Googleのストックオプション付きシェフの「いい仕事」に感動

Googleと言えば、社員に対する福利厚生が最高、世界各国の健康的な良質の食事・ドリンクが無料で用意されていることは有名なお話ですよね世界中の技術者が憧れる、Google本社の豪華ランチを食べてみた!!(確かに美味しそう。。)

今回取り上げるのは、腹ぺこなGoogler(Googleで働く人たちのこと)たちの空腹を満たしながら、それだけではなく料理を通じてGoogleの企業文化にまで大きな影響を与えてしまった、世界初のストップオプション付き上級シェフ、チャーリー・エアーズ(Charlie Ayers)。彼のことを知り、そのいい仕事に大変感銘を受けましたので、ちょっと書いてみたいと思います。


チャーリー・エアーズがGoogleのシェフになるまで

チャーリーはニュージャージーのHilton hotelで料理人としてのキャリアをスタート、時には料理学校の講師を務めたりしながら、米国ロードアイランド州やボストン州の有名店で腕を磨いておりました。常に新しい場所、新しい味を知りたいという強い願いを持ち、また料理以外でも音楽など、いろいろな新しい世界に自分から飛び込むことを好み、同じ場所に安住の地を求めるような人間ではありませんでした。

そんなチャーリーに転機が訪れます。チャーリーがカリフォルニアを訪れた時、米国で熱狂的な追っかけが有名なロックバンドGrateful Deadのお抱えシェフであったChez Rayと知り合い、そしていつしかGrateful Deadとそのツアークルーのために料理をふるまうことになったのです。これが後のGoogleとの出会いのきっかけとなります。

その後、チャーリーはGrateful Deadと離れ、自分の料理を楽しんでくれないお金持ち一家のお抱え料理人として、あまり気乗りしない日々を過ごしてました。そんなときにどこで聞きつけたのか(こういうところがGoogleのすごいところだと思いますね)、Google共同創業者のセルゲイ・ブリンが「是非Googleの専属シェフとして働いてほしい」と頼み込みます。しかしそのころのGoogleは設立1年も満たない社員12,3名の小さな会社。。「お前たちの会社にはキッチンだってないんだろう」といって、チャーリーは断ってしまいます。。

そうして、継続して気乗りしない日々を過ごしていたチャーリー。ある時、そんなチャーリーの目の前にGoogleのシェフを募集する求人広告が現れます。このときGoogleの社員数は45人、本社は現在のマウンテンビューに移転、この募集に応募してきた25人のシェフに実技試験を行い、全員不合格にした後でした(Googleのこだわりも半端じゃないですね。。)。改めてGoogleの実態を自分の目で確認したいと思ったチャーリーはマウンテンビューを訪れセルゲイと再会。セルゲイの熱意に負け、Googleのために精一杯自分の腕をふるうことを決意、Googleの56番目の社員として入社します。なぜチャーリーがGooglerとなる決意をしたか。その時のチャーリーの言葉が印象的です。

そこにはエネルギーが感じられた。みんながエネルギーを持っていたんだ。誰もが集中し、熱中していて、みんなが一つの目標に向かっていた。この会社を成功させよう、という目標だった。それは『自分を見てほしい』ではなくて、『自分たちがやったことを見てほしい』という姿勢だった。(「Google誕生 ガレージから生まれたサーチ・モンスター」P304)

チャーリー・エアーズがGoogleでやったこと

Googleの一員となったチャーリー。しかしGooglerはチャーリーにハンバーガーやホットドッグ、ブリトーなどのジャンクフードを要求します。そんなGooglerに対し、「私はそんなものを作るために雇われたのではない。もっと別なものを、有機栽培された食材を使った料理を提供するために私はここにいるのだ」と一喝。その後もチャーリーはテクノロジーおたく達に有機野菜の素晴らしさを語り続け、料理という武器を使い、Googleに小さな変化を仕掛け始めました。

