“うっかりミス”では片付けられない問題

法務担当者として、非常に驚かされたニュースがある。

全日空は2日、6月9日から受け付けたキャンペーンの景品の往復航空券が、景品表示法が定める上限価格を超える可能性があり、景品をさしかえた上でキャンペーン登録者におわびすると発表した。同社は先月25日、誇大広告による同法違反で公正取引委員会から排除命令を受けたばかり。」(2008年9月2日付夕刊・第16面)

正直、先に問題になった「優良誤認」について言えば、まだ同情の余地はあった。


パンフレットの写真と実物が違う!なんて宣伝広告物は世の中に数多あふれているし、厳格に適用するにしても、何をもって「著しく優良」というかの線引きは曖昧なままだ。


“イメージ広告”的な宣伝手法も多用されている現代においては、どこからが“イメージ”でどこからが“事実”なのか、といったことすらはっきりしていないのが現実なのであって、スレスレのところを狙って、最大限の広告効果をあげようとしている会社も多い。


そんな中での「排除命令」だけに、常時同種のリスクに曝されている企業人であれば、法に反したことを責めるよりも先に、“ライバル企業に刺されたのか”とか、“公取委に目を付けられたのか、気の毒に・・・”といった思いが湧いて来ても不思議ではない。



だが、今回記事になってしまったのは、「景品の上限額規制」という、至って初歩的で、機械的に答えが出せる問題である。


商品の購入とバーターで景品を付与する場合に、景品額が上限規制を受けるなんてことは、法務担当者であればもちろん、宣伝・広告担当者にとってもイロハの“イ”ともいうべき話。


にもかかわらず、「インターネットを通じた航空券予約・購入者に対して、数百万にもなるファーストクラスチケットを景品としてプレゼントする」なんてスキームを、“ついうっかり”採用してしまう・・・なんてことは普通では考えられない。



そして、自分にはもう一つ気になったことがある。


景表法違反の指摘を受けたキャンペーンについては、全日空のサイト上にhttp://www.ana.co.jp/topics/notice080828/index.htmlのようなお知らせが掲示されており、景品が景表法上の上限ギリギリの額の航空券に差し替えられている。


だが、実はこのお知らせ、どこを見ても景表法の「け」の字が出てこない。新聞記事を読まずにこの案内だけを見たら、よほど勘のいい人でなければ何が背景にあるのか、気付かないだろう。


それでは、とプレスリリースのコーナーに飛んでみても、今回の件はもちろん、先日の排除措置命令に対するコメントすら見当たらない。


本来、こういうときは、何よりも早く明確にお客さまに情報を伝え、潔く謝罪する、というのが(いいか悪いかは別として)、定石だったはずなのになぜ・・・?




おそらく当事者となった会社の中では、これから社内外の法務リソースを結集して、社内での営業担当者向け“景表法講座”を行ったり、リーフレット等の配布を行うなどして、徹底した注意喚起を行うことになるのだろう。


だが、会社の姿勢を示すためには、それより先にまずやることがあるのではないか。


キャンペーン情報ばかりが踊るHPを見ていると、ちょっと空しくなる。


Q&A 景品表示法―景品・表示規制の理論と実務

Q&A 景品表示法―景品・表示規制の理論と実務

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