【8月17日 AFP】米経済情勢がかつてないほど住宅市場の健全性と連動してみえる中、アナリストらは住宅価格の底入れも同市場の回復も年内には見込めないとみている。

 数年間にわたって住宅ブームに沸いた米国だが、「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラー住宅価格指数(S&P/Case-Shiller Index)」によれば、過去1年半は住宅価格の下落が止まらず、5月には過去最大となる前年同月比16%減の下げ幅を記録した。

 しかしアナリストの大半は、住宅市場が回復に転じるにはまだ価格の下落は十分ではないと指摘する。米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のアラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)氏は14日、「住宅価格の安定化または底打ちが始まるのは2009年上半期」と述べたが、同時に「09年以降も価格低迷は続く可能性がある」とくぎを刺した。

 ヘンリー・ポールソン(Henry Paulson)米財務長官も、不動産業界が米経済にとっての現在最大の脅威だと繰り返し述べている。同長官は7月下旬、住宅差し押さえ件数および中古売り出し件数が「年内から09年にかけて引き続き大幅に増え、価格の下落傾向も全国的に続くとみられる」と警告した。

 こうした要因のいくつかは実際にすでに現れている。

 TDバンク・ファイナンシャル・グループ(TD Bank Financial Group)の最近の調査によれば、住宅価格は低下しているものの、ブーム前と比べれば依然高く04年半ばの水準にとどまっている。また、S&P/ケース・シラー指数の名目値では02年水準の34%高となっている。

 TDバンクのアナリストらは「市場の反発は終わっていない」と指摘。「ロサンゼルス(Los Angeles)、ラスベガス(Las Vegas)、マイアミ(Miami)など価格高騰が特に激しかった都市」でさらに価格が下落するとの見通しを示す。

 住宅在庫戸数も非常に多い。アナリストが通常の販売ペースとみなすのは5か月であるのに対し、中古住宅で売り切りに11か月、新築で10か月のペースとなっており、市場が平常に戻るまでに販売側は売り上げ予測の下方修正を迫られるだろう。

「売り上げにおける差し押さえ物件のシェア拡大は、住宅価格にとって悪い予兆だ」と話すのは、米証券大手リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)の主任アナリスト、イーサン・ハリス(Ethan Harris)氏だ。同氏は、今の価格サイクルは09年末に終わると見ているが、調整局面で25~30%の下落が起こるだろうと予測している。

 実際、不動産市場調査会社リアルティトラック(RealtyTrac)によれば差し押さえ物件の所有者の多くは金融機関で、市場の6分の1の物件を所有しているとされるが、こうした金融機関は抵当流れとなった物件の投げ売りもためらわない。

 経済紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)は前週、カリフォルニア(California)州コロナ(Corona)で06年12月に45万ドル(約5000万円)で取得された物件が、金融大手クレディ・スイス(Credit Suisse)の子会社に19万8000ドル(約2200万円)で売却されたと報じた。

 住宅価格に重くのしかかるもう1つの要因として、ハイリスクの借り手に限らず、全体的に銀行の貸し付けを得にくくなっている点がある。FRBの報告によれば、米金融機関の75%が08年第2四半期に、信用履歴の良好な借り手の住宅ローン、つまり標準的な住宅ローンにおける貸付条件を引き上げた。

 これらに加え脆弱な経済が痛みを拡大する。失業率の増加、インフレ圧力で低下する購買力、低迷する金融市場――楽観できる要素はほとんどない。(c)AFP/Claire Gallen