ごちゃごちゃ言ってないで生んで欲しけりゃ金よこせ。

http://diamond.jp/series/nippon/10017/

馬鹿芸人相手に鼻糞ほじりながら適当なこと言ってお茶を濁す連載企画とはいえ、あまりに手を抜き過ぎてる感があったので勝手に補足。

イベント性で少子化に歯止めをかけるフランスの取り組み


竹中 フランスの具体的な対策は、子供3人以上の家族には「大家族カード」を支給し、その家族に特典を与えたこと。国鉄運賃が割り引きされたり、公共施設の利用料を無料にしたんです。実際、これらの特典で割り引かれる金額はそう多くはないと思いますが、このシステムの持つ「イベント性」は重要でした。


たとえば、子供が3人いる家族で旅行をするとき、全員の旅行費用が半額になると、なんだか得したような気分になりませんか? そういう制度を利用した家族は、「子供がたくさんいるとなんだか楽しいことがあるな」というある種のゲーム性を感じたんだと思います。


http://diamond.jp/series/nippon/10017/?page=4

本当に?そんな子供だましの「イベント性」なんかで2人以上も子供持つ気になるんですかねぇ?

ということで、当のフランスメディアの記事を。ちょっと古いのですが。


少子化対策に成功する国と、最初から失敗する国【1】 | PAGES D'ECRITURE
少子化対策に成功する国と、最初から失敗する国【2】 | PAGES D'ECRITURE
少子化対策に成功する国と、最初から失敗する国【3】 | PAGES D'ECRITURE
少子化対策に成功する国と、最初から失敗する国【4】 | PAGES D'ECRITURE
(PAGES D'ECRITUREさん多謝!)


簡単にまとめると

(1)フランスでは女性一人あたり2人の子供を産む状態になってるよ!若いカップルも子供をつくり始めたよ!

(2)一部で「移民が増えたから出生率も増えた」と言う人もいるけどそれだけが理由じゃないよ!鍵は厚い社会保障とそれを基盤にした公的扶助・減税・公サービスの的確かつ柔軟な組み合わせだよ!それから非嫡出子と嫡出子を平等に扱うのも重要だよ!(これは竹中さんも言ってますね。何で“倫理的に問題がある”のかはさっぱり分かりませんが)

(3)フランスでは子供が3人いる家庭が理想的と考えられているよ!女性は母親になることに自然な喜びを感じてるみたいだよ!

(4)もしかしたら、自分の母親世代の古臭いフェミニズムに異議申し立てをしているのかもしれないよ!

という感じです。

特に(2)で指摘されている充実した支援制度に関しては広く知られている通りです(“フランス 少子化対策”とかでググれば詳しい記事がたくさん出てきます)。OECDの調査では家族対策への支出はGDP比で日本の約5倍。

もちろん、単に「金を出せばいい」という話ではありません。続きの記事では他国の状況の解説が行われています。


続・少子化-フランスの周辺【1】スペインとイタリアの場合 | PAGES D'ECRITURE
続・少子化-フランスの周辺【2】ドイツ、英米の場合 | PAGES D'ECRITURE


これも簡単にまとめると

【スペイン】:主に若年層の雇用問題と貧しい住環境(高額な賃貸住宅)により若いカップルは親元に同居せざるを得ず(パラサイト!)、家族の負担が大きい事がネックとなっているよ!

【イタリア】:保育所など子育てに必要なインフラが整ってないし、家族への補助も十分じゃないよ!これは独裁政権に対するカウンターとして「出産は個人の問題(自由)」という傾向が強いことが遠因になってるのかもしれないね!

【ドイツ】:財政支出は高いけどほとんどが扶助(補助)に使われて必要なインフラが揃ってないよ!それから、「働く母親」への無理解と社会的な抑圧が強いことも大きな問題だね!

【イギリス】:ここでもインフラの整備不足が問題になっているよ!そのせいで母親(シングルマザー)は仕事を制限され、公的扶助に頼らざるを得ない状況に追い込まれているよ!

アメリカ】:アメリカも基本的な構造はイギリスと同じだよ!それでも出生率が高いのは黒人やヒスパニックの影響と、それからアメリカの宗教的・社会的特性が大きく影響しているよ!でも、母子家庭の貧困率はとても高いよ!

という感じです。

特にフランスと並んで家族関係の財政支出が非常に高いとされているドイツの状況は重要でしょうね。要するに、保育所のような子育てに必要なインフラ構築に十分なコストをかけることと、「家族のあり方」に関する多様性を社会が容認すること、この2つが揃わないとせっかくの財政支出も十分な成果に結びつかない可能性がある、ということですね。フランスメディアの記事なので、他国の状況を厳しく見ている面もあるとは思いますが。


まあ、僕は社会政策の専門家ではないのでこれらの状況分析が本当に正しいのかは分かりませんし、それぞれの国では社会的・文化的背景も違うでしょうから一様に語ることが出来ないのは確かです。

ただ、上の記事を読む限り、「イベント性」なんて全体の対策から見れば枝葉もいいところで、フランスの成功を分析するならば「十分な財政支出を行う」ということが大前提だってのは事実でしょうね。具体的な対策の方向性や分配方法などはその上で語るべき事案です。大前提を無視して枝葉の話をしたって意味がありません。

財政支出に関して正面から語らないのは、「小さな政府」を推進するご自身の主張と食い合わせが悪いからでしょうか。でも、そんな小手先の対策で事態が好転するような状況ではないと思いますけどね。

それにしても・・・

 3つめが、おそらく最も重要なことですが、「女性の機会費用」。これは子供を持つことによって失う利益です。たとえば、働く女性は子どもができると仕事を休まなければならない。子供ができるたびに仕事を休んでいては、その度に収入や社会的地位など、さまざまなものを失ってしまいます。だから、今や子供を産むことは、女性にとってかなり深刻な問題になっています。

という状況は分かっているのに、その対策が、

竹中 “秘策”と呼べるものはありませんが、最も重要なのは「仕事と家庭の両立」なんです。そこで私が提案したいのは、「新婚夫婦は無理して都心に住め」ということ。家庭と仕事を両立させる環境さえ整えば、少しは子供が産み易くなりますよね。

とかマジで馬鹿かと思いますよね。21世紀にもなって、マリー・アントワネットと同じ種類の台詞を臆面もなく吐けるとは・・・。