麻生政権雑感

 下のエントリーは今日の午前真夜中に書いたんですが、もちろん麻生政権など正式にはできてません。でもテレビの雰囲気(昨日の総裁候補たちの話やその周りの雰囲気)さらにいままでの新聞・テレビなどの情報をみれば、以下の上杉隆氏の取材努力を待つまでもなく、麻生総裁=総理でおしまい、というのは誰でも理解できるのではないか、と思いました。

「もはや、総裁選は始まった日に終わってしまった。茶番は一日しかもたなかった。」(上杉隆氏の発言http://diamond.jp/series/uesugi/10044/?page=3より)

スティグリッツ・バーナンキ案の現実的適用(高橋洋一埋蔵金活用法)と麻生政権は賢明か?

 総裁選は麻生氏の圧勝に終わりました。

 さて昨日のスティグリッツとバーナンキ両氏の「インフレ」の下における望ましい「財政政策」ですが、これをいまの日本の文脈でさらに現実可能性を高めたのが高橋洋一さんの埋蔵金活用方法です。この両者の観点は埋蔵金というショッキングな表現で見失われてしまいますが、高橋案は、スティグリッツバーナンキの「財政政策」の理論的コンセプトをそのまま体現しているものとみなせます。

 そして昨日、発足した麻生政権が賢明かどうかもこの埋蔵金の利用の仕方にかかわってきます。一応、念のため書いておきますが、埋蔵金を利用しないでは麻生首相の経済政策は(いまの与党の合意の範囲で推測するかぎり)実行不可能です。ですので、スティグリッツバーナンキ=高橋案は、その現実可能性をかなり満たしています。つまり埋蔵金を使うことはすでに現実可能性をみたしているので、あとはその使い方が重要な論点だ、というわけです。

 しかも後で詳述しますが、麻生政権が単に頭がいいかどうか、そして少しばかりの政治的意欲が発揮できるかどうか、という非常に技術的な問題になっています。そしてその賢明さと少しばかりの政治的駆引きの発露が、今回の経済政策の重要な肝であり、その評価のすべてが集約されますね。

 詳細は、昨日紹介した高橋洋一さんの『Voice』論説「埋蔵金六兆円で好景気に」を参照されるべきでしょう。

 以下はその概要で一部分は、日本経済新聞の日経教室にも書かれていたことですよね。

 今回利用可能になるのは「埋蔵金」の6兆円(正確には6.8兆円、詳細は『Voice』参照のこと)。来年度は9.8兆円使える(こちらの使い方は高橋論説を読まれたい)。今年の6兆円の使い方を以下のように高橋さんは書いてます。

 「この6兆円を財政支出や減税より市中国債の償還に回すほうが、長期金利低下となって、金融緩和政策と相まって、大きなマクロ経済効果になるにちがいない。こうしたマクロ経済政策ミックスは、金利低下を促すので、実質的には設備投資減税と同じことになる。今回のようなエネルギー・輸入価格を上昇させ交易条件を悪化させる外的ショックに対して、省エネ体質にして長期的な競争力を強化するために、政策的にも望ましい。埋蔵金6兆円を使わないのはもったいし無駄である。使うとしても、財政支出や減税より、市中国債の償還のほうが、効果的という意味で無駄がない」

 で、麻生首相が賢明でないとどうなるのか? 市中国債の償還にまわさないで、単に日銀の保有国債財務省の資金運用部の保有する国債の買取りという単なる広義政府部門での「何もしない」国債たらいまわし、という無能なものにしかならない。麻生首相が有能であることは期待したいですが、問題は財務省の一部局と日銀の一部の担当者にちゃんといえるのかどうか、という問題になります。もちろん日本国総理は財務省の一部局の長や日本銀行の担当者よりも権限や立場が上であると信じるにたる証拠は豊富ですが、ぜひその常識どおりの行動をとってください。技術的に非常にチープなレベルです、いや、本当にまじに。

(補)特定業界や特定消費者に直接なんらかの政治的贈り物をしたい、というのは今回の麻生政権の隠しきれない意図でしょうから、上記埋蔵金とあわせ技であることをあくまでも前提にして、現ナマ(ただし政府が新に発行するもの)を直接配ることをおすすめします。特定業界への補助金もこの政府発行の新紙幣(地域振興券セカンド)で行ってください。僕の理解では特に財源はいりません。

(補二)なお麻生首相は国会冒頭で解散する予定ですが、もし与野党逆転で、民主党主軸の政策になった場合でもたぶん埋蔵金を利用しないと無理でしょうから、その利用方法がやはりキーになります。ただし民主党が政権を奪取したものの寄り合い所帯ですから、財務省や日銀のただの一担当者の顔さえも満足にみれない可能性が強いでしょう。財務省や日銀のその国債運用の担当者の「顔」よりも小沢首相(予想)の方が顔も声も迫力があるので不思議なことですが。彼らのいいなりになると思います。そして民主党は単独では無理なので他の小規模政党の顔色をまずみることになります。これは小沢首相が賢明とか賢明ではないとはまた別な機会費用の問題です。政権奪取直後では、まともな政策よりも政権の維持の方が重要ですから。そしてそこででてくるのはおよそマクロ経済政策とは別物の何か……でしょう。