これまで分散投資特集では、資産配分の重要性や外貨建て商品などについて紹介してきた。しかし、どういった金融商品にどれだけ投資するかを決めることは大事だが、この時に忘れてはいけないことがある。それは、「投資コスト」だ。
上手に資産配分して、長期的に年率3%のリターンを得られるようになったとしても、仮に投資コストが年5%かかったとすると、利益はなくなってしまう。もちろん、そこまで投資コストがかかることは考え難いが、投資コストはできるだけ少なくしたい項目であることは間違いない。100万円を30歳から30年運用するときに支払うコストを年0.5%減らせる場合、単純に年5000円支払う金額が少なくなると考えるだけでも60歳の時には15万円の差が出ることになる。資産運用では、同様の内容の金融商品でいかにコストが低いものを選べるかも重要なのだ。
コストという視点から考えると、ここ数年、個人投資家のみならず機関投資家の間でも注目している「ETF」に光が当たってくる。ETFは「Exchange Traded Fund(株価指数連動型上場投資信託)」の略で、日経平均株価やダウ平均のような株価指数などに連動する投資信託のこと。数万円単位から、さまざまな指数の値動きに投資できるため、手軽に分散投資できる低コストの金融商品ということで支持を集めているのだ。
ETFは株式と同じように証券取引所に上場しているのが特徴。そのため、市場が開いている間なら、取引価格を見ながらリアルタイムで売買できる。しかも、国内の証券取引所に上場しているETFなら信用取引※を利用することも可能なのだ。
ETFの歴史はそれほど古いものではない。1990年3月にカナダのトロント証券取引所にTIPs(Toront Index Participation Units)というETFが上場したのが始まりとされる。その後は米国を中心に拡大。日本では1995年4月に「日経300株価指数連動型」が東証に上場したのが最初のETFだ。
株価指数に連動する運用を目指すインデックス型の投資信託と、ETFはどのように違うのだろうか。確かに、低コストで指数の値動きに投資できるという点は同じだ。しかし、最大の違いはインデックス型の投資信託より、ETFはさらにコストが低くなる傾向にあることだ。
投資信託は投資家から資金を集めて、それをもとに市場で株式を購入していく。しかし、ETFでは資金を集めるより先に株式を集めるという方法をとっている。ETFの運用会社が、株式を大量に保有する機関投資家や証券会社などから、TOPIXなど特定の株価指数の構成に似た株式を集めて、その代わりに株価指数に連動するETFの証券を発行。そのETFの証券を投資家が、証券取引所で売買できるようになっているのだ。
投資信託では売買コストやファンドマネージャーの人件費が必要となる。しかし、ETFでは前述の仕組みを採用することで、株式と現金との取引を省き、人件費も抑えられるため、通常の投資信託よりもコストを低くできるのだ。
9月16日現在、日本の証券取引所に上場しているETFは65銘柄(東証54銘柄、大証11銘柄)。その数は徐々に増えてきており、7月末には南アフリカやロシアの株価指数に連動するETFが登場、9月18日には東証REIT指数に連動するETFの上場が予定されるなど、その幅はさらに広がっている。
また海外では1000本以上のETFがあり、そのうちのいくつかは日本の証券会社を通じて売買できる。
ETFは各国の証券取引所に上場しているため、日本の証券会社を通して購入する場合、「国内の証券取引所に上場しているETF」(国内ETF)と「海外の証券取引所に上場しているETF」(海外ETF)とでは多少手続きが異なる。主な違いは以下の表の通りだ。
国内ETF | 海外ETF | |
---|---|---|
信用取引 | 可能 | 不可 |
販売会社 | 全国の証券会社 | 証券会社ごとに購入できる銘柄が異なる |
購入手数料 | 株式と同じ | 所定の手数料に加えて為替手数料が必要 |
売却手数料 | 株式と同じ | 所定の手数料に加えて為替手数料が必要 |
税金 | 株式と同じ | 分配金※については日本と海外両方で課税される |
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