アメリカの景気はどうなるでしょうか?実際に街で見る限りは、今のところさほど景気が悪化しているようには見えません。しかし私が見ているのはニューヨークの中心地です。上澄み中の上澄みであり、ピラミッドに例えれば、てっぺんのホンの一角に過ぎません。しかも今は、景気が悪くなるとすれば、その出だしのホンの数日目に過ぎないのです。全体の景気は、これから悪化していくと考えるべきでしょう。

 日本ではバブル崩壊後、数年に亘ってお金の巡りが悪くなり、デフレが起きました。しかし日本に於いては個人の貯蓄が大きくあったので、そんな中でも貯蓄を取り崩しながら暮らしていくことが可能で、その場合はデフレ、即ちモノの値段が安くなることはいいことだ、などど云う主張もあるくらいでした。一方アメリカに於いては、個人の貯蓄は平均で月給の2ヶ月分しかないと云われています。人々はお金を借りながらモノを買う、と云うことに慣れきっています。こんなアメリカに於いて、お金の巡りが悪くなったら、即ち”借りられなく"なったら、下手すれば暴動モノでしょう。暮らすために取り崩す貯蓄がないからです。

 このような状況の中で、政権は民主党になることでもあるし、国は大量の、いや超大量のお金を金融システムに投下し、お金の巡りが悪くならないように、デフレが起きないように、必死に防衛することでしょう。これは基本的にはかつての日本でもしたことですが、貯蓄の多寡の違いが、国の打つ手の規模と真剣度に違いを生むと思います。その結果短期金利は下がり続ける。かつての日本と同じゼロ%になるのは時間の問題です。

 お金を超大量に投下するために、国は更に借金をすることになる。国債の発行です。日本では国債の殆どは国内で消化されますが(内国ファイナンスと云います)、アメリカは世界中の投資家に国債を買ってきてもらいましたから、流石に同じ金利では消化できないでしょう。そうして長期金利は上昇していく。そして債券の年限を横軸、債券の金利を縦軸にした所謂イールド・カーブ(金利曲線)は右肩上がりに立っていくことになる。まぁこんな具合に、アメリカの金利は変わっていくことでしょう。

 貯蓄の多寡の他に、もう一つアメリカと日本で違うのは、日本は大幅な経常収支黒字でしたが、アメリカはそうではないと云うことです。即ち、国を跨いだモノの出入りに関しては、ドルを売って外貨を買い、その外貨でモノを輸入している部分が大きい訳ですから、一方でアメリカから見た外人が、ドルを買ってアメリカの金融資産(株や債券)を買ってくれないと、ドルは一方的に安くなってしまうと云う問題があります。これもまた、お金をばらまくために発行する国債の金利を高くして、魅力的にしなければいけない理由になるでしょう。私はエコノミストでもないし現役の債券トレーダーでもないので確信はありませんが、上記のような流れになるのではないかと、そう思っています。

 かつて20年前、アメリカでS&Lの金融危機があった時も、概ね同じようなことが起こり、高い金利の30年債や40年債が発行されました(FICOやREFCOなど)。もし同じことが起きるなら、私はきっとやりたいことがあります。それはこれら長期債のゼロクーポン債、即ち満期30年とか40年でその間に一切利払いがない債券を買うことです。金利が高いので、3-40年後に元本100ドルが返ってくるこれら債券は、購入価格で10ドルもしないものでした。あのゼロポンを個人的に買おうと思って買いそびれたのが、私の大きな後悔です。今度こそは、きっと買いたいと思います。長い目で見れば、きっとアメリカは復活し、一旦上がる長期金利もいずれは再び下がり、ドルも強くなると思うからです。

 何やら難しい話になってしまいました。要はどんな時にもチャンスはあると云うことです。ピンチはチャンス!色々なチャンスを拾っていきたいものですね。