評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」
山崎元が原稿やTVでは伝えきれないホンネをタイムリーに書く、「王様の耳はロバの耳!」と叫ぶ穴のようなストレス解消ブログ。
にわかリーマン評論家
9月15日の米国リーマンブラザーズの破綻から3日間、にわかに取材やテレビ出演の依頼が増えた。16日と17日の前半までリーマン、17日の後半から18日にはAIGが話題の中心だったが、ライブドア問題並の忙しさとなった(ライブドア問題のように長く続くと困るが)。
テレビは自分のオンエアを一つも見ていないので、生放送のもの(「めざましテレビ」、「とくダネ!」)以外に、自分の発言の何がどう放送されたか分からないが、リーマンとAIGに関連して一つずつ補足しておく。
(1)リーマンも高額所得社員ばかりではない
17日の「とくダネ!」で、デーブ・スペクター氏と共にリーマンの社員がサブプライム問題の前までは大いに稼いでいたはずだということを大いに強調した。
成功報酬制度を得た投資銀行の個々のプレーヤー(経営者を含む)が、株主の資本までカモにしつつリスクを拡大したことは、サブプライム問題をはじめとするバブルの重要な原因だから、このポイントは重要だし、私は、ポールソン財務長官の「(リーマンに公的資金を使うことは)一度も考えたことがない」という言い切りと今回の処置を支持する(日本の新聞の社説は6紙中4紙が批判的だったが)。
しかし、帰り道の車の中でどうにも気になったのだが、リーマンといえども、たとえば日本法人の1300人(こんなに居たんだ!)の全てがビッグ・ボーナスを手にする高額所得者ばかりではない。いわゆるバックオフィスのスタッフをはじめとして、高額所得者のカテゴリーには入らない範囲の報酬で地味に働いてきた人が多数居るはずだ。おそらくはこれから職を失い、しかし、同情もされないというのでは、彼らは少し可哀想だ。また、入社が内定していた学生が20人ほど居るらしい。
発言全体として間違ったことを言ったとは思わないのだが、出来れば一言この点に言及してバランスを取りたかった。テレビの発言は反省し出すときりがないのだが、無反省もいけないと思うので、書いて置く。
(2)AIGグループの保険契約の安全性に関して
AIG本体が危機に陥ったことで、アリコジャパンなど、日本のAIGグループの保険会社の保険契約の安全性について問い合わせが殺到しているらしい。
17日の朝の段階ではそこまで分からなかったが、保険契約者の中には心配な人がいるだろうと思ったので、「めざましテレビ」でも「とくダネ!」でも、日本の保険会社は基本的に独立した会社なので、契約の安全性の面で、現在の保険契約者はAIGのアメリカ本社の経営危機の影響を殆ど受けないから、まずは安心していい、という旨を、私の判断で付け加えた(正直に言うと、フジテレビに大して気を利かせてあげた、という面もあった)。
案の定というべきか、他局の番組も含めて、他番組からも、この点についてコメントして欲しいという依頼が、この後相次いで舞い込んだ。重要なスポンサーに対する配慮から(おそらくはスポンサーか代理店の意向もあったのだろうが)、日本のAIGグループの保険は大丈夫だ、というニュアンスのコメントを求めてきたものだろう。
この問題に関心を持つ視聴者は多いはずだ。また、日本法人の保険会社の財務・経営内容に問題がなければ、保険契約の安全性に問題はない筈だから(契約期間が長いので将来の変化は少し気がかりだが)、コメントとしては概ね適切だったし、言うべきだったと思うのだが、自分からはじめたこととはいえ、結果的に保険会社の片棒を担いでいる感じは少し居心地が悪い。(敢えていえば、あわてて解約して他の保険会社の保険を契約すると大損になる公算が大きいから、他社の火事場泥棒営業を邪魔したともいえる)
当ブログの読者はご存じの方が多いかも知れないが、私は、日本の各種生命保険商品の付加保険料率の高さと、これが非公開であることについて批判的であり、外資系も含めて、日本の生命保険商品の殆どが嫌いである。
発言内容は正しいと思いつつも、どちらかといえば敵方だと思っていた相手を利しているという意味で、自民党の政策を褒めているような気分だった。
テレビは自分のオンエアを一つも見ていないので、生放送のもの(「めざましテレビ」、「とくダネ!」)以外に、自分の発言の何がどう放送されたか分からないが、リーマンとAIGに関連して一つずつ補足しておく。
