[お断り]当blogに書かれていることはすべて矢野個人の意見であり、矢野が所属するいかなる組織とも関係ありません。
[トップ10では多すぎる]
毎年、年末になると「今年のビジネス書トップ10」などという企画が新聞・雑誌、blogで行われることが多いです。矢野はこのランキングを読むのが好きで、毎年年末になるのをそれらを読むのを楽しみにしています。
しかし、問題が一つだけあります。矢野は本を読むのがとても遅いので、10冊も読めないのです。
で、いつも「今年、最高の一冊」は何だろうか?と考えてます。
[原価50円の一万円札]
もし、手元にお札(紙幣)があったらよく見てください。
たとえば一万円札は福沢諭吉先生が書かれている面に「日本銀行券」と書いてあります。これは一万円札を日本銀行(以下日銀)が発行していることを表わしています。世間にはあまり知られていないことですが、この一万円札は一枚約50円の原価で発行することができます。
少し基本知識を整理しましょう。
- 我が国は国民主権である
- 日銀は民間銀行である(株式上場もしています)
- 日銀は一枚50円の原価で一万円札を発行する権限がある
つまり、言い換えると日銀は「一枚50円の原価で一万円札を発行する権限を国民から委託されている」のですから、日銀は「不況になったときに、原価50円で一万円札を印刷して日本国民と日本経済を救う義務がある民間銀行」である訳です。
[FRBは危険を冒してアメリカ国民のために戦う]
さて、アメリカではFRBという組織がドルを発行しています。
そのFRBが昨日、短期名目金利をほぼゼロに設定し、さまざまな資産を購入してドルを発行する量を増やすことを発表しました。FRBが購入する資産の中にはMBS(不動産を担保とした少し特殊な金融商品)などという通常であればFRBが買わないようなものも含まれています。
これはいわゆる「危険資産」をFRBが購入して、アメリカ国民にドルを供給し、それによってアメリカ国民が消費を増やし、アメリカ経済を立て直そうという思い切った政策です。
反面、これはFRBにとってはとても危険なことです。通常のFRBはTBという「安全資産」(アメリカ政府の国債)しか通常は購入しないのです。
しかし、彼らFRBは決断しました。それは、FRBにはドルを発行する強大な権限をアメリカ国民から委託されているため、「FRBは不況になったときに、安い原価でドルを印刷して国民を救う義務がある」からです。たとえ、それが彼らにとって危険であったとしてもアメリカ国民とアメリカ経済の未来を守るために断固として戦うことになるのでしょう。
[この金融政策が日本経済を救う]
我が国ではどうすべきなのでしょうか?
それは皆さんが今年、読むべきたった1冊の本に書かれています。
上げ潮派の論客としても知られる著者の高橋洋一氏の意見と矢野の意見は必ずしも一致しない点も少なくありませんが、「日本における金融政策はどうすべきか?(日銀が今、実行すべきことは何か?)」についての基本的な考え方は非常に共通する点が多いです(二人ともマクロ経済学の基本である動学的確率的一般均衡を使って考えているためでしょう)。
我が国ではどうすべきなのかについて「学校では教えてくれない基礎知識」がそこには書かれています。
- 作者: 高橋洋一
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原価50円で一万円札を印刷し、国民に広く公平に配布し、不況に苦しむ日本経済を助けるのが日銀の仕事であり、そのために「紙幣を発行する権限を国民から委託されている」民間銀行が日銀なのです。
多くの方が一刻も早く本書を読まれて、我が国でなすべき金融政策についての基礎知識が広まることを願ってやみません。