TBSの利益構造をもう少し詳しく調べてみる

2008年08月13日 19:40

TBSイメージ先に【主要テレビ局銘柄の第1四半期決算をグラフ化してみる】で主要キー局の第1四半期決算を見比べた際に、【TBS(9401)】の利益区分が他局のと比べて非常に大きな違いがある事に触れた。一言でまとめれば「主事業の放送事業と副業の不動産事業の利益がさほど変わらない」ということ。その時は本題ではTBSのセクション別の利益云々が主題ではなかったのでそれ以上調べることは無かったが、今回改めてデータを調べ直してみることにした。

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TBSは昔から放送事業と不動産事業を二本柱とするほど、副業に力を入れていた・副業からの利益が過大なものだったのだろうか。結論から言えば「ノー」。過去五年間における決算時のセクション別営業利益を並べてみると、むしろ不動産事業は「オマケ」レベルでしかなかったことが分かる。

直近5年間における決算時のセクション別営業利益。2005年3月期までは「映像・文化事業」が「その他事業」扱いだったので、2005年・2004年においては「その他事業」の額を「映像・文化事業」に割り当ててある。
直近5年間における決算時のセクション別営業利益。2005年3月期までは「映像・文化事業」が「その他事業」扱いだったので、2005年・2004年においては「その他事業」の額を「映像・文化事業」に割り当ててある。

ではなぜ先の記事のように、「放送事業」と「不動産事業」の利益にさほど差が出なかったのか。直近2年の第1四半期におけるセクション別営業利益を見ると、少しその謎が解けてくる。

TBSの直近2年間における第1四半期・セクション別営業利益
TBSの直近2年間における第1四半期・セクション別営業利益

このグラフから分かることは2点。

1.放送事業営業利益が大幅に減少している
2.不動産事業営業利益が大幅に増加している


この2点が相互に作用しあい、結果として「放送事業の利益と不動産事業のそれがさほど変わらない」という結果が出たことが分かる(映像・文化事業の利益も減っているが、これは放送事業に半ば連動している)。

「放送事業営業利益」が激減したのは、先の記事で説明したようにテレビ放送における広告費、特にスポット広告が減ったため。なぜスポット広告が減るような事態におちいったのかも先の記事にあるように、テレビ放送の影響力が「相対的に」減少したのと、ライバル的立ち位置にある広告媒体(インターネット)の躍進、そして広告出稿主側のふところ事情によるところが大きい。

赤坂サカスイメージ一方、なぜ不動産営業利益が激増したのかは、短信を読み解くと、短信の文面の端々に出てくる【赤坂サカス】がキーポイントとなるのが分かる。「赤坂サカス」とは赤坂エリアの再開発事業プロジェクト・その地域を総して名づけられたもので、「赤坂ACTシアター」「赤坂BLITZ」「赤坂ギャラリー」などからなる文化施設、39階建てのビジネスオフィス・ショッピング棟「赤坂Bizタワー」、ショッピング・グルメの商業施設「アネックス」、21階建て住宅棟「赤坂 ザ レジデンス」などが収められている。これらの施設が今年1月末から稼動を開始し、確実に「不動産事業」の底上げ効果を生み出している(部門売上で33億円)。これが今年の第1四半期における同事業の躍進を生み出したわけだ。

この「赤坂サカス」に驚かされるのは、その売上高の大きさもさることながら売上高営業利益率(要はいかに効率よく儲けられるか)の高さ。

TBSの直近2年間における第1四半期・セクション別売上高営業利益率
TBSの直近2年間における第1四半期・セクション別売上高営業利益率

一言で表現すれば、先行投資のおかげとはいえ「赤坂サカスの事業はものすごく儲かる」ということ。不動産・建設事業における不況の真っ只中において、これだけの利益・利益率を上げるというのも非常に稀有な事例といえる。「不動産事業は(中略)当社グループの収益基盤の安定化に大きく貢献し始めております」「映像・文化事業部門及び不動産事業部門を通じた収益の拡大を放送事業の基盤強化に役立ててまいります」などの言葉が短信中に踊るのも、理解できようというもの。

さらに注目すべきなのは、第1四半期の不動産事業利益が、例えばマンションや土地の売却などによる特別利益によってのみ生み出されたわけではなく、各種物件の運営賃貸費などによっても、もたらされたものであること。つまり、イベント効果が薄れることや、売り切りの物件によるラッシュが過ぎて、その分の減少はあるだろうが、第2四半期以降も不動産事業は確実に大きな利益を生み出す「お金の成る木」足りうる。


テレビ放送による広告費の増加は、今後もしばらくの間は見込めそうにない。経費削減にも限界があり、放送事業における利益は低迷を続けることだろう。2011年に地上デジタル放送に主要キー局の放送が切り替わり、テレビ放送に対する広告出稿主たちの態度が改めて問われるようになった時、果たしてTBSの収益バランスはどのような形になっているだろうか。

あるいは四季報上の「連結事業」の表記順も、現在の「放送、映像・文化、不動産」から変化している可能性はある。それはTBSの「放送事業」に対する姿勢の変化にも現れてくるだろう。その時に向けて、TBSは放送局であり続けるのだろうか。今はまだ分からない。そして、すでにその変化はおきているのかもしれない……。


(最終更新:2013/08/03)

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