【12月22日 AFP】シャネル(Chanel)が、有名だがコストもかさむ世界巡回展覧会「モバイルアート(Chanel Mobile Art)」の中止を発表したことで、金融危機が高級品業界にも暗い影を落としていることがあらためて浮き彫りになった。

 パリ(Paris)に拠点を置くシャネルは19日、香港(Hong Kong)から東京、ニューヨーク(New York)を巡回したモバイルアートについて、予定を繰り上げて終了すると発表した。ロンドン(London)、モスクワ(Moscow)、パリに巡回予定だった。同社は戦略的投資を重視したいとしている。

 パリの銀行のアナリストによると、カルティエ(Cartier)やモンブラン(Montblanc)を傘下に持つスイスのリシュモン(Richemont)、ヴィトン(Vuitton)やグッチ(Gucci)を抱えるフランスのLVMHなど堅実な経営で知られるグループでさえ、この1年間で株価が40%も下落した。世界有数の高級品複合企業LVMHの2008年第3四半期の成長率は、第1、第2四半期比で半減した。

 過去4年間にわたり年10%以上の成長を続けた高級品市場だが、米投資銀JPモルガン(JP Morgan)は09年のこの分野の売上は4%減少すると予測している。ドイツ銀行(Deutsche Bank)によれば、一部のブランドで売上が10-15%減少する可能性もある。

 不況の影響は国や商品により異なるが、仏銀行大手ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)のアナリストは「景気後退に入った日本市場のダメージが特に大きい」と語る。LVMHの今年1-9月の日本での売上は7%減少し、同社は16日、銀座への出店計画を撤回したことを発表した。

 利益の多いフランスのシャンパンの輸出も苦戦しており、米国向けの売上は17%も減った。上述のアナリストは、高級ブランドは新規出店の中止、人材の採用凍結、店舗の閉鎖、事業の見直しなど、自らを守るためにあらゆる手段をとっているが、1つだけできないことがあると言う。

「彼らは値下げだけはできない。ブランドのイメージを損ないかねないからだ」(c)AFP/Sophie Deviller