柯隆さん曰く

 ⇒asahi.com(朝日新聞社):五輪後の中国:間違った経済政策、早期転換無ければ社会亀裂リスクも - ロイターニュース - ビジネス

 富士通総研(FRI)経済研究所の柯隆・主席研究員は、中国経済北京五輪後も当面は規模の拡大を続けるとみる。ただ、銀行の貸出総量規制など現行の経済政策は「完全に間違っている」と指摘。早期に政策が転換されない場合は、株価のさらなる下落や雇用の悪化などにつながり、社会に亀裂が生じるリスクがあると警鐘を鳴らす。
 同氏は22日に行ったロイターとのインタビューで「貸出総量規制で市中の資金が不足し、企業経営が悪化している。株価が上がるはずはない。9月のパラリンピックが終わるまでに経済政策が転換されないと、秋ごろから中国経済はすごく危ない」と語った。
 その上で中国社会の格差が拡大している問題についても、胡錦涛政権が交代する予定の「2012年ごろに山場を迎え、亀裂や衝突が生じる可能性もある」との懸念を示した。

 概ねそのあたりになりそう。
 ただ、五輪でけっこう中国は社会ヒステリーになると私は思うので、突発事項の蓋然性はかなりあるんじゃないかとも思っている。突発なんでさしたる根拠もないし、ないにこしたことないんで。

―― 五輪後の中国経済の行方は。 
 「規模そのものの拡大は続く。2008-09年は07年ほどの高さではないにしても、10%前後の成長が続く見通し。ただ、経済の中身を検証する必要がある。今の経済政策は大きく間違っている。昨年から一気に景気引き締め政策を始動させたが、中央銀行はインフレ抑制のために引き締めたくても、通貨の安定を考えると利上げはできず、手足を縛られた状態だ。預金準備率の引き上げや手形発行による短期金融市場からの資金吸い上げを行っているが、インフレで熱は上がり、解熱剤になっていない」
 「そこで昨年7月には外科手術のように貸出総量規制を導入したが、これは完全に間違っている。市場経済と言いながら計画経済の政策を復活させたもので、多少熱が下がるようにみえても、実は体力の消耗になるだけだ」 

 そうこれ正しいと思いますよ。貸出総量規制のこと。
 こっちの本はちょっとポジショントーク臭い感じがした⇒極東ブログ: [書評]中国発世界恐慌は来るのか?(門倉貴史)
 話戻して。

 ── 実際に支障は出ているか。 
 「香港や深センを訪ねたが、民間企業は流動性不足に陥っている。今後、資金繰りが悪化し、経営をやめるケースが増えれば雇用が悪化する。中央銀行インフレ目標に対応した政策を取っており、物価に目が向く。ただ、今回の物価上昇は過剰流動性の問題ではなく、グローバルな食料・原油価格の高騰が背景。パラリンピックが終わるまでに総量規制を緩和しないといけない。水はダムに貯めてあるのに、喉が渇いて死にかけている人に水が流れていないのだから」  

 柯隆さん、さすが。しかし北京としてはここはむずかしいというかたぶんダメだと思う。というか、これ日本も同じなんだが。

 ── なぜパラリンピックまでに政策の転換が必要なのか。 
 「北京五輪国威発揚のイベント。中国では過去100年でこれほど世界に注目されるイベントはなく、待ちに待った一大イベントだ。五輪が作り出す表面的な繁栄や高揚感の中では経済の実態が見えにくいが、パラリンピックが終わった瞬間に人々の間に喪失感が広がる。2年後に上海万博があるとは言え、市民は簡単に切り替えられず、株や経済の実態に気づくだろう」 

 まあそうかなというか、けっこうガチにそうなんでもうわかっていても萎えるところ。ただ、先の「中国発世界恐慌は来るのか?」は次のイベントで盛り上がるとしている。
 ただね。どうも米国の雲行きが妖しいんですよ。
 ⇒Editorial - China’s Unreality TV - Editorial - NYTimes.com

According to Human Rights Watch, at least 10 foreign journalists, including Newsweek’s China bureau chief, have received anonymous death threats since they reported on the violence in Tibet. Government authorities have also used police intimidation and bribery to try to silence parents demanding an accounting for the reprehensibly shoddy construction that caused schools to crumble, killing thousands of children in the May 12 earthquake in Sichuan Province. Thousands of people have been evicted from their homes in Beijing as the city cleans up for international TV crews.

 日本ではあまり報道されない。

Corporate sponsors for the Games seem determined to look the other way. Most world leaders, including President Bush, also have been too silent. We accept Mr. Bush’s decision to attend the opening ceremonies, but we see no sign that he got anything for it .

 日本のメディアもね。しかたないのでしょうけどね。

The committee still has time to put in place minimal protections ? like a 24-hour hot line for journalists to report violations of media freedoms. Even with all of the intimidation, human rights advocates (and maybe some athletes) will likely try to use the Games to protest China’s repression. Beijing needs to know that the world will be watching how it handles that bit of reality TV.

 このあたりポーズとも言い切れないような。
 案外、米国のイスタブリッシュ側のリベラルはヒラリーがこけてかなり路線が狂っているのかも。つうか、こうした奇妙なバランスの上でブッシュが安定要素になっているのがなんか笑っていいのか泣いていいのか微妙。日本は暢気だよな。まあ、俺もな。
 ちなみに⇒「最高司令官バラク・オバマ」は適任か――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース
 柯隆さんの話に戻って。

 ── 政策が転換されない場合はどうなる。 
 「経済政策の是非を判断する最良のバロメーターは株式相場。上海総合指数が昨年、6000ポイントを超えた時はさすがに高過ぎて調整が必要と思われたが、これほど急激に半分以下の水準まで落ち込むのは明らかに間違った政策の影響がある。政策転換がなければ株価が2000ポイントまで落ちることも十分ありうる」
 「上海の個人投資家に聞き取り調査したところ、株への信用を失っている。中国には1億人以上の個人投資家がいる。退職金を全てつぎ込み、不動産を担保に借り入れして投資する人もいたが、株の失敗で自殺者が増えている。企業の経営をやめるケースが増えて失業率が上がれば、治安も悪化する。1番のリスクは雇用だ」 

 私はよくやったな下げ止まったかと見たし、中国の株って実際には政府統制だからそれほどたいしたことはないなと見ていたのだが。が、の話になるのかな。
 雇用はどうかな。そこも微妙だな。
 要は日本も中国も内需なんだけどね、うまくシフトできないんだよね。

 ── 日本は中国にどう向き合うべきか。
  「中国を生産拠点と位置づけてきた日本企業にとっては、人件費や原材料費の高騰や電力不足は悩みの種だが、中国に残らざるを得ない。既に中国の巨大消費市場に向け、販売を強化する日本企業も増えているが、中国を生産拠点としてきた企業も構造転換せざるを得ない。中国で売っていかないと生き残れない。中国の景気自体より、市場を調査し、中国人の好みに合わせて技術や商品を開発し、市場を作っていくことが大切だ」

 そう問われるとこう答える以外ないよな例。
 生産拠点は移ることができるし、ちょっとやばいこと言うようだけど、アジア諸国の市場は少し時間稼ぎになる。ただ。長期的には無理だし、率直に言って、中国の内需が回復しある程度起動にのるとしてもその先のビジョンがまるで思い浮かばない。
 というのは、経済がある水準になって民度が上がってあんなでっかい独裁国家が存在しえるというのが感覚的に想像を絶している、僕にはね。