商工中金曰く「とうの昔に第四次平成不況の真っ只中」

2008年08月11日 08:00

不況イメージ定期的に掲載している【景気ウォッチャー調査】などのデータを客観的に見れば、どう考えても今現在は不況の真っ只中にあるのだが、政府側ではなかなかそれを認識しようとしない。先日ようやく景気判断を「回復は足踏み」から「弱含み」に下方修正した程度で、別報道によれば「景気後退局面に突入と判断するのは来年に入ってからになる」との話もある。体面上景気悪化判断が無ければ大規模な対策は打てず、「決定が遅く事態が悪化する」状況に地団駄を踏んでいる人も多いだろう。しかし数字は真実を語る。景気的にどのような状態にあるのかが、商工中金が先日発表したデータからも確認できた(【中小企業月次景況観測7月調査】)。

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商工中金とは政府と中小企業が連携して出資する唯一の政策金融機関。所属組合や中小企業に円滑な金融を行うためのサポート業務を主に行っている。そこでは毎月月末に「中小企業月次景況観測」を発表しているのだが、その最新のデータによると7月の景況判断指数は39.9。4か月連続して低下・「好転」「悪化」の分岐点である50を16か月連続して上回っている。

分かりやすいよう、各グラフをいくつか拾って見てみることにする。まずは売上高推移。

売上高推移・前年同月比
売上高推移・前年同月比
売上高推移・前年同月比(長期グラフ)
売上高推移・前年同月比(長期グラフ)

2004年時点と比べるとやや伸び方は鈍化しているものの、意外にも売上高は落ち込むどころか伸びている。これだけだと「なんだ、2001年の時の不景気・不況と比べれば好景気そのものでは」と見えてしまう。しかしその思いも次のグラフではかなく消え去ることになる。

販売価格と仕入れ価格の状況判断DI
販売価格と仕入れ価格の状況判断DI

状況判断DIとは「上昇-下落」の企業割合で計算される。要はDIが大きいほど「上昇」と回答した企業が多いことを意味する。このグラフによれば、販売価格は2001年の第三次平成不況からようやく立ち直ってきたばかりなのに対し、仕入れ価格は2004年以降大幅に上昇。2008年以降はカーブがさらにキツくなっているのが分かる。

これは「前回の不況以来少しずつ販売価格は上がっているが、それ以上に仕入れ価格(原材料費)の高騰が激しく、差し引きの利益水準が落ちている」ことを意味する。「売上高」が大きく落ち込んだ前回の不景気とは大きな違いがここにある。

売上が上昇してもそれ以上に仕入れが上がれば、儲けは少なくなり資金繰りも悪化する。その推測を裏付けるのが次のグラフ。

資金繰りと採算状況の状況判断DI
資金繰りと採算状況の状況判断DI

資金繰りはいくぶんマシではあるが、採算状態はすでに第三次平成不況以上に悪化しているのが分かる。しかも資源急騰が問題視されるようになった2007年後半以降、急速に資金繰り・採算状況が落ち込んでいるのが見て取れるだろう。

結果として企業ごとの景気を判断する指数「景況判断指数」も大きく減少している。

景況判断指数
景況判断指数
景況判断指数(長期グラフ)
景況判断指数(長期グラフ)

過去20年間において現状をのぞけば4回、平成に入ってからは3回不況状態におちいっている。2001年~2002年の「第三次平成不況」が直近の不況に該当することは、「景気ウォッチャー」でも明らかにされている通り。あくまでも中小企業それぞれの判断から算出される数字でしかないが、1991年2月から1993年10月までの「第一次」・1997年5月から1999年1月までの「第二次」・2000年11月から2002年1月までの「第三次」に続き、現状が2007年の後半をスタートラインとした「第四次平成不況」に事実上突入していることがお分かりいただけるはずだ。


直近20年の不況パターンと現在進行形の不況で大きく異なるのは、売上高の減少を伴っていないこと。これまでの不況は「売上高・売上数量が減る」「利益が減る」というスタイルだった。しかし今回のは原材料費の急騰が原因であり、むしろ売上高そのものは緩やかながら上昇している部門もあるほど。しかし利幅が小さくなり利益が激減し、不況状態に突入してしまっている。

現在進行形の不況は
原材料高騰を起因とするため、
売上高の減少を伴わないという
これまでとは違ったパターンを
踏襲歩んでいる。

売上数量の減少によって売上高の低下が起きたわけではなく、企業の売上自身はむしろ上昇している。販売数量は減少しているが、これまでの不況時と比べて今現在はまだ緩やかな状態にある(輸出面も考慮すればむしろ需要は増加しているだろう)。これまでの「需給関係のバランスが自然に取れ、適正な量と価格で商品が市場に出回るようになり、自然淘汰の後に景気は回復に向かう」とは違った状況下における不況なため、回復までの道のりも以前のパターンが踏襲されない可能性はある。

あるいは単なる不況ではなく、スタグフレーション(経済停滞・不況と物価上昇)やスタグネーション(経済の停滞(今件の場合は物価高止まりにおける))に突入する可能性も視野に入れておく必要があるだろう。もっともスタグフレーションについては、すでに突入しているとの説も濃厚ではあるのだが。

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