(1)リーマンも高額所得社員ばかりではない
17日の「とくダネ!」で、デーブ・スペクター氏と共にリーマンの社員がサブプライム問題の前までは大いに稼いでいたはずだということを大いに強調した。
成功報酬制度を得た投資銀行の個々のプレーヤー(経営者を含む)が、株主の資本までカモにしつつリスクを拡大したことは、サブプライム問題をはじめとするバブルの重要な原因だから、このポイントは重要だし、私は、ポールソン財務長官の「(リーマンに公的資金を使うことは)一度も考えたことがない」という言い切りと今回の処置を支持する(日本の新聞の社説は6紙中4紙が批判的だったが)。
しかし、帰り道の車の中でどうにも気になったのだが、リーマンといえども、たとえば日本法人の1300人(こんなに居たんだ!)の全てがビッグ・ボーナスを手にする高額所得者ばかりではない。いわゆるバックオフィスのスタッフをはじめとして、高額所得者のカテゴリーには入らない範囲の報酬で地味に働いてきた人が多数居るはずだ。おそらくはこれから職を失い、しかし、同情もされないというのでは、彼らは少し可哀想だ。また、入社が内定していた学生が20人ほど居るらしい。
発言全体として間違ったことを言ったとは思わないのだが、出来れば一言この点に言及してバランスを取りたかった。テレビの発言は反省し出すときりがないのだが、無反省もいけないと思うので、書いて置く。
(2)AIGグループの保険契約の安全性に関して
AIG本体が危機に陥ったことで、アリコジャパンなど、日本のAIGグループの保険会社の保険契約の安全性について問い合わせが殺到しているらしい。
17日の朝の段階ではそこまで分からなかったが、保険契約者の中には心配な人がいるだろうと思ったので、「めざましテレビ」でも「とくダネ!」でも、日本の保険会社は基本的に独立した会社なので、契約の安全性の面で、現在の保険契約者はAIGのアメリカ本社の経営危機の影響を殆ど受けないから、まずは安心していい、という旨を、私の判断で付け加えた(正直に言うと、フジテレビに大して気を利かせてあげた、という面もあった)。
案の定というべきか、他局の番組も含めて、他番組からも、この点についてコメントして欲しいという依頼が、この後相次いで舞い込んだ。重要なスポンサーに対する配慮から(おそらくはスポンサーか代理店の意向もあったのだろうが)、日本のAIGグループの保険は大丈夫だ、というニュアンスのコメントを求めてきたものだろう。
この問題に関心を持つ視聴者は多いはずだ。また、日本法人の保険会社の財務・経営内容に問題がなければ、保険契約の安全性に問題はない筈だから(契約期間が長いので将来の変化は少し気がかりだが)、コメントとしては概ね適切だったし、言うべきだったと思うのだが、自分からはじめたこととはいえ、結果的に保険会社の片棒を担いでいる感じは少し居心地が悪い。(敢えていえば、あわてて解約して他の保険会社の保険を契約すると大損になる公算が大きいから、他社の火事場泥棒営業を邪魔したともいえる)
当ブログの読者はご存じの方が多いかも知れないが、私は、日本の各種生命保険商品の付加保険料率の高さと、これが非公開であることについて批判的であり、外資系も含めて、日本の生命保険商品の殆どが嫌いである。
発言内容は正しいと思いつつも、どちらかといえば敵方だと思っていた相手を利しているという意味で、自民党の政策を褒めているような気分だった。
コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )
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「AIGコモディティファンド<1年決算型>」は、委託会社の判断により、2008年9月16日(火)受付分以降の取得および解約の申込受付が停止されております。
当画面上で表示されている9月16日以降の基準価額は、委託会社公表の正規の基準価額ではなく、仮の基準価額となりますので、ご注意くださいますようお願い申し上げます。詳細については、ファンド詳細画面にてご確認ください。
---unquote---
「投資は自己責任で」とはいえ、
解約停止とは恐ろしい話でございます。
一つだけお願いがあります.
本文の行間(行送り?)をコメントと同程度まで空けてもらえると読みやすいのですが...
