高橋洋一『この金融政策が日本経済を救う』

 高橋さんから献本いただく。病気で群馬にいけてませんでしたのでお礼遅れました。ありがとうございます。

 この本を読んで、まだ日本のこの苦境の決定的な解決策として金融政策が不用だとか、もう限界までやっているとか、机上の空論だとか、アメリカと日本は違うとか、などなどとクレイジーなことをいう人は、もう何を読んでもまともな財政政策や金融政策を理解できない人でしょう。そういう人がまわりにいたら放っておくことをすすめます。

 日本銀行のいままで10数年、そして明日明後日に公開される無能ぶりとそれに直面した日本国民の不幸を真剣に分析した必読本です。コネタもいっぱい。嫌味や皮肉も大量リフレ(意味不明。近いうちに書評でもここに書く予定。

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)

 

毎日新聞岡山だより

 石戸諭記者からの一足早いクリスマスプレゼントと思われてはいかが? 個人的には来年のどこかで出す予定のものが経済学とカルトをテーマにしているだけに興味深い記事です。

「世界教師が人類の平和を実現する」などと訴える団体(本部・東京都)が岡山市で開いた講演会を、岡山県教委と同市教委、倉敷市教委が後援していたことが分かった。05年に札幌市教委が非科学的内容の行事の後援を取り消した例もあり、専門家は「自治体が内容にお墨付きを与えたと受け止められかねない」と批判している。
 講演会は県内の市民グループが後援申請し、11月3日に開催。費用の補助はないが、催事告知に各教委後援と記載された。当日は団体責任者の女性が「全人類のための世界教師マイトレーヤ」の到来を予言。「地球は新しいアクエリアス星団に入っており、人間の意識が変わる」「原発エーテル界に影響し、若い世代がアルツハイマーになりやすくなる」と訴えた。
 主催した市民グループは環境問題などを中心に活動しているといい、県教委は「グループの活動が地元紙に取り上げられたことも信頼した理由の一つ」と釈明。要綱で教育的見地から奨励するものが対象と定めている岡山市教委の易寿孝・生涯学習課長は「申請資料を検討したが、講演団体に関する調べが足り不適切だった。要綱に照らして大問題だと認識している」と話した。
 札幌市教委は05年、後援を決めたイベントについて外部から「科学的に不確かな内容がある」と指摘を受け調査。「『ありがとう』と文字を見せた水はきれいな形の結晶を作る」などの内容が含まれていたため後援を取り消した。
 大阪大の菊池誠教授(物理学)は「内容は少し調べれば分かるはず。星と人間の意識は関係がなく、エーテルは19世紀の物理学の考えで現代では通用しない。原発アルツハイマーも証拠がなく、安易な後援は問題」と批判。一方、主催グループは「希望が持てる内容で多くの人に聴いてほしかった」とし、講演した団体は「(後援を)要望したことはなく、コメントする立場にない。科学にはいろいろな立場があり、どちらが正しいかはいずれ分かる」としている。【石戸諭】

140万アクセス

 先月の7日に130万アクセスでしたが、今日140万にいきました。ご愛読?感謝します。今日は1週間ぶりに群馬に行って年内最後の講義をしたのですがやはり帰宅してみると目は疲れ頭は頭痛とあまりよろしくありませんが、それでも昨日よりはましです。バーナンキFRBのリフレ政策への手番がついにきられたことの軽い興奮のせいでしょうか。妙に朝方発汗したのがよかったのかもしれません。これがリフレでしょうか? まだ完全回復には遠いのですが、このブログとともにもうちょっとだけ続くのだぞよ、の亀仙人の精神で頑張るつもりです(本音をいうと相応の年になれば無理して頑張ることもないと思いますが 笑)。

