【10月30日 AFP】世界各国を巻き込んだ金融危機は、各国政府が大規模な市場介入を図り、1930年大恐慌の再来は未然に防がれた。 

 その一方で、各国政府が行きすぎた規制強化の「罠」に陥る危険性があると、経済協力開発機構(Organisation for Economic Cooperation and DevelopmentOECD)の主任エコノミスト、クラウス・シュミット=ヘッベル(Klaus Schmidt-Hebbel)氏は警告する。

 金融資本市場には大幅な改革が必要だが、シュミット=ヘッベル氏は27日発売の「OECDオブザーバー(OECD Observer)」誌のなかで、金融市場改革の必要性が声高に叫ばれているが、各国政府は過剰反応は避けるべきだと語る。「行きすぎた規制は、将来的に金融革新、市場統合・成長を妨げるといった負の側面もある」
 
 同氏のコメントは、中国・北京(Beijing)で前週開催されたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議を意識したもの。ASEMでは議題の1つとして、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した世界規模での金融危機への対応策などが協議された。

 これまでの金融システムに修正が必要であることは、誰の目にも明らかだ。問題は、金融機関を救済するために欧米政府がここ2週間に行った過去に例を見ない大規模介入は、大恐慌を防ぐための最終手段としての一時的な措置なのか。それとも、1980年代から続いてきた金融市場の規制緩和主義からの転換を意味するものなのかということだ。

■金融危機を招いた「4つの構造的弱点」
 
 シュミット=ヘッベル氏は「OECDオブザーバー」誌とのインタビューで、世界市場を崩壊の危機に陥れた4つの構造的弱点を指摘している。

 第1の弱点は、富裕層に過度に重点を置いた企業経営のあり方、不十分なリスク情報提供、格付け機関の管理力不足、金融市場に対する各国政府の監視不足、これらが組み合わさったことだ。

 第2は、世界的な金融危機を招きかねない市場の過熱を防止するために必要な利率、税率、金融政策などの見直しを金融当局が行わなかったこと。

 第3は、今回の金融危機に対し、各国政府が「場当たり的」な対応しかできなかったことだ。この点についてシュミット=ヘッベル氏は、各国政府は金融危機対策をより的確なものへ向上させる必要があると述べている。

 そして第4の弱点は、もっと早い段階で国際金融システムのあり方を再考する必要があったことだと、同氏は指摘する。翌月15日にワシントンD.C.(Washington D.C.)で開催される緊急金融サミットでは、「第4の弱点」について各国首脳が協議することとなる。(c)AFP