開発者が語る、「モバゲータウンができるまで」

永井美智子(編集部)2008年09月11日 08時00分

 無料ゲームとソーシャルネットワークサービス(SNS)を組み合わせ、一躍人気となったモバイルサービス「モバゲータウン」。このシステムはどうやって生まれたのか。9月5日に東京都内で開催された開発者向けのイベント「ITPro Challenge! 2008」において、ディー・エヌ・エー(DeNA)取締役の川崎修平氏が、自身の経歴を振り返りながら、開発時のエピソードを明かした。

 川崎氏は1975年生まれ。小学生の頃からPC関連のイベントに通っていたという「パソコンオタク」だ。当時の夢はゲームの開発者になること。その夢は、モバゲータウンでのゲームアプリ開発で叶っている。

 DeNAに入社したきっかけは、大学生のころに運営していたオークションサイトに関するまとめサイトだ。1日100万ページビューを稼ぐ人気サイトで、「自分のサイトをユーザーが何度も使ってくれるのが嬉しい。ユーザーを喜ばせようと新機能を提供し、思いついたものをどんどん入れていくのが気持ちよかった」という。

 当時、サーバは自宅に置き、4台ほどで運営していた。「家のアンペア数が足りなくて、サーバを増やせなかった。貧乏仕様でやりくりすることを覚えた」

 そのまとめサイトが、DeNAの社員の目にとまり、同社に入社することに。その後、携帯電話向けのオークションサイト「モバオク」やモバイルアフィリエイトサービス「ポケットアフィリエイト」、そしてモバゲータウンという、DeNAの中核サービスを主に1人で開発していく。

障害に寛大だったモバイルユーザー

川崎修平氏 モバゲータウンの開発者、川崎修平氏

 たとえばモバオクの場合、2カ月程度で開発した。「(現DeNA取締役の)守安さんが、『ケータイオークションをやりたいんだけど1人で(開発)できる?』と聞かれた。ゼロから好きに作っていいと言われたので、理想のオークションサイトが作れると思った」

 当時はパケット定額制サービスが始まったばかり。「使っていたユーザーがヤフーオークションに『卒業』されないように、新しい世代のサービスを安上がりで作ろうと考えた」。あえて携帯電話にサービスを限定してPCユーザーが入ってこないようにし、さらにユーザー間で細かいやりとりをするようなインターフェースを導入することで、独自の文化を作り上げていった。

 当初はアクセス数が伸び悩んだというが、ユーザーがほかの人を紹介するとインセンティブがもらえるようにすることで口コミを起こし、サービス開始から2カ月ほどでアクセス数を伸ばすことに成功した。

 ただ、システムの設計に関しては手探りだったようだ。携帯電話の場合、PCと異なり1回のパケット送信数は少ないものの、セッション数は多い。携帯電話特有のトラフィックに苦労しながらも、コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)を導入することで対応した。

 「週末にトラフィックの山が来るので、毎週『このままいくと週末越えられないな』と言いながら、平日にシステムを修正するというのをずっとやっていた」

 ただし、携帯電話のユーザーは「障害や不具合に寛大だった」ことで、救われたとも語る。「携帯電話のユーザーはコミュニケーションの仕方が全然違う。企業が運営しているサイトでも個人サイトに近い感覚で接してくるので、管理人がいると思って問い合わせをしてくる人もいる。レスポンスも早かったので、不具合があれば1分以内にすぐ直すというようなことをして、テストを省いたりもしていました(笑)」

 開発作業は基本的に1人。自宅で深夜作業をしていることが多かったという。「現物が仕様でドキュメントもない。その代わりに、ソースを見れば仕様が分かるようにしていた」。ときどき出社し、企画やデザインを担当する人たちと飲み屋で話しながら細部の詰めをしていった。

 1人で開発をしていたため、負荷対策は簡単にできる仕組みを取り入れた。具体的には、1週間分程度の余裕を持たせたリミッターを仕掛けておき、限界が来るのを早めに察知して対応できるようにしていた。

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