉そうで押しつけがましい」ということになるんじゃないかしら.

 そしてもっと悪いのは,経済学帝国主義と文明化の使命wに執心しすぎるがあまり,経済学の基礎を忘れてしまっていることが少なくないことです.

 例えば,ほとんどすべての規制は経済厚生を低下させる(これは全く正しい).ここで経済学者は「だから規制は悪い」と主張することになるわけですが,実はこれにはずいぶん省略が含まれている.
 
 経済学者の話は

  1. 規制Xは○○兆円の経済的損失
  2. まぁ普通そこまで損してでも必要な規制ではないよね
  3. だから規制は悪い

の省略形にすぎないわけ.

 ここで気付かれると思いますが,第2段目って単なる憶測だよね.

 経済学が言えるのは「規制は経済厚生を低下させる」または計量的な評価も入れて「規制Xは○○兆円の経済的損失を生んでいる」という所までの話です.ここで「○○兆円損してでも必要な規制だ」という主張に対しては経済学の中で反論することは出来ない*1はずでしょう*2

 にもかかわらず,結論部分だけで「損してでも必要な規制だ」に反論しようとあがくとどうしても「偉そう」な印象になってしまうのかな.これに反省してこれからは厚生損失までで話を止めて「それから先は多数決にお任せします」という論理構成をするように心がけたいと思います.


 もっとも偉そうなことを言う傾向がある人が経済学者になるorを名乗る傾向があるだけだという身も蓋もない説もすてがたいですが……

*1:実はひとつあるけどここでは割愛.

*2:規制は厚生損失だけではなく市場参加者間の公平性,取引の公正性をも失わせるので実にダメですが,公平性・公正性よりも大切なものが……と返されると同じ話