日本がリードする標準“XBRL”を世界に広める〜富士通最新のXBRL仕様に対応したミドルウェアリリース

» 2008年11月20日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 富士通は11月20日、XBRLミドルウェアの最新版「Interstage XWand V10」の販売を開始したと発表した。最新のXBRL仕様である「Formula 1.0」にいち早く準拠しているほか、インターフェイスには使い慣れたExcelを利用できるのが特徴だという。

 XBRL(eXtensible Business Reporting Language)とは、各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化したXMLベースの記述言語。40カ国以上、550を超える参加企業によって構成される標準化団体「XBRL International Inc.」が標準仕様などを策定している。

藤井氏写真 富士通 ソフトウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長 藤井泰氏

 富士通はXBRL International発足当初から参画し、標準化活動や組織運営を行ってきたという。その結果、日本を中心に世界でXBRLの適用が進み、2008年3月には金融庁でXBRLを採用した電子開示システム「新EDINETシステム」が稼働。2008年7月には東京証券取引所でXBRL形式で決算短信の報告をする「第3次TDnetシステム」が稼働。2008年中には、米証券取引委員会(SEC)の企業開示情報システムである「IDEAシステム」が稼働する予定だという。

 富士通 ソフトウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長 藤井泰氏は、「XBRLは日本の企業が中心となって策定・推進した、いわば日本がリードする標準技術だ。その標準を世界に普及させるために、当社では各種取り組みのほか、ミドルウェアを提供して、さらに普及させていきたい」と語り、同社のXBRLへの取り組む姿勢を説明した。

 従来、一般企業が財務情報を監督機関に提出する際、紙やPDF、HTML形式で提出するケースが多かった。そのため、監督機関が紙やPDFを見ながら自前のデータベースへ手で打ち込む必要があり、当然ミスも発生していたという。また、勘定科目も従来方式では統一しづらく、各社でずれが生じていたという。この点、XBRLでは、各社から直接XBRLデータが監督機関のシステムへ流れることで自動的に処理できるほか、あらかじめ「Formula 1.0」などの仕様で科目を厳密に定めることであいまいさを排除している。

 富士通 ソフトウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 計画部 プロジェクト課長 斉藤一実氏によると、「日本はXBRLの先進国で、金融庁、東京証券取引所、日本銀行、国税庁がXBRLを採用しており、企業開示においてはXBRL化を2008年4月以降の決算期から義務付けている。このことからも、日本ではXBRLの普及は早いだろう」とコメントした。

画面イメージ Interstage XWand V10の画面イメージ。Excelで作成した財務データを簡単にXBRLデータへ変換できる

 新製品のInterstage XWand V10では、財務データの検証ロジックを記述するXBRLの最新仕様「Formula 1.0」に準拠。データの検証ロジックを提出側と収集側で共有し、財務情報の作成者が提出前にエラーチェックが行うことで正確な報告書作成が可能になるという。また、Excelなどの使い慣れた表計算ソフトを入力フォームにし、その後XBRLへ変換することが可能になっている。斉藤氏は、「従来の方法だと、一般企業が提出した後、監督機関がチェックし、間違いがあると電話で修正依頼をして再提出、という作業を繰り返し行っていた。このことから、チェックに数日間かかるケースも多かった。それがゼロになる点は大きい」と説明した。

 価格は、サーバ用ソフトウェア「Interstage XWand Server Runtime V10」が500万円(税別)から、クライアント用ソフトウェア「Interstage XWand Personal Runtime V10」が22万円(税別)、開発用ソフトウェア「Interstage XWand Developer V10」が50万円(税別)となっている。

 藤井氏は、「金融庁や国税庁がXBRLを採用したことで、企業側も対応しなければならなくなっている。特に金融庁は2008年4月以降の決算では義務付けている。ただし、企業は代行業者に提出してXBRLへ変換しているため、代行業者にしか売れない現状もある。今後は内部統制の観点からも、企業側でInterstage XWandを用いて変換するような啓蒙活動を行っていきたい。また、今後も官公庁などを中心に10億円規模の大型案件を進めていきたい」と抱負を語った。

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