【8月17日 AFP】米国の映画監督スパイク・リー(Spike Lee)が15日、シンガポール(Singapore)で開かれた国際ビジネス会議「グローバル・ブランド・フォーラム(Global Brand Forum)」で、「米国を世界で最も強力な国にしたのは、核兵器ではなくハリウッド(Hollywood)、コカコーラ(Coca-Cola)、ミッキーマウス(Mickey Mouse)だ」と語った。

「米国が世界で最も有力な国になった理由は、ほかの国よりも核兵器をたくさん持っているからじゃない。核兵器が人々の衣服、話し方、考え方に影響を与えたところを見たことがある?米国は、映画、テレビ、リーバイス(Levi's)、コカコーラ、ディズニー(Disney)、ロック、ヒップホップなどの文化で世界を圧倒しているんだ。パワーっていうのは、人々の考え方や服装、話し方に影響を与えるもののことを言うんだ。爆弾で人を吹っ飛ばせるからなんかじゃない」

 社会的・政治的問題を扱った映画で有名なリー監督は、米国の影響力は特に映画を通じて拡大し、世界の見解を形作っていると語り、多くの米国人が他国のことを十分に理解していないことは何の助けにもなっていないと加えた。

 リー監督はさらに、ハリウッド映画は当初、アフリカ系米国人や先住民を悪者として描き、その後、第二次世界大戦ではナチス(Nazis)が「悪役」になり、冷戦では旧ソ連がその役目を担ったと語った。

 2001年9月11日の米国同時多発テロ以降は、「テロリスト」や「イスラム教徒やアラブ諸国出身者」がハリウッド映画では悪者になったという。

 ハリウッドに悪役が不足したらどうなるのかと会議の出席者に尋ねられたリー監督は、「誰かを捜す。彼らはいつもそうする」と語った。

 監督はさらに、ハリウッドが作る第二次世界大戦関連の映画も批判。監督によれば、アフリカ系米国人が果たした役割が描かれていないという。

 そこで監督は『Miracle at St. Anna』の制作を決定した。今後公開を控えるこの作品は、戦時中の忘れられたアフリカ系米国人の役割を描いている。

 続いて監督は、フランスの元サッカー選手ジネディーヌ・ジダン(Zinedine Zidane)のドキュメンタリー映画を見て、米国のバスケット選手コービー・ブライアント(Kobe Bryant)のドキュメンタリーを撮ることを思いついたという。

「3、4年前にカンヌ(Cannes)でジダンの映画を見ました。レアル・マドリード(Real Madrid)時代の1試合を映したもので、素晴らしかったのは試合の間ずっと、20台のカメラがジダンを追っていたことです。とても感動した」

Kobe Bryant 4/13/08』と題されたこのドキュメンタリーは、2008年4月13日に行われたロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)対サンアントニオ・スパーズ(San Antonio Spurs)の試合で、30台のカメラを用い様々な角度からブライアントを撮っている。(c)AFP