過去最大の赤字から立ち直れるか――ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録(1/8 ページ)

» 2009年01月23日 13時50分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 ソニーは1月22日、2008年度連結業績見通しの修正を発表した。2009年3月期の連結営業損失(米国会計基準)は2600億円と、過去最大の赤字となる見通しだ。ソニーはなぜこれほどの苦境に追い込まれたのか、そしてこれからどう復活していく道筋を描いているのだろうか。

 ハワード・ストリンガー会長、中鉢良治社長、大根田伸行最高財務責任者が参加した業績修正会見の詳細を紹介する。

ネットワーク化を加速

 最初にスピーチを行ったのはストリンガー会長。ソニーが今後とるべき戦略について、厳しい表情で語った。

ハワード・ストリンガー会長

ストリンガー 昨春の経営方針説明会の場で「着実な利益を実現する」と発表しました。その時、「今後の成長と利益を確保するため、3分野に集中する」とお約束しました。「コア事業の強化」「3年以内に全商品の90%をネットワーク化すること」そして「海外、特にBRICsの成長機会をとらえること」でした。

 これらのコミットメントは必須のことであり、「ネットワーク対応のコンシューマーエレクトロニクス、エンタテインメントを提供するグローバルなリーディングカンパニーになる」という当社の使命に欠かせないものです。これら施策の多くで進展がありましたが、世界的な景気の大激変の影響は家電産業もまぬがれることはできない状況であり、全体的に需要は減少し、為替も混乱状態、そして消費者金融が低迷しております。一部の大型小売チェーンも倒産をしました。

 この新たな経済の現実は弱点を持つ、あるいは後退期にあるあらゆる企業の姿をあらわにしてしまっています。歴史が重荷になることさえもあります。ソニーには、古いソニーは多くあります。しかし、新しい部分が不足しています。これは競争上のハンデになっています。固定費が多すぎる。サプライチェーンはスピードが遅すぎる。垂直統合での失敗、壁がまだ残っている。これが協力を妨げ、イノベーションを阻害しています。

ソニーのライバルは日本企業だけではない

ストリンガー さらに、私どもにとって土俵も変わったともいえます。ソニーはいまや伝統的な日本のエレクトロニクス企業との競争をしているだけではなく、サムソン、LG(のような韓国企業)が品揃えを広げ、極端なウォン安に支えられています。同時にアップル、マイクロソフト、そしてシスコシステムズまでもがデジタルフォームに足がかりを求めてアグレッシブな展開をみせています。

 現下の経済環境でオペレーションをするすべての企業が試練にさらされています。当社にはこれを乗り切る力があります。乗り切ることができます。しかし、容易な話ではない。特にコアであるエレクトロニクスにおいて、直近の四半期は大幅な収益の悪化を経験いたしました。

 予想されるグループ全体の対前年比での今年の減益、これは未曾有(みぞう)な、そして不自然な円高に起因するところが大きいのです。また株式市場の落ち込みがソニーフィナンシャルの保有証券に影響している結果です。

 原因はともあれ、私どもはこの新たな現実に直面し、即刻対応すべき苦汁の判断をせざるを得ないということになります。その第一歩として、私は会社のトップ幹部に対してすでに指示を出しております。「即時にコスト削減をし、部門間の重複を排除し、間接費用の大幅削減を実現し、サプライチェーンマネジメントの合理化を図るように」ということです。

 そのため、大根田は合わせて25億ドルを超える節減策を10月以降にまとめております。これは2009年度に達成されるものですが、これだけのコスト削減を短期間で実現すること自体、「それ自体1つの成果である」と思います。しかしさらに「なすことは残っている。長期的目標を達成するためにはもっとなしていかないことがある、なすことができる」と思っています。オペレーション上の構造的変革を進める上で同じく会社トップに対して、「すべての事業を見直し、商品企画、設計、製造の効率を最大化することにより、迅速に機敏に競争力を高めろ」と指示をしています。

 その一環として、基本的な製造、組み立て、物流およびバックオフィスなどで、全世界でアウトソーシング(外注委託)を積極的に検討してまいります。またアセットライト※の戦略は、半導体部門で成果をあげていますが、これをひな形として施策を継続させてまいります。抜本的な変革以外に方法はありません。ビジネスに対する見方、もの作り、製造、そして物流に対する見方を変えねばなりません。

※アセットライト……アウトソーシングを活用して資産を圧縮すること。
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