お金を殖やすためには、何を知ることが大切?内藤忍インタビュー(2)(1/2 ページ)

» 2008年09月01日 13時40分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

内藤忍(ないとう・しのぶ)

1986年東京大学経済学部卒。1991年MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。大学卒業後住友信託銀行に入社。その後、留学をはさみ10年にわたって外国債券など運用業務に従事。1997年シュローダー投信投資顧問株式会社に入社。1999年マネックス証券の設立理念に共感し入社。商品開発、資産設計などを担当。2004年個人向け投資商品企画・運営会社であるマネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役就任。現在株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長。著書に『【新版】内藤忍の資産設計塾』(自由国民社)など多数。


 「A社の株価が上昇している。ただそれだけの理由でA社の株を買う」――こういった投資に対し、マネックス・ユニバーシティの内藤忍氏は警鐘を促す。「何も考えずに株を買うということは、とてもリスクが大きい。まるで免許を取得したばかりの初心者がスポーツカーに乗って高速道路を運転するようなもの」と指摘する。

 それでは投資経験がない人は、どのように資産運用をすればいいのだろうか。「投資を始める前にはリターンではなく、まずリスクを考えるべき」という。投資経験がある人なら理解できるかもしれないが、初めて金融商品を購入するときには「投資した100万円が倍になれば」「リターンが50万円あれば」など、資産が殖えることばかりを考えがちだ。しかし内藤氏は、まずリスクを考えれば長期運用で“成功”を収める可能性が高くなると見ている。

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大きく負けないためには「金融商品のリスク」を知ることが大切

 資産運用を長く続けていくためには、どのようにすればいいのだろうか。もちろん長期的に成長するような“お宝銘柄”を購入して、それを保有し続ければ資産運用で成功することができるだろう。しかし初心者にとってお宝銘柄を買うということは偶然性が高い。いや“投資のプロ”であるファンドマネージャーであっても、簡単なことではないはずだ。そういった宝くじ的な発想ではなく、内藤氏は「長期運用を続けるには大きく負けないことが重要」と話す。

 そして大きく負けないためには、まず金融商品のリスクを知ることが必要だという。金融商品の過去の値動きを見ると、国内債券の収益率は安定している。一方で国内株式は2003年度に50%以上値上がりしているが、2000年度から2002年度にかけて累計50%以上も下落。過去のデータを見ると、株式の収益率のブレは大きく、株式だけに投資すればその分リスクを取りすぎている、ということになる。

 また外国債券は為替の影響を受けるので、国内債券と比べると収益率のブレは大きい。国内債券の収益率は1年間で10%未満の年が多いが、外国債券では20%ほど増減する年もある。さらに外国株式は1990年代後半には上がったが、2000年度と2002年度に大幅に下落。これはITバブルの崩壊と同時多発テロ事件による地政学的リスク※によるもの。国内株式と同様、外国株式も収益率のブレは大きい。

※地政学的リスク:特定の地域が抱える政治的や軍事的な緊張の高まりによって、その地域の経済や世界経済の先行きに不透明感をもたらすこと。
国内債券・国内株式の年代別の投資収益率(左)、外国債券・外国株式の年度別の投資収益率(右)

 「過去のデータから見ても、株式だけに投資をすることはリスクが高い。また個々の銘柄だけに投資すると最悪の場合、紙クズになる可能性もある。そのため資産運用を長く続けていくためには、できるだけリスクを抑え、損失が一定の範囲で収まるアセットアロケーション(資産配分)を考える必要がある。日本株だけに投資するのではなく、外貨や債券などいろいろな金融商品を組み合わせることがポイント」だという。

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