大型補正予算10兆円超でも小出しの罠

 麻生首相が「国際公約」ということで10兆円超規模の補正予算の支持を出した。やらないよりははるかにいいのは確かだ。多少の好運もいまはある。円安基調にふれているのは金融緩和的な影響も多少はあるのだろう。

 しかし、数日前のエントリーでも書いたが、内閣府の岩田試算をベースにしてさえ、今四半期でおおざっぱな推測だが20〜25兆円規模の需要不足がある。しかも現実のGDPは低下のドライブがかかっていて、これを財政出動と弱い金融緩和で切り抜けることが本当にできるか、危ういものがあるだろう。いまこの瞬間にただちに10兆円の現金が市場にばら撒かれたとしてでも需要不足解消の見込みは低い。ましてや予算案を通過させ、それが政変絡みともなるとタイミングの遅れは避けられない。

 要するにこの10兆円超でも「小出し」でしかないのである。朝日新聞では加藤出氏が「(国債の)追加発行は看過できる状況ではない」としている。しかしそうだとすれば、増税して財政拡大のようなマクロ経済学としては分裂した対応、要するに同じか縮小していくパイを分け合う再分配しか方策はないだろう。以下の大竹文雄氏の発言はその典型である。

http://globe.asahi.com/worldeconmy/090302/01_02.html

急激な不況による大規模な失業を防ぐためには、政府による需要創出しかない。そのためには、増税も選択肢になる。増税による有益な公共投資・サービスの増加は、勤労者から雇用される失業者に対する所得再分配となり、公共投資が私たちの生活を豊かにしてくれる。単なる規制強化よりも、就職氷河期世代を救い、貧困問題の解決策にもなる

 そのような政策は、人々を苦境に陥らせる形でインセンティヴを引き出すという恫喝型政策として以外の効果は生み出せないのではないか。

 この段階に至っても、政府には日本銀行との積極的な協調はみられない。市場では、日本銀行よりのアナリストやあるいは「記者」たちのご説明部隊の声が大きくなり、政府への牽制が聞こえるのみである。