TOP PAGE BLOG ENGLISH CONTACT




 簡易保険でつくられた「かんぽの宿」を論じてきたが、昨日は年金積立金が国内外の株式市場の下落を受けて、昨年10月~12月の運用損失が5兆7千億円になることが伝えられた。昨年7~9月の4兆円超の損失と合わせれば、8兆6738億円という巨額の損失を計上していることになる。さらに、低迷が続く今日の株式市場で下落が続けば損失額は更に膨らむ可能性がある。株式市場の上昇で累積10兆円だった運用収益は、一気に吹っ飛んだということになる。08年度末の厚生年金・国民年金の積立金は155兆円(朝日新聞2月28日6面)だが、株式市場の下落が更に続くと年金財政が加速度的に悪化する。

 社会保険庁のマッサージチェアや、霞が関の居酒屋タクシーなどは、一斉に報道される。しかし、規模と影響から考えれば比較にならない話が「年金運用」のあり方である。国民共有の財産が半年で「8.7兆円消えた」というニュースは、あらゆる国民の年金受給に関わる話なので、国会でも徹底的に議論されるべきだ。しかし、衆議院予算委員会の審議が終わったタイミングで発表されるなど、議論が大きくならないように腐心している気配を感じるが、年金運用のあり方は最重要課題である。

 年金積立金管理運用独立行政法人とは、グリーンピアや年金住宅融資のツケ1兆3千万円を国民のものである年金積立金から損失処理をして出来上がった。過去は年金福祉事業団と言い、99年に年金資金運用基金となり、05年から年金積立金管理運用独立行政法人となった。(詳しいことは拙著『年金を問う』岩波ブックレットを参照されたい)もともと、運用についてはズブの素人だった彼らが、金融機関に高額な手数料を支払って、運用をまかせているのである。

 これを国民自らがチェックするためには、国会が頑張らなければならない。定期的に財務報告をして、資金運用のあり方についてもポートフォリオ(資金配分率 国債67%国内株式11%外国株式9%等)通りに機械的に割り振るのではなくて、不安定要素の多い株式市場の運用率を縮めていくべきだと思う。このポートフォリオは5年に1回見直すことになっているが、「100年に1度」の危機でも漫然と続けていいわけがない。

厚生年金・国民年金の積立金と共に企業年金である厚生年金基金連合会の資金と合わせて巨額の「年金ファンド」が市場を支えている。大きすぎて身動きが出来ないのが現状。損失が確実だからと言って、すぐに資金を引き揚げることが出来ない存在となっている。

 アメリカは全額を市場で取引出来ない国債で運用している。金融グローバリズムの本家でも年金資金は「神聖なもの」として市場運用の誘惑を断ち切ってきたことを、私たちはもう一度考え直すべきではないか。半年前まで、自民党内には「損失覚悟のポジティブ運用を年金積立金から10兆円借用して始めるべきだ」という私の危惧とは正反対の議論があった。厚生労働省とこうした自民党議員の共通点は、年金積立金は「神聖な国民共同の財産」だと認識せずに、せいぜい「巨額の国の準備金」ほどにしか認識していない点にある。

 年金財政を透明化し、国民共同の財産を守るためには、この政権にまかせておくわけにはいかない。



  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« こんな予算の... 竹中平蔵元大... »