ご期待に沿えず申し訳ございません(笑) | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

ご期待に沿えず申し訳ございません(笑)

時節柄、淡い期待(?)を持って弊ブログを覗きに来ている方も多いように見受けられる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
人使いの荒い会社に今だバリバリ働かされておりますが、何か?(笑)

某国政府筋の方とお話する機会があり。
エージェンシー救済策のキーポイントは何になるのか、と伺ったところ。
金融市場の安定、モーゲージアフォーダビリティの向上と、救済コストの最小化、の3点だということだった。

金融市場の安定と、救済コストの最小化、というのは極めて分かりやすいが。
「モーゲージアフォーダビリティの向上」、というのが実はとてつもないキーワードで。
要するに、消費者が家を持ちやすくし、長期的に住宅市場を回復させる、ということなのだが。

例えば失業率が上がったり、個人消費が落ち込んだり。
給料が下がったり、、金利が上がったりすれば、モーゲージアフォーダビリティが低下。
また、消費者のセンチメントを冷やすようなことも、住宅市場の回復に水を差す。

長期的に見た住宅価格のターンアラウンドが、今回の施策の究極の目標の一つ、ということなのだが。

例えば。
全米どこの都市に行っても店舗を持つ、リテール部門を抱える証券会社が破綻して。
顧客の財産がしばらくの間凍結されたりすれば。

例えば。
全米規模のオペレーションを持つ、個人保険の会社が破綻して。
個人が受け取れる保険の額が大きく減額されたりすれば。

いずれの場合も。
コンシューマーコンフィデンスへの影響は、計り知れない。
したがって、住宅価格の調整も、当然に長引くことが予想される。

以上のコンテクストでものを見ると。

「ある基準」で。
セーフティネットが発動される金融機関と、そうでない金融機関の、明確な線引きがなされているのかも知れない。

セーフティネットの話をすると、リバタリアンのくせに、という非難がすぐ飛んでくるが。
セーフティネットの是非をここで論じているのではなく。
事実としてセーフティネットが発動されていて。
適用される企業と、そうでない企業があって。
その差は一体何なのか、何が意図なのか、というニュートラルな考察ですので。

しかし。
今日の日経も酷いな。


「かつての日本とそっくり」という論調が紙面を覆いつくしているが。
かつての日本は、引当金も大して積まずに簿価近くでブックしていたローンが不良債権化して焦げ付き、実現損となって金融機関の資本が毀損。
今のアメリカは、実際に損失が発生していなくても、市場での取引価格を元に時価評価で評価損を計上して資本が毀損、という点で大きく異なる。
例えばAIG(というかAIGFP)が持っているスーパーシニアのCDSとかって、まだ実損出てないけど、大幅に償却している。

それに比べたら、保険という時価評価の必要ない形態で、同様の取引している…(以下ry)

今朝の一面に滝田洋一編集委員が。
「リーマン破綻がAIGを揺さぶったのは偶然ではない。
米保険会社は、保険料を取り企業が倒産した場合の損失を補償する、信用デリバティブを拡大してきた。
倒産増加で保証負担が膨らみつつあるのだ」
と書いているが。

実現損と、評価損の区別が全くついていない。

CDSでクレジットイベントトリガーした銘柄、知ってますか~

五面には、発田真人編集委員が。
「証券会社は近年、借金を膨らませて住宅ローンなどを購入、証券化して投資家に販売する手数料ビジネスで高収益をあげた。
(略)
リーマンの総資産は八月末で株主資本の十倍と、借入依存が鮮明だった」
と書いているが。

それって、自己資本比率10%ってことでしょ?
金融機関としては、相当健全じゃん?
日本の銀行の自己資本比率、見たことある?
じゃあ日本の地銀の方が、一般的にリーマンより借入に依存しているんだけど…。

そうじゃなくて。
投資銀行は、商業銀行と違って大部分の資産を毎日値洗い(=Mark to Market)している業態。
市場のボラティリティが極めて高いため。
優良な商業銀行の自己資本と比しても遜色のない、自己資本10%という水準を保っていても。
市場でファットテールイベントが起こると。
あっという間に、自己資本が毀損。

在庫で保有する資産も、レベル3でMark to Modelにしていると市場の疑心暗鬼を生み。
類似商品の市場価格でMark to Marketする、レベル2カテゴリにどんどん移行させていったから。
保有資産の大部分が時価の変動に晒されて。

そして、Money goodだと思って保有した資産、例えば商業用不動産担保ローンのポートフォリオなども。
本質的にクレジットが悪化していなくても。
流動性が枯渇しているために、時価は大きく下落。

いくら自己資本を厚く保有していても。
最近の市場の巨大なボラティリティ、あるいは流動性の枯渇がそれ以上に強力なので。
あっという間に、キャピタルがワイプアウトされる。

実現損で破綻したのではなく。
時価、あるいは評価損が引き金となっての破綻。

以上の意味で、「投資銀行」という業態のビジネスモデルは、引き続き試され続ける状態が続くだろう。


引き続き高圧的で上から目線で失礼しました。


この世の終わりが来たような、相場つきになってますが…。

明日ぐらいに、ご期待に沿えちゃったりして…。