コモディティー・バブルの破綻:ニッケル(Nickel)

米国発金融恐慌から広がって、世界的な不況が長引くことが懸念される今日この頃ですが、今年前半のまさにバブル的な値上がりを経験したコモディティーの価格も、ぎょっとするほど下がっていますね。特に、工業生産物の需要が頭打ちになると、打撃を受けるといわれるニッケル。大多数の工業製品に使われているステンレスの材料なので、例えば中国の工業生産品の需要が落ち込んだだけでも、もろに影響が出るのだそうな。それに加えて過去数年間、米国の景気、新興国からもあわせて需要が伸び、需給が逼迫状態になって極端に値上がりしたところから、今回の不況での下落も激しく、ピーク(昨年夏)から80%、現物は値下がりしています。


ニッケル現物、5年間の価格(出典:Kitco)

しかし、今回の極端な値下がり要因の大きな部分は実際の工業の需給ではなく、バブル的な値上がり時に買い込んだヘッジファンドオルタナティブファンドが値下がりに従って放出せざるを得なくなり、それが極端に下方圧力をかけている、というのが今日時点で集めた記事の見方では多かった。では、ニッケルもそろそろ「売られすぎ」となり、買い時が近づいているのかもしれません。需給の面では、在庫の膨れ上がりがまだ続いているようだが、これが止まるか、緩まった時点で、価格も方向転換となる、と思えます。


ニッケル在庫、1年間の推移(出典:Kitco)


もちろん今の世界の経済情勢でこれが「いつ、また上がるか」なんてことは短期的には予想できないし、2009年も市場は厳しい、という見方も多いのだが長期的には株式と違って「会社が破綻しゼロになる」ということはないし、また、今後も工業生産にとって欠かせない材料なので(特にハイブリッド車などからの需要は増え続けるといわれる)、長期的には損はない、といえるのではないでしょうか。