【5月27日 AFP】アップルパイや野球同等、ビールは米国人の生活になくてはならないものだが、世界的なホップ不足により価格が高騰しつつある。

 原因は10年前に発生したホップの供給過剰にあると業界関係者は言う。このときホップ価格が急落したため、ワシントン(Washington)、オレゴン(Oregon)、アイダホ(Idaho)各州のホップ農家は作付け面積を減らした。

 余剰ホップについては長期保存用にエキスだけが抽出されたが、それも枯渇しつつある。

 世界中でホップが生産されるようになったため国際競争が激しくなってきたとの指摘もある。「クラフトビール」と呼ばれる少量生産のビール向けホップの主要サプライヤー「ホップユニオン(Hopunion)」のラルフ・オルソン(Ralph Olson)社長によると、ホップ不足によるパニックは前年、突如として起きたという。「海外からも醸造所が買い付けに来たが、『ホップがないとは何事だ?』と目を丸くしていたよ」

 太平洋岸北西部のホップ農家は、作付け面積を8000エーカー増やして現在の26%増にすることを目指している。だが、新しい土地で収穫できるようになるまでには数年を要する。

 全米のビール生産高に占めるクラフトビールの割合は4.0%に過ぎない。だが1449軒ある醸造所のうち、1406軒はクラフトビールの醸造所だ。前年、ホップ種によっては1ポンドあたりの価格が5倍に跳ね上がったことから、クラフトビールメーカーの多くは値上げを余儀なくされている。

 アイダホ州サモン(Salmon)で10年前からレストランを併設した醸造所を営むニック・バートラム(Nick Bertram)さんは、この4月に開業以来初めてホップ不足の危機に見舞われた。幸い、ビール大手が中小の醸造所向けに行ったホップの抽選販売会に当選し、難を逃れることができた。それでも、いくつかの種類は手に入らないため、多くの同業者同様、ビールの成分を変えざるをえない状況だ。(c)AFP