ある有名テレビ司会者のコメント聞いて

 テレビでかの人が「これは何かの予兆ではないか」めいたことを、開いたばかりのニューヨーク株式市場の渋り勝ちな展開に重々しい声でコメントした瞬間に、今日の下のエントリーにも書いたけれども金融危機の峠は過ぎたなと思った。

 あとはへんな声や、へんな予言や、へんな文明論や、へんないヶ をますます区別して論じなければいけないだろう。

 そもそも自己実現的な銀行取付への対策と不良債権処理の対策とを脳内でごっちゃにするネットの妄言には要注意であろう*1。ただ、正直、もう批判するよりも僕は哀れみさえ感じてるのだが……。

(補遺)ちょっと日本語が不親切だったけど、要するにそのテレビの司会者がいうことはほとんど経済問題については間違っているか誤った予測をするので、彼がへんな予兆めいたことを匂わすことは、僕にはまったく逆の事態の予兆に思えるというまさに逆インディケーターの役割をもっているということ。この人が(たぶん本人だけではなく後ろで作りこむ人たちも含めて)こうまで間違った経済論を公言してそれを日に何百万人も視聴していることは、ネットの妄言などと比べることができないほど物凄い問題だと思うけれども、まあ、そういうのも公的な知識として誰でもアクセス可能なもの(つまり経済学の教科書)が他方であるので、その司会者のいうことを真にうけてすぎる人はやはり自分の責任ということになるんでしょう。それに常識的に考えてというレベルの経済学の真理と事実体験もあるわけで、不況のときに金利上げればそれは不況は悪化します(それでもその不況の果てに何かパラダイスがあったり預金が増えてうま〜と思うならばご勝手に、ということ。そんなことは過去にもこれからもないでしょう。不況に直面しそうな国が金利を上げているのかどうか観察すれば一発でわかりますが、それも海外追随wwだというならば日本道をまっとうしてください 笑。そして財政政策もあれだけ90年代にやった経験を忘れているようですが、まあ、ほとんど効かずにただ単に前と同じようにますます財政赤字を悪化させるという自虐的なネタと健忘症が好きな人にはおススメできるでしょう)。こういうと突き放しすぎという見方もありますが、やはり安易な情報の利用はそれに比例して安易な失敗を招く、というだけの話でしょうね。

*1:簡単にいうと預金の引き出しに銀行取付けに並んでいる人たちの前で議会の面々が不良債権処理を透明性とスピードをましておこないますと拡声器で叫んだり何か資料をみせても説得しても、いやその瞬間にその銀行のバランスシートがきれいさっぱりに神の手でなったとしても、「おれの預金よこせ!」と叫んでる人たちの前ではそんなことがいったいどれほどの効果をもつのか。まあ、まさに神頼みか 笑

夕方、テレビを見ててふと思うこと(ただの雑感)

 食事の用意をしながらちらちらとテレビを見た(ふつうは見ないが経済ニュースで何があるかわからないから最近はみている)、たまたまNHKの番組「ゆうどきネットワーク」で、立教大学の山口氏がゲストだった。彼の答えも別によく聞いてないのでそれはおいといて、関心を魅かれたのが視聴者の質問だった。いまの株安や物価高をうけての質問で、「年金を払ってもらえるのでしょうか」という問いがあった。ほかにも20代男性の賃金やボーナスの引き下げの不安とかもあった。

 しかし年金不安は直接には今回の株安からの影響はないだろう(短期的な現象なので)。それはそれとしてこういう不安が一般的なのに、他方で僕がみた範囲では番組には誰も若い人の雇用の心配や、教育費の中高年層の事実上の増加懸念など、いわば若い世代の利害がほとんど語られていなかった。正直、年金不安や株で運用している高齢者世代よりも僕には若い世代の就職とか教育への圧迫(不景気になれば公的な教育費は減らされたり、あるいは家計の実質負担増になる)の方が気にかかる。せっかく新卒市場が好調(中途採用市場もだが)なのにその芽がつぶされるのは困る。

 しかし年金に執着する声は本当に大きいなあ……。率直にいって年金を減らしてでも若い世代にいっそうの再分配しないと僕としてはまずいと思うのだが。それが結局は僕のような中高年や老人世代の利益にも繋がり、みんなの「欲」が満たされやすいと思うんだけども。

 それはそうとして老人たちの若い世代を犠牲にしても意識的にか無意識にか国家資源の獲得を追い求める欲深(greedy)がいまの僕の問題なんだよな。とか書くと「老人=弱者」の声からする反発が物凄そうだけども。(テレビの質問がそうだというわけではなくて一般的に)老人の欲深の声を抑えるためにもマクロ経済運営がうまくいくことが必修なんだが……。

「利権」を都合よく利用する利権化すると学会メンバー(笑)