チャーリーがGooglerの仲間入りをして6か月、のべ数千回の食事づくりに疲労困憊のチャーリーでしたが、Googlerのエネルギーに勇気づけられ、魂と愛情にこもった料理を提供し続けます。そして「Googleは社員に最後の一口まで楽しめる素晴らしい食事を提供する会社」として有名となり、シリコンバレーではGoogleの食堂がその辺のどのレストランよりもおいしいとの評判を獲得。当然Googlerの圧倒的な支持を得て、Googleの食堂は「charie’s Place」と愛情をこめて呼ばれるようになりました。

そして「以前Grateful Deadのシェフをしていた人が、最高にホットな会社で最高にグルメな料理を振舞っている」と、チャーリーの噂はどんどん広まり、Googleが優秀な人材を獲得し、そして繋ぎとめる重要なファクターとなったのです。

もう一つチャーリーらしいエピソードを。Googleは2004年8月19日にNasdaqに上場しますが、そのお祝いパーティーでのこと。上場のお祝いと言えば、一般的にはシャンペンを用意し、コルクをポンと開け、高級料理に舌鼓を打ちながら会社の未来を語りあうのが通常。しかしチャーリーは違いました。チャーリーは 風味豊かなアイスクリームで有名なベン・アンド・ジェリースから取り寄せた、一日中食べ放題のスペシャル・アイスクリーム・バーを用意。Googlerは一日中アイスクリームを何ガロンも平らげて、Googleの上場をみんなでお祝いしたのであります。。

チャーリー・エアーズとGoogleの別れ

チャーリーが料理を通じてGoogleに提供してきたものの大きさにGooglerのみならず、シリコンバレーのみんなが気付き、そして称賛され、尊敬のまなざしで見られるようになり、その存在が神格化されるまでになったチャーリー。ですが、チャーリーはやはり一箇所に安住の地を求めるような人ではなかったんですね。。

チャーリーはGoogle株式公開の数ヶ月後、カリフォルニアに自分のお店を出すという難しい決断を下します。Googlerに料理だけでなく、エネルギー・情熱・熱狂・楽しさ、もっといっぱいのものを届け続けた5年半。セルゲイ・ブリンラリー・ペイジの創業者二人はチャーリーとの別れを本当に残念がっていたと言います。

そしてGoogleで定期的に開催される「花の金曜日」のお祭りのこと。CEOのエリック・シュミットが今日のお祭りが最後の参加となるチャーリーをステージに上げます。そしてチャーリーとGooglerのために、チャーリーの顔がプリントされた5,000枚のTシャツを用意。Googlerがステージに押し寄せ、チャーリーは何時間もかけてTシャツ一枚一枚にサインをし、涙を流しながらチャーリーを抱きしめ、写真を取り、スタンディング・オベーションでチャーリーの栄光をたたえ、感謝し、Googler全員がチャーリーとの別れを惜しんだのです。

チャーリーが自ら作り上げたGoogleの文化に抱かれ、そしてそのGoogleを旅立ち、次の新しい挑戦に向かった瞬間でした。

現在のチャーリー・エアーズは

現在チャーリーはスタンフォード大学の近くに住居を構え、レストランの経営を行いながら、Googleで培った「料理を通じてよりよい企業文化を作る」知見を活かしたコンサルティング活動や、料理本の出版、料理の世界を超えた非営利団体の顧問を務めるなど、幅広い世界で活躍中です。

チャーリー・エアーズのHP
チャーリーが2008年にGoogleを訪れ、彼の書籍「Food 2.0」について語った際のビデオ

「いい仕事」とは何か。これを説明することはとても難しいのですが、チャーリーが実際にやった仕事に触れると、そのエッセンスが垣間見ることができるような気がします。今回ご紹介できなかった楽しく、そして素晴らしいエピソードもたくさんありますので、是非下記書籍をご一読いただければと思います。

私もいつかチャーリーのような、人を幸せに、ハッピーにする仕事をしてみたいなと思っています。

Google誕生 ?ガレージで生まれたサーチ・モンスター

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