弊社の破綻で多くの方に迷惑をおかけしたことは反省しなければいけないとは思います。また、もしかすると傲慢な態度や行動を取ったりした社員がいたのかもしれません。不愉快な思いをした方にはさらにお詫びしなければなりません。
ただ一方で、山崎さんがおっしゃる通りすべての社員が通常ではあり得ないような高給をいただいたわけではありません。サブプライムローンは米国の話ですし、そこに物理的に関わることができない日本法人の社員にボーナスをくれるほどリーマンブラザーズは善人ではありません。
にも関わらず、「外資系投資銀行の社員=高給取り=失業しても困らない」と考えられてしまうのは、短絡的です。山崎さんもご存じのように外資系投資銀行には退職金という制度が充実してはありませんし、その分は給与に含まれていると考えられています。おまけに弊社のようにストックオプションで支払われていた場合、紙くず同然になってしまいました。会社が破綻すれば従業員ももちろん困窮するわけで、その意味でなんらサラリーマンとしては変わらないのであります。
米国本社はバークレイズに引き受けてもらったようですが、日本法人は一体どうなるのかわからないまま、営業停止命令を受けて不安な日々を過ごしています。そういうことをどこか取り上げてくださらないかと思っていました。山崎さんに理解していただき、とても嬉しく思います。
先日「貴殿は何と男らしい方か」と生意気にも初めてのコメントをさせていただいたさいとうです。
いやいや我が意を得たりです。そうそう生保のことです。私の周りでもさっそく始まっています。
旧態依然の権化のような(それでも最近多少は改善しているそうな)在来国内生保の面々が「ほれ見たことか。だから外資外資などと調子に乗ってるとこういうことになるんだ。だからおとなしく在来日本社に入ってなさい」的な風潮。。。
これはよくない、最低、男らしくない。こういうところに始まる風評が、個々の判断を必要以上に狂わせ無意味な行動を呼ぶ。
山崎様、「火事場泥棒」とはまさによくおっしゃった。
みなさんの中でもAIG関連はもちろんのこと、他の関係ない生保会社に加入していて不安な方も多いことでしょう。しかし一番怖いのは扇動された風評被害です。こういう時こそ冷静に対処したいものです。
米国本社の破綻には日本法人の社員さんは殆ど関わっていないわけですから、「災難でしたね」とでも声を掛けるしかありませんが、外資ではこのようなことが時々あるし(山一でもありましたが)、船が転覆したときには、自力で岸まで泳ぎ着かなければならないのですね。バークレイズがリーマンのビジネスのどこまでを買うかが一つの焦点ですが、推察するに、日本法人の多くの社員の方はこれから大変だろうと思います。(他社に買収された会社にいるのも非常に大変ですが)
何はともあれ、ガンバって下さい!
(月並みでスミマセン)
>さいとう様
いよいよの場合の契約者保護機構を前提とすると、生保の破綻リスクの判断材料は大まかに言って、破綻確率×契約価値×(1-0.9)が他社の同様の保険に乗り換えるコストよりも大きいかどうか、ということですね。
乗り換えの際の営業費見合いの保険料の方が上記よりも大きいケースが殆どではないかと思います。
もちろん、外資系の生保に加入を勧められるような商品は、たぶん一つもない(自分がすぐ死ぬことに自信がある人は別ですが)というのも事実だと思うのですが、既存の客があわてて解約するのは良し、特に別の会社に乗り換えるのはよくないと思います。
それはそれとして、格下げされた今のアリコやエジソンでA+ですから、BBB-の住友生命とかBB+の朝日生命はひどいのですねぇ。
リーマンショック、一外資証券会社が破綻したからといって、即実生活に影響があるとは実感できない一庶民ですが、テレビでお姿を拝見する機会が増えたのはなんとも嬉しい限りです。
今後じわじわと不景気に拍車がかかり、実感せざるおえなくなるのでしょうか...知り合いのご子息もリーマンに内定していましたが、どうなるのでしょう。
早朝から民放を掛け持ちで忙しい日々の連続ですね。
お身体大切に今後もご活躍ください。
とりあえず朝のチャンネルはフジテレビにセットです。
財務格付けが下がったことと、
アリコの資本金の部分で「持ち込み資本」として
保有していたAIG本体の株式評価損がありますね。
4-6四半期でアリコジャパンが初の赤字に
なったのも、この影響でしたが、
そこからさらに株価がさがっているので、
まだインパクトがあるはずですね。
このあたりの財務インパクトは
貯蓄系の商品だけに影響してくるんですかね?
山一證券が廃業した時、私の母は(夫に内緒で)山一の社債を購入していました。テレビではなかなか社債の償還については触れず、不安と後悔の日々を過ごした事を思い出します。マスコミが(野澤社長会見よりも)社債など販売された金融商品の扱いについて当局に迅速そして執拗に判断を迫ってくれれば、大幅な額面割れで債券を手放す人も出なくて済んだかも知れません。
例の国がミサイルを撃つのも安倍氏を望んでいるから、という面もあるように思います。