 へえ〜こういう話があったんですか(下のリンク先のブログ参照のこと)。

 唐沢俊一検証blog
 http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20081016/1224123071

 ご指摘の通りに僕の話を「曲解」してますねえ、唐沢氏は。でも不思議と、ど〜でもいいか感がみなぎるのを否定できません 笑。個人的に山本氏しか興味わかない、彼はいろんな意味で面白いテキスト書くので、僕の息抜きともいえる増田悦佐本の検証の中で重要な位置(反駁ネタ)なんですよね。

 しかし唐沢氏のは以前、これを読んで「つ、つまらん」と思ってそれから大して彼には気にとめてませんでした。そういえばこの本関連で何か話題になったなあ……。でもテキスト以外で勝負(つうか話題)になる人って基本的に僕の中では価値がないんですよね。

 まあ、別ブログで暇がでたときに「あとで話題にする」かも。

ヤバい危機を抜け、「ふつうの株価不安定」に?

 先週から今週の月曜日が始まるまでは、A.Schwartzが昔区分した「Real and Pseudo- Financial Crises」の前者になるんじゃないか、とヒヤヒヤしてましたが、たぶんその危機は米国では回避されたでしょう。確かに今後とも15日みたいに小売売り上げ高が予想以上に悪化したなど先行きの景況への不安からかなり株価が落ち込むこともあるかもしれませんが、それは理由のある株価下落ですから。むしろ怖いのはDiamond -Dybigがその昔、論じたような自己実現型の危機ですよね。そういう理由が判然としない危機こそ怖いわけですが、たぶんそれはG7やその後の欧米政府の政策によって回避されたのでしょう。

 問題はやはり今日の日本経済新聞の一面にもありますが、「世界同時不況」がどのくらいの深さと持続かですね。これについては諸説ありますが、僕はわりと米国の不況は長びかずに、世界を「ふつうの不況の波が覆い」そして日本はその中でも(すでに存在する国内要因に加えて海外要因のショックが重なることで)深刻な部類に入るのではないか、と思っています。

 米国の不況はそれほど長びかないという根拠は、原田泰さんのこの論説安達誠司さんの論説、そしてJames Hamiltonも(ちょっと冗談めかしてますが)通常の景気後退を予測してます*1。まあ、反対にEichengreenのように失業率倍増の「大恐慌」を予測している人もいますが*2

 新興国経済も様々ですね。梶ピエールさんが中国の不動産市場の底堅さを示唆する情報を提供されています(梶ピエールさん自身は慎重ですが)。

*1:ハミルトンのそのリンク先にある不動産ローン残高の急増は貸し渋りとか貸しはがしが起きてない証拠だといいですよねえ〜でもなんか疑ってみるべき数字ではあります

*2:IMFエコノミストの予測も住宅価格の落込みが失業率を倍増させるとしてますのでアイケングリーンと基本同じスタンスでしょう。そして住宅価格の調節はこれはまだ続きそうです

日本銀行のスタンスとエコノミスト

 ドタバタしていたのでチェックを忘れてたESPフォーキャスト調査。今回の調査は個人的に非常に面白かった。なぜならばリーマン&AIG問題以降、つまり金融危機が顕在化してから初めての調査だからだ。

http://www.epa.or.jp/esp/fcst/fcst.html

 そして僕の予想通りにあるアンケート結果がでていて興味をひかれた。それはこのような金融危機という事態をうけているのにも関わらず(そして前回よりも国内の経済指標悪化や予測の下方修正などが重なってても)、実に90%以上のエコノミストたちが、日本銀行が今後1年以内に金利を引き下げるのではなく、むしろ遠くない将来にいまだ上げると予測していることだ(前回調査では利下げ派は1名だったが今回は2名に)。不況であるならば利下げを考えるのが教科書的な発想だ。しかしほとんどのエコノミスト日本銀行は不況での利下げよりも、言葉はやや悪いが隙あらば利上げに移ると予測しているわけだ。

 これはエコノミストたちが日本銀行が06年3月の量的緩和解除以降継続している「金利正常化」路線を、今回の金融危機や国内の経済状況の悪化にもかかわらず、今後ともにそのスタンスを変更することはない、と予測していることを意味する。いわばいまの不況は「金利正常化」のための「試練の時」(利上げのタイミングをはかる待機期間とでもいうか)と読んでいるのではないか? エコノミストたちにどうこういっているつもりは無論ない。むしろ彼らが合理的に推測している日本銀行の行動の読みは「正しい」だろう。そしてもちろん日本銀行が市場関係者にあいかわらずの「金利正常化」という異常化のメッセージを発信し続けていることは、すでに経済学すら不用のただの(国際的にも)常識はずれとしてみなされる日が接近してきている、と考えるのは僕だけだろうか?