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ドタバタフタバ  ~純利益1,148億円取消の衝撃

2008-12-11 | 会計・株式・財務

お疲れ様です。
またまた衝撃的な会計ニュースが出ましたね~。
しかも、堅実な会計処理のイメージが強いトヨタ系の自動車部品会社
フタバ産業」が発信源っていうから驚きです。

既に、10月・11月と予告編はあったのですが、
完成実写版は関係者の予想をはるかに超えた衝撃を与えてくれました。


まずはニュースより
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■フタバ産業が決算大幅訂正 純利益1148億円減額■

 トヨタ自動車系部品メーカーのフタバ産業(愛知県岡崎市)は10日、
2005年3月期以降の連結決算を訂正し、純利益を計1148億円減額すると
発表した。

10月に、監査法人から不適切な会計処理を指摘され、
社内で過去の決算への影響額を調査していた。

 訂正前の決算はすべて黒字としてきたが、06年3月期から
3年連続の赤字となった。費用計上の方法に誤りがあったことなどが原因で、
巨額の訂正につながったという。

12日に予定していた08年9月中間連結決算の発表は延期する。

 記者会見した小塚逸夫社長は
「意図的な経理操作ではないが、社長として責任を感じている」と話した。
辞任する考えはないとした。

 同社によると、製造設備の調整費用を「固定資産」の項目に計上し
減価償却をしていたが、監査法人からは「期間費用」とするよう指導された。
また工場の一部設備の減損処理も必要になった。
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リリースはこちらから。

12月10日 過年度決算訂正概要、第2四半期累計期間業績予想の修正
ならびに第2四半期決算発表延期に関するお知らせ



過去の有価証券報告書



追加修正要因はいろいろありますが、金額的に大きいのは、
「据付調整費」▲451億円。

H20年7月まで据付調整費の一部を建設仮勘定に貯めこんで、
7月に一括して償却資産へ振り替えて実際償却を開始していたのだが、
そもそもこの据付費用はそれが発生した期の費用として処理すべきでしょう?
という当然とも思える、あずさ監査法人からの指摘を受けて、
総額▲451億円も過年度損益修正をするハメに。


実際に、建設仮勘定の金額を追ってみましょうか。

連結     建設仮勘定  (有形固定資産)
H16/3期  121億円   (909億円)
H17/3期  262億円 (1,104億円)
H18/3期  346億円 (1,571億円)
H19/3期  594億円 (2,130億円)
H20/3期  642億円  (2,474億円)

うーん、5年間の有形固定資産増加額1,570億円のうち、
520億円が建設仮勘定ってのは何かちょっと違和感はありますよね。

やはり仮勘定や不詳勘定の残高が大きくなってきた時は、注意が必要なんですね。


それにしても、H20年3月末の建仮642億円のうち、
先程の据付調整費用451億円に償却戻り分86億円を加えた
537億円が過大計上だったということになるのでしょうから、
なんとまぁ大胆な処理だこと。


この他、2期連続赤字なので遡及的に減損処理も加わり、
さらには繰延税金資産の取り崩しと、見事なまでの“化粧”の落としっぷり。

その結果、自己資本1,870億円のうち実に
1,148億円が吹き飛ぶ、年末大出血サービスと相なりました。



さて私が一番気になったのは、「何故、この中間期に発覚したのか?」という点。

今後出てくる情報によって背景がハッキリ見えてくるのでしょうが、
私が監査報告書を見ていて一つ気になる点がありました。

H16/3期までは「緑監査法人」ということころが監査を担当。
翌H17/3期からあずさ監査法人となったのですが、
緑監査法人の担当者・K先生があずさに移籍しておりまして、
H19/3期まで当社の監査を担当されていました。

そのK先生が担当を外れた直後に問題が発覚・・・・・。
邪推はここまでにしておきましょう。



まっ、明日以降の相場も荒れに荒れることでしょう。

株主から「二葉亭四迷!」(意味分かりますよね)と罵声が飛ぶかもね。

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2 コメント

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Unknown (んが)
2008-12-12 12:15:36
このようなお化粧をすると、キャッシュフローの内訳(営業か投資か財務か)にも影響しますか?(四季報では営業CFが457億円、投資CFが▲699億円、財務CFが164億円と出てますが。)
Unknown (ある経理マン)
2008-12-13 01:07:48
据付調整費とあったので、この会社が固定資産を購入したときの購入付随費用だとばかり思っており、だとすると取得価額算入でいいんじゃないかと思ったのですが、逆で、会社が製造した資産を販売し、販売先に設置する際の据付費用のようですね。だとすると、建設仮勘定なんかの会社資産に計上するのはおかしい話であり、いわば販売諸掛費のようなものなので支出時費用処理が妥当ということですよね。

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