「2008大論争 5時間スペシャル」を見た

朝日ニュースターの「2008大論争 5時間スペシャル」を見た。Economics Lovers Liveの韓リフ先生こと田中秀臣先生が出るので楽しみにしていた。田中先生が予想していたよりも美声でびっくり。もっと、甲高い声でしゃべる方かと思っていた。また、宮崎哲弥さんについての印象が変わった。堅実な司会で参加者全員に秩序を持って議論させていたのに驚いた。田原総一郎さんよりも圧倒的に良い。まあ、CSだからかもしれないけど。

結論からいうと5時間かけて見る価値はあると思った。ただし、私のように政治や経済に興味があるけど、自発的に情報収集していない方にかぎる。たぶん、出演者は普段からの自説を披露しているだけなので、自発的に情報収集をしている方にとってはたいして面白くないのではないかと思う。

参加者は大きく分けて、政治家、経済学者(研究者)、その他にぎやかしの3者で構成。

印象に残った点を箇条書きにメモ。

  • 全般的に議論になっていない。司会の宮崎さんのフリに対してまともに答えている率が低い。まともに答えているのは武者 陵司さん(ドイツ証券副会長)と小林 慶一郎さん(経済産業研究所研究員)だけのような気が。(前半の田中先生も質問に答えていたが、学者スタンスを出しすぎてデータマンになっていた印象)。ああいう番組スタイルであれば、しょうがないと思うが他のみなさんはすぐに自説を展開してしまうのはいかがなものかと思う。全然議論になっていない。
  • 小谷野さんのタバコねたは面白いと思うけど、その後に何かまともなことを言わなかったら、単なるタバコ大好きおじさんなだけのような。
  • 林 芳正議員(自民党の経済通)と福山 哲郎議員(民主党の経済通)が双方そろって、日銀の独立性の話や量的緩和の話を高橋 洋一さんにレクチャーしてもらっている光景は正直「アレ?」と思わされた。全ての事柄に関して深く知ることは不可能だけれども、経済通と字幕で紹介されている議員がここいらへんの話を知らないというのはちょっとまずいのでは?
  • 穀田 恵二議員(共産党)、保坂 展人議員(社民党)、紺谷 典子(経済評論家)の3者のマクロ経済の話題に対する乗り気の薄さが面白かった。一方で、国内の雇用問題や与党の政策についてはさすがの知識。というか、細かすぎるところまで議論しているような印象を受けた。高橋さんの「パイが減ってしまっているときに分配の話を一生懸命やってもしょうがない」という発言にきっちり反応できていなかったのが印象的だった。たぶん、平時に重要な人材なんだと思う。
  • ロンボルク(「環境危機をあおってはいけない」の著者)の話題がでたときの田中先生の発言は意味が不明だった。あの後のやりとりで意図はわかったが説明不足だし、宮崎さんの質問への答えになっていなかったと思う。あの場面は典型的な学者トークだった。
  • この番組を見ていて分かっただけど、学者トークの特徴はデータや現状分析は述べるけど、結論や主張がないという点。テレビでは主張や結論をちゃんと言い切らないと尻切れトンボの印象を受けてしまう。
  • 田中先生と対象的だったのは紺谷さん。主張と結論はあるが現状分析とデータを見せない。まあ、ああいう形式の番組だと難しいのだろうけれども、小泉改革の何が悪くてどういう結果を導いたのか、そしてそのメカニズムは何かを言ってもらわなければ視聴者にとって得るものはほとんどない。田中先生と紺谷さんを足して2倍すると高橋さんになる感じ。
  • 高橋さんがパワフル。現状分析、メカニズム、そして主張がそろっていて、さすがは官邸を構成していただけのことはあるなぁと納得。でも、政治家ではなく技術者(職人)っぽい。要求に応じたベストプラクティスを提案するけど責任はとらなさそう。
  • 番組ラストの共産党社民党は合併しちゃいなよネタは面白かった。確かに全然興味ない人間からみると社民党共産党の主張の違いがさっぱりわからない。せいぜいあっても自民党民主党の違いぐらいにしか見えない。共産党に比べると社民党は腰が定まっていないので、こういうネタで振られるととても弱いことが分かった。社民党は本当にダメだな。
  • 共産党はインテリと労働者に支持層があるのだから、マクロ経済をもっと研究する人材をリクルートして、マクロ経済と労働者救済をミックスしてアピールしたら今の時代に支持を得られるのではないかと思った。弱者に優しいのは素晴らしく今の日本に欠くことのできない立ち位置だと思うけど、マクロ経済と国際情勢にめっちゃ疎い政党は絶対に政権とれない。
  • 自民党民主党のどちらも一枚岩ではなく、人材も幅広く分かれていることが改めて確認できた。民主党の福山議員が「『自民党民主党に違いがない』なんて言っちゃいけない」と発言していたが、政治ウォッチャーでなければ違いがわからん。あとは、自民党を野党に一度落としたほうが良いかどうかの判断に思える。でも、民主党に人材が足りないのは確かだろうなぁ。
  • 今後の世界経済と日本という話ならば先日放映していた「葉千栄のNIPPONぶった斬り」の方が面白かった
  • これは私の疑問だけれども、輸出額が日本の国内総生産の数パーセント(一桁台)であるのに、輸出の企業の業績が悪くなると日本の景気が悪くなる理由が知りたい。逆に国内総生産の何パーセントまでならば景気が悪くならないのだろう?どういうメカニズムなんだ?

以上思いついた限り。

参考:

追記

こちら(Economics Lovers Live:討論番組のご感想いただく)にコメント書けませんでしたので、自分のところに。

輸出額が日本の国内総生産の数パーセント(一桁台)であるのに、輸出の企業の業績が悪くなると日本の景気が悪くなる理由が知りたい。逆に国内総生産の何パーセントまでならば景気が悪くならないのだろう?どういうメカニズムなんだ?

これはどなたの発言でしたっけ? ちょっと忘れましたが、例えばケインズ的な発想でいえば、負の貿易乗数効果みたいなものがありますね。ほかに金融部門のショックだとそこそこ統合された経済圏で、たった数件の金融機関の破綻が、世界中の金融機関や投資家が直面している制約(証拠金や時価会計など)を通じて、何倍にも負のショックが増幅して伝播していくという考えもあります。この後者の場合は輸出企業に特には関係しませんが。

すみません。これは出演者の発言ではなく、私の素朴な疑問です。まぎらわしくてごめんなさい。あと、ご教示ありがとうございます。でも、知識が足りないのでさっぱりわかりません今度勉強してみます。