分裂勘違い君の「お金を刷りまくり政策」の日銀がおかしい点

fromdusktildawn氏に恨みがあるわけでは全くないのだけど、人気者なので、つい細かなところにもツッコミを入れたくなってしまう。

(会計問題なので、AntiSeptic氏のエントリーに先を越されたかなと思ったけど、違うポイントだった。)

日銀というのは政府機関の一つですから、
日銀がお金を印刷しまくって、それで国債を買いまくるということは、
政府の借金が減っていくのと同じことです。
たとえば、日銀が市場に出回っている全ての国債を買い占めたとすると、
政府が日銀に500兆円の借金をしていることになります。
しかし、日銀というのは政府組織の一つですから、
政府が政府に借金をしているようなもので、
実質的には、もはや借金ではありません。


http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20081103/p1:Titlehttp://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20081103/p1:Bookmark

この部分、かなり怪しい表現になっている。そもそも銀行券というのは銀行に財産を預けた際の「預り証」に起源があり、日銀券(ようするにお札の現金)は日銀から見ると借金だ。

日銀に国債を買い取らせてから国債を廃棄させたら、日銀は債務超過になる。で、普通に考えれば結局は国が補填することになるので国の借金は減らない。いいかえると、シニョリッジ政策は、日銀に粉飾決算をさせるか、日銀を債務超過に持っていくという奇策なのだ。(お金を印刷しつつ、帳簿は誤魔化すという粉飾)

ただ、日銀が国債の全引き受けをやれば、すくなくとも利払いについては、国の組織間でやり取りをしているだけになるので、右から左へ移っていることにできる。よく金利が上がったら国家財政破綻だという話しを聞くけど、それに対しては日銀が国債全引受とかやれば(逆に、政府に対しての日銀特融でもいい)、財政は破綻しないと言うことはできると思う。

なお、日銀のバランスシートは下記のような感じで常に最新のものが公開されているが、「発行銀行券」が負債の部にある。最新版では発行銀行券75.4兆円に対して、保有国債は65.4兆円。これでも昔に比べれば減ったと思うが、日銀が国債を買えないっていう法律は形骸化しているようで、fromdusktildawn氏の政策は、法改正しなくても実行に移せるような気もする。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/ac07/ac081020.htm:Title


余談だけど、純資産(自己資本)を「準備金+資本金」だとすると2.6兆円しかない。外国為替を10.7兆円を持っているみたいだけど、為替差損で債務超過になったりしないといいのだが...。(あと、なぜか10月に入ってから外国為替が増えている。円売り介入したの?)

あと探してみたら、似たような流れでの解説が2005年の「本石町日記」さんと「isologue(イソログ)- by 磯崎哲也事務所」さんにも載っていた。イソログさんところが図もあって詳しいので、解説が欲しい方は参照してみるといいと思う。

http://hongokucho.exblog.jp/2635830/:Title
http://www.tez.com/blog/archives/000445.html:Title="図解シニョリッジ"


さて、細かいツッコミはさておき、fromdusktildawn氏のエントリーを読んで、いくつか考えた点。

まず個人的には、政府が公共事業とか減税をやって、その財源としての国債中央銀行が引き受けることで、(ハイパー)インフレが起きるという流れになると思っていたので、fromdusktildawn氏の日銀が市中の国債を全部吸い上げる勢いで買いオペに出るというような作戦について考えたことはなくて、ちょっと新鮮だった。


あと、円キャリーについては、まあ外国企業が円で借りなくても、日の丸機関投資家の行動パターンとして、農林中金、米住宅公社債5兆5000億円を保有みたいなドキドキしたニュースもあったぐらいで、今のマネーはグローバルに儲けを求めて世界中へ向かって行くと思うので、内需拡大への寄与率はどうしても下がると思う。

ただ、私は日本人がどんどん世界に向けて投資をしなければいけないと考えている。日本の内需喚起といっても、倹約を美徳とするような民族だし、ちょっと贅沢にお金をいっぱい使うと「ホテルのバー安い」とは何事だという論調でマスコミに叩かれたりもする。そして、ある程度インフラも充実して国内に有効な投資案件も少ないので、海外へ投資して儲ける流れでいいと思う。ここでの儲けは「生産」じゃないのでGDPには寄与しないけど、国際所得収支がプラスになって、国民は多少豊かになれる。

お金が必要な個人へ回っていない(労働分配率が低い・条件の良い雇用が少ない)という部分は問題だし、内需をどうやったら増やせるのかは、真剣に考える必要があると思う。もちろん、リフレ政策もある程度は効果的だと思うけど、それだけだと限界が来るような気がする。日本の将来に期待が持てる、社会保障、税制、教育、国家財政、そして民間のイノベーションでの生産性アップをコツコツと実現していくしかないのではないだろうか。

まあ、確かに麻生内閣小沢民主がそれをやろうとしてくれているとは思えないのだけど...。

fromdusktildawn氏のエントリーの、その他の点については同意。今は米国も欧州もマネーをじゃぶじゃぶやってる上に不況なので、円キャリー的な弊害も少ないと思うので、リフレ政策的な作戦には大賛成だ。