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IR物語 第49回「新興市場に変化の兆し?」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

こないだ年が明けたと思ったら、早いもので1月もおしまいですね。

私が某新興企業でIRの仕事を始めてからこの1月で8年目を迎えます。その間、新興市場ではいろんなことがありました・・・。

2002年から2003年にかけてはITバブル崩壊後の下落トレンドで、現在と同様に低調な市場環境でした。

2003年の中ごろから新興市場が賑やかになってきて、2005年の終わりに向けて大幅に上昇。新興市場バブルへ。

そして、2006年1月、ちょうど3年前の今ごろにライブドアの堀江元社長が逮捕されて新興市場バブルが終焉。

そこから3年間、新興市場はひたすら下げ続けてきました。

参考:過去10年のジャスダックインデックス

(こうした新興市場の性質には過去のエッセイでも触れています)

この3年間、新興市場の銘柄に投資した株主の損失は非常に大きかったので、「新興市場の銘柄なんてもう近づきたくない!」と感じた方も多数いらっしゃったかと思います。

しかし、新興市場はこういう時こそ狙い目です。

私は仕事柄、新興市場を毎日ウォッチしているのですが、最近、市場の雰囲気が少し変わり始めたかな・・・と肌で感じています。

つまり、「そろそろ底打ちなのでは・・・?」ということで、いつから上がり始めるかは正直なところわかりませんが、トレンドの転換点に差し掛かっているように思います。

今日のエッセイではその根拠について取り上げてみたいと思います。

【兆しその①:直近の市場パフォーマンス】

ここ数年、新興市場のパフォーマンスは大型株である日経平均のパフォーマンスを下回ってきました。

しかし、最近はそのトレンドが逆転しており、下記のグラフにあるとおり新興市場の株価指数の方が底堅く推移しています。

~年初来における各市場別株価指数の推移~

(クリックすると大きな画像が表示されます)

S.Y_049_E0.gif 

 【兆しその②:外部環境の変化】

このパフォーマンスのトレンド変化は何が要因なのでしょうか。

一番大きな要因は外部経営環境が変化したことだと思います。

  S.Y_049_E1.gif 

現在のような経営環境になると、事業規模が小さく、大企業よりもマクロ経済の影響を受けにくい新興企業の方が相対的に優位です。

新興企業は事業内容が大企業に比べて新規性を有している場合が多いので、市場全体のパイが増えなくても新しいサービスにより既存需要を奪う形で成長が可能だからです。

また、現在の環境のように不況の色合いが強くなると、世の中は既存のプレーヤーよりも新しい救世主を求めるようになります。

日本の株式市場において、将来、日経平均株価が回復するかどうかは何とも言えませんが、新興市場のバブルはまたやってくると思います。

なぜなら、人間は夢や希望なしに生きてはいけないと思うからです。
今までにない画期的な事業を展開しようとするベンチャー企業(経営者)に夢を託したくなるのが人間心理であり、過去に繰り返してきた歴史ではないでしょうか。

また来ると思いますよ、第○次ベンチャーブームというやつが。

実態があるかどうかは別にして、また新しいジャンルの業種や企業がもてはやされるようになると思います。
それが「環境」なのか「新エネルギー」なのかよくわかりませんが・・・。

ちなみに、株式市場では「相場回復は新興市場から始まる」なんて言われることがよくあります。

それは「新興市場の方が市場のボリュームが小さいので大型株の市場より株価が上がりやすい」というのと、「不況になると新興企業への期待が高まる」というのが大きな理由なのではないかと思います。

【兆しその③:投資家の動向】

市場のトレンドが転換するには、新しい流れを作る先端の人達の動きが重要になります。新興市場における2003年からの株価上昇局面においては、最初、外国人投資家や独立系の中小型株ファンドが買い始めて相場が動き始めました。

これは非常に個人的な意見なのでたいした根拠にはならないのですが、最近、私が注目しているファンドのいくつかが新興株を買い始めており、何となく2003年の雰囲気に近づいてきた感じがします。

【まとめ】

新興市場の銘柄は様々なリスクがあり、投資対象にふさわしくない銘柄があることも確かなので、皆さんに対して無邪気にオススメする気にはなりません。

しかし、個人的には、今年は上記の理由から大企業よりも新興企業に注目してみようと思っています。

PS
その意味では、この時期にベンチャー企業を立ち上げるのも良いと思います。外部環境が悪い時にスタートした企業は覚悟ができてますし、軌道に乗り始めた頃に良い波に乗れますからね。

そういえば、この度、当事務所セミナーの卒業生が起業することになりました。

100年に1度の金融危機の中で第一歩を踏み出したSさんを応援したいと思います。

Sさんの航海に幸あれ!

(注)このエッセイの内容は、吉原個人の意見や感想に基づくものであり、板倉雄一郎事務所の見解ではありません。

2009年1月27日 S.Yoshihara
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