日本インターネットプロバイダー協会,電気通信事業者協会,テレコムサービス協会,日本ケーブルテレビ連盟の4団体は2008年5月23日,「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」を策定したと発表した。これはISPが,一部のインターネットのヘビーユーザーによるネットワーク帯域の占有に対処するために帯域制御を行う際の運用基準をまとめたものである。4団体ではガイドライン策定のため,2007年9月に「帯域制御の運用基準に関するガイドライン検討協議会」(以下,協議会)を組織し,総務省をオブザーバーとして加え検討を進めてきた。

 協議会では3月17日に,電気通信事業者への実態調査などに基づいて策定したガイドライン案を公開し,4月14日まで意見募集を実施した(関連記事)。今回策定したガイドラインは,そこに寄せられた意見を反映したものだが,ガイドライン案からの大きな変更点はない。およそのポイントは以下の通りで,具体例を示しながら説明している。

●ISPはトラフィック増に設備増強で対処すべきで,帯域制御は例外的状況で実施すべきというのが原則
●帯域制御の実施が認められる例外は,「特定のヘビーユーザーのトラフィックがネットワーク帯域を過度に占有した結果,他のユーザーの円滑な利用が妨げられているので,このユーザーのトラフィックまたはアプリケーションを制御する必要がある」などの客観的状況が存在すること
●帯域制御は電気通信事業法の「通信の秘密」を侵害するが,緊急時は刑法の「正当防衛」「緊急避難」,通常時は刑法の「正当業務行為」として認められる方法で実施すれば違法性は阻却される。また電気通信事業法の「利用の公平」に反しない方法で実施する必要がある
●エンドユーザーへの周知,情報開示が重要
●今後の検討課題として,動画コンテンツの増加にともなうトラフィック増にどう対処するかなどがある

 ガイドラインの発表とともに,意見募集の結果も公表し,意見に対する協議会の考え方を示した(日本インターネットプロバイダー協会のサイトへ,PDF文書)。寄せられた意見は28件。その内容は多い順に「ISPは帯域制御ではなく,ユーザーに宣伝している最大速度を実現するネットワークを構築すべき」(15件),「ISPが帯域制御をする場合には,ユーザーに制御対象を明確化して情報提供するべき」(7件),「現在トラフィックの多くを占めているのは動画トラフィックで,P2Pのみを制御の対象にするべきではない」(5件)と続く。

 ガイドラインは,電気通信サービスの市場環境やネットワーク構造の変化に合わせて内容を今後定期的に見直していく必要があるとしており,「協議会はいったん活動を中断するが,のちに再開する予定」(日本インターネットプロバイダー協会)である。また今後とも,関係者間で情報を共有する場を設けることを考えていく。また総務省は,「昨冬に調査をしたように,今後も帯域制御の実態を把握していきたい」(データ通信課)としている。

[発表資料(日本インターネットプロバイダー協会のサイト)へ]
[発表資料(総務省のサイト)へ]