【10月9日 AFP】世界規模の金融危機の対処策として欧米各国の中央銀行が協調利下げに踏み切るなか、中国が追随利下げに踏み切ったことは、驚きをもって迎えられた。その一方で、世界経済において高まる中国の存在感を示唆する出来事と指摘する声もある。

 米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など主要6カ国の中央銀行は8日、世界規模での金融混乱と国内の不安を緩和する目的で、協調利下げの実施を発表した。

 引き続き、中国人民銀行(People's Bank of China)も同日午後、1年物の貸出基準金利を0.27%引き下げた6.93%とし、金融機関向け預金準備率も0.5%引き下げると発表した。

 中国の追随利下げを受け、9日付けの豪紙「オーストラリアン(Australian)」一面には、裸一貫となり樽だけを身にまとった米国人投資家を、中国人のスーパーマンが救いに現れる風刺画が掲載された。中国人スーパーマンは「気にするなよ。中国は、資本主義だって助けるのだ」と呼びかけている。

 一方、金融アナリストのなかには、中国の協調利下げ追随は、驚くにはあたらないとの意見もある。

「世界規模での経済成長や金融危機への国際協調には、中国も含まれるべきだ」と、JPモルガン(JP Morgan)香港(Hong Kong)法人のアナリスト、フランク・ゴン(Frank Gong)氏は語る。

 中国は、外貨保有高では世界第1位、米国債保有高では第2位、来年には9%の経済成長率を見込んでいる。経済大国が景気低迷に落ち込むなか、中国が世界の経済成長のけん引役となることはほぼ確実だ。

 中国が追随利下げに踏み切る一方で、先進7か国財務省・中央銀行総裁会議(G7)参加国のなかで、すでに0.5%の低金利が続く日本だけが協調利下げに加わっていない。

 この事実に、アジア地域における経済構造変化の一端が現れていると指摘するアナリストもいる。

 北京在住のエコノミスト、ウィリアム・ヘス(William Hess)氏は、「現在の金融危機が解決するころには、世界経済における中国人民銀行の役割は、さらに増大しているだろう」と予測している。(c)AFP/D'Arcy Doran