大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

時代遅れの百貨店業界の常識。コンビニ業界は2大勢力へ

2009年03月10日 | ニュースの視点
先月26日、セブン&アイ・ホールディングスは傘下のそごう心斎橋本店(大阪市、店舗面積4万平方メートル)をJ・フロントリテイリング傘下の大丸へ売却すると発表した。

メガ百貨店同士の大型店売買は初めて。そごうは8月末をメドに同店を閉鎖し、その後、大丸へ引き渡す予定とのこと。

大丸は隣接地に持つ大丸心斎橋店とあわせて約7万8000平方メートルを一体的に運営することで、大阪地区での競争力を高める狙いだというが、私には疑問だ。

大丸に限らず、百貨店業界全体として戦略的な構想が欠如していると私は感じる。

大阪市内の主な百貨店の現況を見ると、明らかに大阪は百貨店がオーバービルド状態にある。それは大型百貨店の売り場面積を見ても明らかだ。

・阪急百貨店梅田本店:6万6237平方メートル(12年に8万4000)
・高島屋大阪店:5万6000平方メートル(10年に7万8000)
・近鉄百貨店阿倍野本店:8万2488平方メートル(14年までに10万)
・阪神百貨店本店:5万3683平方メートル

そして、大丸は心斎橋店:3万7490平方メートル、梅田店:4万416(11年に6万4000)平方メートルに加えて、そごう心斎橋店:4万780平方メートルを抱えることになる。

いずれの百貨店もこれから数年のうちに売り場面積の拡大を見込んでいるが、一方で売上は一向に伸びていない。

正確には、全体としては約10%ずつ下降の一途を辿っている。

売り場面積が大きくなっても、大阪の「財布」が大きくなるわけではないのだから、なぜ売り場面積に拘るのか不思議でならない。

そして、百貨店業界全体として、差別化を図る意識が低く、昔ながらの感覚を引きずっているのではないかと感じる。

どの百貨店を見ても同じようなテナントが入っているし、百貨店のコンセプトも殆ど同じだ。

大丸がそごう心斎橋店を買って売り場面積を倍にしたところで、特に何ら戦略を持たずにいるのではないかと思う。

先月25日、コンビニエンスストア2位のローソンは同7位のエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を買収すると正式発表した。

ローソンはam/pm親会社のレックス・ホールディングスから全株式を買い取り、2010年春を目処にam/pmを合併する見通し。

2001年のサークルKサンクスの統合以来のコンビニ大型再編となる。

今後のコンビニ業界の勢力図は、大きな2つのグループに収斂していくのではないかと思う。

業界トップのセブンイレブンジャパングループ(セブン&アイHDによる100%出資)と、今回提携を発表したローソンとam/pmグループ(三菱商事による出資、ローソンに約32%、am/pmに約10%)の2つだ。

今回の合併でセブンイレブンに追いつけ追い越せというローソンの勢いは強くなっているだろうが、今後さらにそれが助長されていく可能性が高いと思う。

それは、例えばイオン(ミニストップに出資)が三菱商事へ近づく動きを見せていることからも伺える。

ミニストップの経営に行き詰まったら、将来的にはミニストップもローソンに引き受けてもらいたい、というシナリオが出てきてもおかしくないだろう。

そして、結局、他のコンビニも、この2つの大きなグループに飲み込まれる形になっていく可能性が高いと思う。

今回の買収に関して、そもそもローソンがam/pmを手に入れるメリットについて疑問の声もあるようだが、ローソンとam/pmを合わせると首都圏の店舗数ではセブンイレブンを上回りシェア第1位となる、というのは大きなメリットだと私は思っている。

am/pmの店舗は各フランチャイジーの意思で、am/pmの名前を残してもいいし、ローソンへ名称変更してもいいということだが、ほとんどの店舗はローソンに名称を変更するだろう。

事業継続が難しくなったam/pmのままでいるよりも、ナチュラルローソンやローソンストア100など様々な展開を見せているローソン傘下として運営する方が、コンビニの経営としては上手くいく可能性は高いからだ。

各店舗をローソンへ名称変更するといっても、近隣にすでにローソンの店舗がある場合にはどちらかの店舗が閉鎖に追い込まれることになるので、単純に「1+1」=「2」という店舗数にはならないだろう。

実際の店舗数としては「1+1」=「1.8」くらいの規模で落ち着き、その時の出店コストを計算すると「1+1」=「1.6」くらいで抑えられる、というのが今回のam/pm買収の成果になると私は見ている。

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