NTT,KDDI,ソフトバンクの2007年度連結決算が出そろった。固定通信事業の低迷に苦しむNTTグループと,携帯電話事業の好調で快進撃を続けるKDDIとソフトバンク──この対照的な状況は昨年から変わっていない(表1)。

表1●通信大手3社の2007年度連結決算と2008年度予想
数字は上段が売上高,下段が営業利益。
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表1●通信大手3社の2007年度連結決算と2008年度予想<br>数字は上段が売上高,下段が営業利益。

 NTTグループは売上高が前年度比0.7%減の10兆6809億円,営業利益が同17.8%増の1兆3046億円の減収増益だった。増益となったのは4期ぶりのこと。厚生年金基金の代行返上による特別利益の要因が大きいが,この特殊要素を差し引いても377億円の増益だった。

 これに対してKDDIは売上高が同7.8%増の3兆5963億円,営業利益が同16.2%増の4005億円で5期連続の増収増益だった。ソフトバンクも売上高が同9.1%増の2兆7762億円,営業利益が同19.6%増の3243億円で3期連続の増収増益。両社とも過去最高を更新し続けている。その好調を支えているのは携帯電話事業である。KDDIは売上高の約80%,ソフトバンクは同59%を携帯電話事業が占める。

 NTTグループも売上高の約44%を携帯電話事業に頼っているが,NTTドコモの決算が特別に悪化したわけではない。NTTコミュニケーションズとNTTデータの決算も増収増益。つまり,NTT東西地域会社の不調が響いている。

歯止めかからぬ音声収入の減少

 NTT東西は減収減益の傾向が止まらない。NTT東日本は2005年度,NTT西日本は2004年度から減収減益が続いている。それでも売上高は2兆円台を維持していたが,NTT西日本が2006年度に2兆円を割り込み,NTT東日本も2008年度に2兆円を下回る予想である。

 減収減益が続いている理由は,固定電話の契約数減少に伴う音声伝送収入の落ち込みである(図1)。特に加入電話契約数の減少が著しく,全盛期はNTT東西で6000万件以上あったが,2007年度末でついに4000万件を割った(表2)。ここ数年は年間350万件前後の減少が続いている。さらにINSネットの契約数も年間60万~70万件のペースで減っている。同時に通話時間が短くなってきており,固定電話のARPU(1契約当たりの月間平均収入)も緩やかに減少傾向にある。音声収入は東西を合わせて年間2500億円前後の減少が続く。

図1●NTT東西地域会社における音声伝送収入とIP系収入の推移<br>2008年度は音声伝送収入が東西を合わせて2兆円を割り込む見通し。IP系収入は1兆円を超える計画だが,音声収入の減少分をカバーできない状況である。
図1●NTT東西地域会社における音声伝送収入とIP系収入の推移
2008年度は音声伝送収入が東西を合わせて2兆円を割り込む見通し。IP系収入は1兆円を超える計画だが,音声収入の減少分をカバーできない状況である。
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表2●NTT東西地域会社における固定通信サービスの契約数
FTTHは2010年度に2000万契約の計画。
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表2●NTT東西地域会社における固定通信サービスの契約数<br>FTTHは2010年度に2000万契約の計画。

 NTT東西は音声の収入減をFTTHやADSLといったIP系サービスの収入増で補う意向である。その中心的な役割を担っているのがFTTHサービスだ。FTTHサービスのARPUは固定電話のARPUに比べて1.7~1.8倍高い。加入電話とINSネットを合計した固定電話の2007年度通期の総合ARPUはNTT東日本が3110円,NTT西日本が2960円。これに対してひかり電話を含めたFTTHサービスの2007年度通期の総合ARPUはNTT東日本が5300円,NTT西日本が5460円である。固定電話の契約数が減っても,FTTHサービスの契約数が増えれば収入減をカバーできるという算段が成り立つ。

 ただ現状は,IP系サービスの収入増を上回るペースで音声収入が減少している。加えて,これまで好調だったFTTHサービスも契約数の伸びに陰りが見えてきた。FTTHサービスの純増数は2005年度の約175万件から2006年度に約266万件と大幅に伸びたが,2007年度は前年度比でプラスは保ったものの,約270万件にとどまった。NTT持ち株会社は2007年11月にFTTHサービスの契約目標を従来の「2010年度に3000万件」から2000万件に下方修正しており,見通しは明るくない。