「リセッション」を再確認してみる

2008年10月27日 08:00

リセッションイメージ最近は経済関連だけでなく一般ニュースでも耳にするようになった「リセッション」という経済用語。英語の「Recession」をそのまま読んだもので、直訳すれば「景気後退」。本来の意味には景気の後退やそれに続く不況期まで含めることもあるし、日本では一部で景気が良くない状態全体のニュアンス、さらには経済成長率が鈍った場合にまで用いている場合もある。しかし報道でよく見聞きする「リセッション」は、アメリカの国内機関の定義におけるもの。そう遠くない時期に公式発表される可能性を考え、ここで一度再確認をしてみることにする。

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「リセッション」の定義

アメリカにおける公式な景気判断、特にリセッションへの突入や脱却は【全米経済研究所(NBER、National Bureau of Economic Reasearch)】が公表している。この機関、もともとは非営利の民間組織だったが、同機関の景気判断をアメリカの商務省が1961年に用いるようになってから、半公的機関のような立場にある。

さて市場全般においては、リセッション突入の是非は「実質国内総生産(実質GDP)が対前年比で2四半期以上連続してマイナス」が判断基準とされている。一方でNBERでは

1.「経済活動全般」にわたって「相当な下降局面」にあること
2.(景気の後退が)数か月以上の持続的なものであること
3.実質GDP、鉱工業生産、雇用、実質個人所得(移転所得をのぞく)、製造業・卸売・小売の実質販売高などで明示的な下降が見られること


の3点を考慮した上で「リセッション突入」を判断することになる。

ここで注意したいのは「1」の「下降局面」や「2」の「持続的」は、開始時点では判断が出来ないこと。また、十分なデータを蓄積してから慎重に検討して発表される。日本の梅雨入り・梅雨明け宣言のように、「現在までのデータで検討したところ、○か月前からリセッション入りしていました」といった感じだ。

実際に前回のリセッション入り・終了判定の発表とその時期は次の通りで、大きく期間をあけている

・リセッション入り:2001年3月……発表:2001年11月
・リセッション終了:2001年11月……発表:2003年7月


今回ほぼ確実にリセッション入りするであろうアメリカ経済も、発表時にはすでにリセッション入りから半年以上経過している、という可能性は極めて高い。市場で簡易的な判断基準として「実質国内総生産(実質GDP)が対前年比で2四半期以上連続してマイナス」が用いられているのも、このようにNBERが慎重な姿勢をとるためである。ただし市場判断が用いるGDPは後に修正されることが多く、判定を誤るリスクが高いのもまた事実。

過去の「リセッション」

過去における「リセッション」の時期だが、NBERなどの資料によれば次の通り。なお戦前のデータもせっかくなので列挙してみた。いつかどこかで使う機会もあるだろう。

・1899年6月~1900年12月(18か月)
・1902年9月~1904年8月(23か月)
・1907年5月~1908年6月(13か月)
・1910年1月~1912年1月(24か月)
・1913年1月~1914年12月(23か月)
・1918年8月~1919年3月(7か月)
・1920年1月~1921年7月(18か月)
・1923年5月~1924年7月(14か月)
・1926年10月~1927年11月(13か月)
・1929年8月~1933年3月(43か月)
・1937年5月~1938年6月(13か月)
・1945年2月~1945年10月(8か月)
・1948年11月~1949年10月(11か月)
・1953年7月~1954年5月(10か月)
・1957年8月~1958年4月(8か月)
・1960年4月~1961年2月(10か月)
・1969年12月~1970年11月(11か月)
・1973年11月~1975年3月(16か月)
・1980年1月~1980年7月(6か月)
・1981年7月~1982年11月(16か月)
・1990年7月~1991年3月(8か月)
・2001年3月~2001月11月(8か月)


もっとも長いのは「世界大恐慌」時における1929年8月~1933年3月の43か月。逆にもっとも短いのは1980年1月から1980年7月における6か月。ただし後者の場合、直後の1年後に再びリセッションが起きているので、実質的にはこの2期はまとめて考えるべきかもしれない。

「リセッション突入」宣言で何が変わるか

一言で表現すれば「直接的には何も変わらない」。先の例に挙げた「梅雨入り宣言」において、宣言をしたからといって雨の降る量が2倍に増えたり、カビの繁殖度が加速度的に大きくなるわけではない。特に「突入宣言」は事後追認であるため、事態の再認識の意味合いが強い。

もちろん心理的影響は少なくない。「景気後退」を多くの人が認識し、消費行動はますます萎縮していく。何らかの経済判断をする際にも、個人個人の判断要素において「リセッション入りしているから」という項目が加わり、マイナス要因になるのは間違いない。

希望の光イメージ一方、明らかな景気後退であるリセッションが宣言されることで、逆に過去の事例とを比較し「あと○か月もすればこの不景気も回復に向かうようになる」という希望が多くの人に生まれることも否定できない。五里霧中という言葉に例えられるように、先がまったく見えない中を歩く状況ほど不安なことはない。距離は不明でも、ゴールへの光が見えただけで、先に進む者にとっては安心感を得られるようになるわけだ。

さらに「リセッション」が明確になれば、政府や公共団体による景気対策もより積極的なものとなるだろう。梅雨明け宣言が行われているのに、「冷やし中華」を用意しない大衆食堂などない、という感じである。


リセッションイメージあながち悪いことばかりではないアメリカの「リセッション」。しかし当のアメリカでは、今回リセッション入りすれば、相当長期間にわたるものとなる観測が広まっている。また、今回の金融危機はこれまでにない要素を多分に含んでいる(為替の急速な変動、各国のデフォルト危機、CDSやサブプライムローンなど過去に例を見ない金融商品による世界的な市場混乱、高レベルなレバレッジによる「非現実経済」の暴走的な拡大化……etc.)ため、これまでの事例には当てはまらないリセッション、あるいはそれに類するものが起きる、とする説もある。

先の【ワールドワイドな半額セールス】からも明らかなように、デカップリング論(景気後退はアメリカのみ。世界全体ではプラスとする考え方。【「デカップリング論」って何?】参照)はすでに否定されたものとなっている。アメリカのリセッションの公認は、アメリカはもちろん世界全体に大きな影響を与えることは間違いない。

仮に突入したとなれば、過去の事例を最大限に活用し、かつ新しい事態への対応を全力で検討しながら、最善の手を可及的速やかに打ち、一刻も早い脱却を目指すべきだろう。


■関連記事:
【この頃アメリカで流行っている「トレードダウン」という考え方】


(最終更新:2013/08/02)

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