趣味Web 小説 2009-02-04

最近のリフレ派の主張で、ココがわからない。

私は親リフレのつもりですが、「リフレ派の主張がわからない」ことはよくあります。

最近の例でいえば、埋蔵金と定額給付金の話題。年度末に予定されている2兆円規模の定額給付金は、財政投融資特別会計の運用益積立金を取り崩して財源としています。ところが、一部のリフレ派は、外国為替資金特別会計(外為特会)の20兆円弱の積立金が給付金の原資と勘違いされているようです。

外為特会の積立金は、為替変動のリスクに対応するためのもの。現下の円高で外為特会は赤字転落しています。したがって外為特会には手を付けられませんでした。

替や金利変動による損失に備えて外為特会には約19兆6000億円(19年度決算後)の積立金がある。ただ、外貨建て資産を1ドル=99円とすると、積立金と同じ規模の為替の含み損が発生。含み損は同1円の円高で8000億~9000億円程度拡大する見込み。

高橋洋一さんは著書の中で「為替介入は不必要な政策。円安のときに外為特会を手仕舞いし、積立金20兆円を国民のために役立てるべきだった」といったことを書かれています。なるほどその通りだと思う。しかし過ぎた話です。外為特会は整理されないまま、円高になりました。それが現状です。

日銀がきちんと金融緩和すればこんな円高はおさまるはず、という反論が予想できます。しかし一国の金融政策が為替をターゲットとしてはならない、とリフレ派は主張してきたはず。為替の変動は諦め、資本移動と金融政策の自由を確保し、国民の経済厚生を第一に考えるべき、ですよね?

無論、正しい金融政策は、行き過ぎた円の独歩高を止めるでしょう。けれども、金融緩和の結果、外為特会が黒字に復帰するより円高の水準でデフレが終わる可能性もあります。積立金がゼロでも外為特会が黒字になる1ドル120円を遮二無二目指せば、国際リフレ競争の中、望ましくない水準のインフレになりかねません。

ニクソンショック後、日本は強引に円安を保とうと金融緩和を続けた結果、インフレ率が13%に達しました。そこへ第1次オイルショックの直撃を受け、狂乱物価となります。円安は政策目標にできません。黒字で手仕舞いできる保証のない外為特会には、積立金が必要です。

では財政投融資特別会計の運用益積立金には余裕があるのでしょうか。残念ながら、答えは No です

この積立金は総資産の5%を原資である財投債安定償還のための金利変動準備金とし、それを上回る剰余金は国債残高の圧縮に充てるよう法律で定めている。それが根底から崩れたのである。

つまり、2・6兆円の剰余金だけでは足りずに2次補正の段階で準備金10兆円の一部に手をつける。来年度予算分を入れると、準備金は6・5兆円に減少し、法定の準備率を大きく下回る。

Voice の記事にある通り、2008年初秋の高橋洋一さんは「埋蔵金は市中の国債を償還するのに用いよ」と提言されていました。「国債を大量に買う→国債価格上昇=長期(実質)金利低下→実質的に投資減税に等しい効果」という景気浮揚策です。なるほど、と思う。

これに対し減税や財政支出などは、マンデル=フレミング理論により「財政赤字の拡大→国債価格低下=(実質)金利上昇→通貨高」の経路で、いずれマクロ経済効果が相殺される、と整理されていました。十分な金融緩和を前提とした一時的な活用にとどめるべきで、積極的に推進すべき政策ではない。

いちいち納得できる意見だと私は思う。ところが晩秋になると、高橋さんは埋蔵金からの定額支給金(財政支出)を支持する立場を明確にされました。正直、面食らいました。十分な金融緩和という条件が整う兆しはどこにもないのに、どうして?

さらに、以前は高橋さんの国債償還案に賛成されていた田中秀臣さんは2009年1月、きびしい不況下で埋蔵金を利用して国債償却を推し進めるのは単にナンセンス発言されました。「市中の国債を償還する=民間にマネーを供給する」なので、定額給付金とマクロ経済効果は同じでは?

さらにリフレ派ブロガーの Baatarism さんすなふきんさんkmoriさんらは財務省(+マスコミ)陰謀論……。

定額給付金、生活支援という意味では私も賛成できます。全員給付はよい発想だ、とも思う。

しかし「定額給付金は埋蔵金をフル活用し20兆円とすべきだった」「日銀が国債を買うのは賛成、政府が国債を買うのはナンセンス」「市中国債の償還より定額給付金の方が景気浮揚策として優れている」といったリフレ派の主張は、よくわかりません。

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