ヘッジファンドのトップ曰く「金融危機は自分らのせいじゃない。金融システムが悪い」

2008年11月15日 12:00

株式イメージ【Financial Times】が伝えるところによると、11月13日にアメリカ議会の公聴会で招集を受けた5人のヘッジファンドトップらは現在進行中の金融危機について発言し、想定を超えうるものであるという感想を述べると共に、その原因は金融システムそのものにあるとして、「ヘッジファンドの投機行動や経営が行き詰まる中でも経営陣が多額の報酬を受け取ることは問題ではない」「規制強化はなされるべきではない」など、自らの立場の利益を擁護する発言が相次いだ。一方、現状認識として「今後さらに情勢は悪化する」との発言も見られた。

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この公聴会は金融危機調査グループ・下院監視改革委員会のヘンリー・ワックスマン委員長(民主党議員)の要請によって招集されたもの。法的拘束力や立法権限はないものの、次期大統領のオバマ氏の政策にも少なからぬ影響を与えるとされている。出席した投資家(投機ファンドのトップ)はジョージ・ソロス氏(ソロス・ファンド・マネジメント)、フィリップ・ファルコン氏(ハービンジャー・キャピタル・パートナーズ・ファンド)、ケネス・グリフィン氏(シタデル・インベストメント・グループ)、ジェームズ・サイモンズ氏(ルネサンス・テクノロジー)ジョン・ポールソン氏(ポールソン・アンド・カンパニー)の5人。

今公聴会での発言内容を箇条書きにすると次のようになる。

「過去二か月に起きた出来事は想像を超えるものだった。そして現状がまだ序曲で、これからまださらなる衝撃が襲い掛かる可能性は十分にある」
「自分たちはちゃんと税金を払っている(から文句を言われる筋合いは無い)」
「過度の(投機資金への)規制は金融市場の品質向上の妨げになる。金融危機が長引く引き金になるかもしれない」
「市場におけるバブルとその崩壊を防ぐのは事実上不可能。しかし耐えられる規模に抑えることはできる」
「金融工学関連の金融商品は規制されるべきで、今後新規の金融商品は当局の許可制にすべきだ」
「深刻な景気後退(リセッション)は避けられない。恐慌(デプレッション)の可能性すらありうる」
「今回の金融危機は自分たちのせいではなく、金融システム自体が問題だからだ」
「証券銀行や格付け機関がCDO・CDSなどの格付けをいい加減にしたのが、問題のある金融商品を世界中にばら撒く要因となった」
「ヘッジファンドの運用資産規模は絶頂時の半分から1/4までに縮むだろう」
「レバレッジへのある程度の制限は検討されるべきだ」
「ヘッジファンドの情報透明性は高めるべきである」


他方、出席したヘッジファンドトップの間でも「ヘッジファンドは金融危機の一要素であることは間違いない」というソロス氏と、「金融危機は金融セクターに属する企業に責があるが、ヘッジファンドはそこには含まれていない」とするファルコン氏の意見が対立したように、見解が分かれる部分もある。

一方でワックスマン委員長はヘッジファンドに対し、「現在規制がほとんど無く、内情を報告する義務すらない。結果として当局はヘッジファンドの運用規模・数すら把握できていない」と現状を批判。新政権において規制を行う可能性を示唆している。

さらに要点をまとめると

・現状はヘッジファンドトップにも予想できないほどの状況。今後さらなる状況悪化(金融市場の下落・混乱)が起きる可能性は否定できない。リセションどころか恐慌すらおきうる。
・情報の透明性など一定の規制には賛成。しかし過度の規制はかえって状況の混乱を招くので反対。
・多額の報酬は当然の権利で文句を言われるものではない。
・金融工学による金融商品は規制されるべきで当局の許可制もありうる。
・証券銀行や格付け機関が金融商品に対する仕事をまともにしなかったのが金融危機の大きな要因。
・ヘッジファンドが金融危機の一因を担ったかどうかについては意見が分かれる。


などとなる。特にソロス氏が「現状はまだ序の口で今後さらに大きな金融危機の衝撃が襲い掛かる可能性がある(市場は現状を受け止め切れてはいない)」と発言したことは注目に値する。

誰もが現状を冷静に認識する一方、自分の責は認めたくないものだし、他人の責はよく見えるもの。今回の公聴会の発言もヘッジファンド全体としての意見もあれば、それぞれ個々の意見もある。金融当局担当者(とその上の立場にいる人たち)はそれぞれの発言と立場を十分に考慮し、現実として目の前にある各種データ(市場価格の動向など)を元に、より正しいと思われるものを取捨選択し、問題解決のためにベターな手を打ち出してほしいものだ。

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