50年前16.5人、今3.5人・高齢化社会を表す一つの数値

2008年09月15日 12:00

時節イメージ総務省統計局は9月14日、敬老の日にちなんで高齢者人口に関する調査結果を発表した。それによると2008年9月15日現在推定において65歳以上の高齢者人口は2819万人に達し、総人口に占める割合は22.1%になったことがあきらかになった。これらの数字を元に、高齢者を支える高齢者以外の若年層の割合を算出すると、3.5人という値になる。50年前の1960年における16.5人から、実に5倍近く若年層への負担が増えた計算だ(【発表リリース】)。

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若年層何人で一人の高齢者を支えるかという問題は、特に年金問題で話題にのぼる。現状の年金制度が「支払われた年金保険料は、そのままその時点の年金受給者への支払いに充てられる」原則で成り立っているからだ。実際には「高齢者以外」には年金保険料を支払わない幼少者もいるし、支払いを免除される・していない人もいるので一概に一つにまとめるのも難がある。しかし、分かりやすくするために「年金以外のことも含め、高齢者以外の人全員で社会的に高齢者を支える」という考え方でまとめることにする。

この考え方で計算すると、2008年時点で総人口は1億2771万人・65歳以上の高齢者は2819万人だから、それ以外の人口は9952万人。よって9952÷2819=3.5で、「高齢者一人を高齢者以外の若年層が3.5人で(社会的に)支えている」ということになる。同じようにそれぞれの統計データから計算したのが次のグラフ。

高齢者一人を高齢者以外の何人で支えるか
高齢者一人を高齢者以外の何人で支えるか
高齢者一人を高齢者以外の何人で支えるか・1960年と2008年
高齢者一人を高齢者以外の何人で支えるか・1960年と2008年

高齢者を支える主な制度である年金制度は、先にも説明したように「払われた保険料はその時点の受給者への支払いに充てられる」。仮に1960年と2008年の受給者の条件や支払い額がまったく同じだった場合、保険料を支払う人の負担は5倍近く増える計算になる。これでは「現在」保険料を支払っている人が不公平感を持つのも無理はないかもしれない。

さてここからは仮説と数字遊びの話。昨今において年金受給開始年を少しずつ遅らせる傾向が見られるのはご承知の通り。これも上記にあるような「現実」を起因とするものだ。また、医学の進歩や社会の要請などで、定年退職の時期を60~65歳からさらに70歳前後にまでスライドさせる動きもある。

これに従い、仮に「高齢者」の定義を現行の65歳から70歳に5年ずらした場合、上記グラフはどのようになるのか。70歳以上で区分した高齢者を「新高齢者」と名づけて計算しなおしたのが次の図。

「新高齢者」一人を「新高齢者」以外の何人で支えるか
「新高齢者」一人を「新高齢者」以外の何人で支えるか

2008年時点で「一人を5.3人が支える」という値となり、多少の状況改善が見られる。ただし人口構成比などにおける今後の傾向を見る限り、単に問題の先延ばしをしたに過ぎない感が強い。

さらにもう一つ仮説を元にした計算を試みることにする。この仮説とは、「高齢者にも他の高齢者を支えてもらおう」というもの。ただし高齢者自身に若年層と同じ負担をしてもらうのには酷過ぎるので、ここでは「高齢者には高齢者以外の半分の負担をしてもらう」という設定をしてみる。

高齢者にも一部「支える側」に加わってもらった場合
高齢者にも一部「支える側」に加わってもらった場合

この仮説の特徴は「高齢者の比率が増加すればするほど、『支える側』の人数も一定量増加する」ことに他ならない。今後さらに高齢者比率が増えたとしても、現状の仕組みよりは緩やかな負担増にとどまるだろう。

もちろん高齢者に一律「支える側に参加」というのも現実問題としては不可能。「(高齢者に)半分の負担」ということは逆に考えれば「支えてもらえるサービス(例えば年金)が半分に減る」ということになる。現実味の高いやり方としては、年代スライド式(65歳なら6割負担、66歳なら5割、67歳なら4割……のような)が考えられよう。


年齢だけで「支える・支えられる」を
区切ったのでは限界に近い

能力ややる気、社会需要に応じて
フレキシブルに両領域を行き来可能な
仕組みづくりが必要に

今回の「支える・支えられる」はあくまでも概念的な人数計算に過ぎないので、具体的な問題(例えば年金)ならば、もっと複雑な計算が必要になる。その一方、各数字やグラフからは単純に「65歳までは高齢者を支える立場」「65歳を過ぎたら若年層に支えられる立場」と区切るだけでは、色々な面で限界が見えてくるのも事実。

人口構成比に大きな変化が生じない限り、年金などの社会インフラ上の仕組みは別として、生活面においては高齢者自身も他の高齢者を支えあう、あるいは社会そのものに参加できるような姿勢、または道しるべが求められているのだろう。単に年齢で「支える」「支えられる」と区切るのではなく、能力ややる気、社会のニーズに応じて、フレキシブルに両方の立場を行き来できる社会を作り上げていくことが、これから必要不可欠になるに違いない。

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