リフレ政策のさらなる前進へ

 それとクルーグマンの意見を久しぶりにみたのですが、彼はやはり民主党よりのせいもあるのか現行のFRBにはきつい評価ですね。ただマンキュー先生の意見http://gregmankiw.blogspot.com/2008/12/next-round-of-ammunition.html にあるように「物価安定」をさっさと放棄し、2〜3%のインフレ目標もしくは物価水準目標どちらでもいいですが(より望ましいのは後者ですが)それらを採用するradicalな金融政策の転換、つまりレジーム転換が必要でしょう。今回のも事実上レジーム転換ですから二段階、場合によれば多段階でも可能で矢はどんどん放つことができるでしょう。そうそれこそ伝説の「ケチャップを買う」までだって(まあ、真剣にいえばそこまでに確実にアメリカ経済は回復しているでしょう)。さらに来年早々のオバマ政権の誕生による期待転換もあるでしょうし、そしてオバマ財政砲とでもいうべき財政政策の貢献もあるでしょう。おそらく日本のクレイジーな人たちが(つい最近でも日本銀行やそれよりのエコノミストFRBのバランスシートはすでに膨張しすぎてこれ以上増えないといっていましたね、恥ずかしいことです)が机上の空論といっていたさまざまなリフレ政策のメニューがでてくるでしょう。もちろんこれをアメリカ経済が追い込まれたからするのだ偉いことでもなんでもない、と鈍感力を発揮して表現するのは勝手ですが、むしろ深刻な不況をどんどん先手を打って防ごうとする積極的側面を評価する必要があるでしょう。もういいかげん飽きてきました。マゾ的で小賢しくて細かいことばかり気にする責任ある阿呆の戯言は。明日明後日ももうこのブログでも予告されたものに近いそういう小賢しい責任ある阿呆の戯言が公表されることで、多くの国民が苦しむことでしょう。

リフレ政策ついに始まる

 バーナンキFRB、戦後世界経済で(ある意味で不幸であることには違いないが、それでも長期停滞に陥る日本にとっては最善のエールともいえる)はじめてのリフレ政策(ゼロ金利FRBのバランスシートの拡張維持へのコミット、長期国債の買いオペの考慮=ほぼ実施予告など)始まる。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20081216b.htm

 それとこれは時事通信などがhttp://charge.biz.yahoo.co.jp/vip/news/jij/081217/081217_mbiz011.html
 報道しているような長期国債購入枠をがっちりはめた、日本銀行のバランスシートの膨張を過度に忌避していた過去の日本の歪んだ「量的緩和」とはまったく発想が異なるもの。

 物価安定(現状ではインフレリスク事実上ゼロなのでむしろデフレ懸念が払拭されるまで)プラス経済成長率が安定的になるまで、中央銀行のバランスシートを事実上無責任に(これは政策責任を負わないという意味ではない。日本みたいに阿呆な責任=不況なのに増税、を負ったり、あるいは利下げによる預金利子率の消失の責任にコミットするなどのクレージーなものに無責任になるという意味)膨張させていくもの。

 その手法の中に、長期実質金利抑制を睨んだ長期国債買いオペとなればこれはもう日本流の「量的緩和」という表現は妥当ではない。むしろ日銀やこの時事通信の記事のように無理解・無知なマスコミの一部の書き手によって徒な混乱を日本国民に招くだけであろう。

 ともあれリフレ政策の本格的な始動が始まった。オバマ政権になればさらに強力な再分配や財政政策も行われるだろう。この効果がどうなるか。予測される効果をあげることができるのか。私はもちろんそうなることを支持している。これからリフレ政策の真偽が問われると同時に、それは世界経済の行方をも問うことになるに違いない。

 クルーグマンのコメントが今後のリフレ政策の行方をある程度正しく予見しているだろう。

Seriously, we are in very deep trouble. Getting out of this will require a lot of creativity, and maybe some luck too.

 しかしリフレ政策には創造的な手段は豊富だろう。そして運も味方してくれることを願う(なぜならアメリカの政策スピードは日本に比すること10倍速であることは間違いないからだ)

 なお、日本経済は今後、FRBは無論のことイングランド銀行、ECBなどがこの国際リフレ競争を緩めないかぎり、次第に国際リフレ競争の敗者になるにちがいない。超短期的には為替レートの円高傾向といった不安定要因、株価不安定、短期的に業績悪化から雇用弱者の困窮、そしてさらにより深い不況と雇用の大崩壊を目にすることであろう。

 この責任は財政政策を小出しにしかしないのにもかかわらず政治的生命をなぜかかけてまで不況下での増税にコミットする現政権、そしてカルト団体か関東軍のように強固に不況なのに事実上の緩和政策の放棄を決め込んでいる日本銀行にすべて責任があることはいうを待たない。

 日本でも積極的なリフレ政策をいますぐにでもとるべきである。すでに議論の時間は終わった。

 しかし、はてなにこの歴史的な日をコメントしたいのに、夜中から書き込みができなかった。メンテナンスだとか混雑だとか犬がでてくるだけ。まるで何かの陰謀のようだ 苦笑。