原油が高値から反落した。これが本格的な調整の始まりかは何とも言えないが、下がること自体はホッとする動きである。世界的に景気は悪化していくのにインフレが高止まりする状況は、金融政策を始めとするマクロの経済対応としては対処が難しいためだ。
この状態は、特に金融システムが動揺する基軸通貨国の米国にとっては三重苦で、原油相場の落ち着きは「苦」の一つが取れたようなものである。スタグフレーション的な様相が通常の不況パターンになり、これはマーケット的にも分かりやすい経済情勢である。まあ、債券は買いやすくなるのではないでしょうか。 原油価格が安定化した場合、米経済が直面するリスクは「資産価格の下落」と「循環的な景気の下降」である。両者が相互作用して景気の谷がどの程度深くなるのか、またこれに伴う全般的なクレジットの悪化によって金融システムにどの程度の不良債権が発生し、それは改めて金融システムを動揺させるのか。なかなか読みは難しいが、これは日本が既に経験したものであり、初体験的な恐怖感を強く感じるものではないだろう。 似たような状況に直面した日本と米国の最大の違いはスピードでありましょう。米国の処理速度を日本の3倍とみるか、5倍とみるか、まあどっちでもいいのだが、日本が10年かかったものは2-3年で終わるのだろう。問題はやはり谷の深さ。処理が速いと谷は深く、しかし回復は急である、というように考えられるが…。どうなんでしょう。 この間、基軸通貨ドルの信認が揺らぐかどうか。「海の色」は変わるかどうかなんですが。これはドルを信じる、信じないの問題であり、信じないより信じ続けたまま米国には立ち直ってもらった方が世界にとっては痛みの少ないシナリオなので、信じましょう。信じる以外に現実的な選択肢はないですから。 まあ、ざっくりしたビューはこんなもんです。
by bank.of.japan
| 2008-07-25 22:10
| マーケット
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Comments(9)
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飛車@越南
at 2008-07-25 22:40
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不良債権処理が、「銀行の貸し出し先を金融庁調査と称して無理やり不良債権認定してBSを債務超過に見せかけて公的資金注入の大義名分を作ること」であるなら、無理やり不良債権扱いされた企業の倒産が連鎖して谷も深くなるでしょうが・・・。また、日本は都市博中止、消費税増税、2000年の利上げなどがコンボでクリティカルヒットした訳で、これを不運と見るか、必然と見るか考えたら、日本の不況の長期化は必然だったと思います。アメリカはそんな事するかなぁ。
ところで、ドルの信認って毎度毎度アメリカが不景気になると出てきますが、単に景気が悪いところは金利が先安傾向で為替が下がるの必須だから嫌ってる人が多くなるだけで、景気が循環してインフレ率がしっかり戻ってきて利上げが見込めるようになったら、またぞろ「やっぱりドルだね」という事になるだけじゃないかと思います。金融関係の方は、お金に色は無いということを一番良くわかっている人たちのはずなのに、こういう言い方をするので、ポジショントークを疑ってしまいますw
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A-
at 2008-07-25 22:48
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原油が下がってホッとしてる者の一人です。
日本は不良債権の穴を埋める担保に資源を持っていなかったが、アメリカはそれを持っているわけです。ですから日本よりは回復が早いのではないでしょうか。従って原油の儲けを不良債権の穴埋めに使っているとすれば、原油が下がったということは穴が埋まってきているということなのかな、、。アメリカはリボルバーのような国ですから、次の弾装には公共工事で内需拡大なんて弾が詰まっているかもしれないなあなんて空想します。
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walrus
at 2008-07-25 22:58
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ITバブル崩壊後の実効ドルレート(名目、実質とも)の下がり方は、住宅バブル期においても一貫して生じていた点において、非循環的ドル選好の弱化と映ります。まあ、人民元要因が大きかったのも承知してはおりますが、将来的に米が利上げできないなかで湾岸諸国がドルペッグ離脱ともなれば、ドル安はもはや歴史的トレンドとの評価が定着しそうな気がします。
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bank.of.japan
at 2008-07-26 01:34
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飛車@越南さん、どうもです。米国は日本とは違ってリスクテーカーが多いので、仮に倒産が起きても立ち直りは早いように思われます。日本の事例はよく研究しているようなので、デメリットになることは避けるとは思いますが。ドルの問題は、逆説的には多くのポジションを持っているので、ドルの調整を恐れるムードが強い印象です。いずれにせよ管理通貨制度の中での一時的な調整にとどまり、さほど深刻化しないとは思っております。
A-さん、どうもです。資源面では日本よりも余力は大きいとは思います。不況が強まるにつれ、財政刺激策に傾斜する可能性は高いと予想されます。 walrusさん、どうもです。ドル相場は上昇より下降のリスクが大きいように思われます。となった場合、日本はデフレ圧力の増大となるのでしょうか。原油が落ち着けばCPIはまたゼロ近傍かもしれません。
先日都内のあるシティバンクの支店で、「なぜ利息禁止シャリアの中東が、しかも
一説には相応しくない業種とされてる金融業のシティバンクに融資したのでしょう」 などと ふと質問してしまった。そのあと同じくふと 「利子(=借りた側がつける)というよりは コミッションか何かという名目だったのかもしれませんね」 等と お話したら、行員さんも何となく納得された御様子で頷かれた様だったのですが。 最近、結構よく聞く話という気もしますが、「世界最大の年金資金」は、現在、 日本の、「GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)」、らしいですが、 たとえば、 アメリカの、メリルリンチやあるいは先程のシティ等々・・・が膨大な損失を生じて いるその一方で、ゴールドマンサックスは逆に大儲け、などというようなありかたの ほうが、「リスクは分散されてる」という感じは漠然としてしまう。
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小 野 (東京都港区)
at 2008-07-27 19:31
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というより、もし長期金利が今後上昇、それも、今より少し上昇、した時に、ああした
一極集中的な資金のありかたで、はたして本当に大丈夫なのかどうなのだろうか? そうした事の方がむしろよほど気になってしまいます、あくまで、私個人はですが。 「保有資産の多くが債券」ならば尚の事。儲かる所も損する所も有り場合によっては 中東でも中国でもあらゆる方法で資金調達するという方が「健全」ではないか?、と。 ( urlは、「GPIF」等の事が載ってる様でしたので、リンクさせて頂きました。 )
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小野
at 2008-07-27 21:08
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利息や利子の使い方があいまいのようだったかもしれずすいません。要は「コミッション、というのもたんなるその場の思いつきあてずっぽう」、と言う事です。
( どういう理由か名目か。等々々。私には未だに皆目判りません。 ) それと、2番目も、長期金利ではすこしまえ例のVaR(バリューアットリスク)ショックなどというのもご承知の通りありましたし、もっと他により適切な表現等もあったかもしれません。
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なまえ
at 2008-07-28 20:52
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>信じましょう。信じる以外に現実的な選択肢はないですから。
こういう根性なしがアメリカを甘やかして社会を悪くするのですな。死んだ方がいいように思います。
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bank.of.japan at 2008-07-28 22:20
小野さん、どうもです。イスラム金融に詳しいわけではないですが、宗教的に利息が禁止されている場合、文字通り利息を取らないと金融が成立しないので、別な形で利息分の収入を取っているだけだと思います。呼び名の問題かもしれません。
なまえさん、どうもです。信じないことによる経済的打撃に耐える覚悟はなかなかできなように思えます。ドル建て外準を膨大に持つ政府も、数兆円も持つ日銀も死ぬことは考えていないので、現状のまま保有し続けるように思われますが。
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