Spencer F. Katt

ビル・ゲイツ勇退に大騒ぎの謎

2008/07/17


 どうして人々は、ビル・ゲイツがマイクロソフトの日常的な経営から身を引くことに、それほど感傷的になるのだろう? 

 彼がどこか遠くへ行ってしまうわけでもあるまい。家族の慈善団体や個人的な投資活動にかかわる時間を増やすだけなのに。まさかマイクロソフトの将来を左右する重要な意思決定からも外れると思っているのだろうか? もしマイクロソフトが大きなトラブルに直面したら、おそらく彼は弾道ミサイルのような勢いで空から役員室へ舞い降りるに違いない。

 吾輩はビルの勇退に祝杯を挙げこそすれ、悲嘆にくれることなどないね。もちろん、これからもこのコラムで彼のウワサや皮肉、富豪伝説をことあるごとに取り上げるつもりだ。読者はこの先も、ビル・ゲイツの名前やおなじみの風刺を定期的に目にすることになるだろう。

 まぁ、それはともかく、ビルの”リタイアメント”が話題になっていた6月25日、吾輩はニューヨークで開催されたイベント「Pepcom Digital Experience」の会場で、展示されていた最新のガジェットに夢中になっていた。

 このイベントでは、ノキアのiPhoneもどきの新製品も目を引いた。ユニットの出来栄えはなかなかよかったが、ノキアはおそらくアップルの利益を奪い取ることはできないだろう。だって価格が高すぎるもの。プライスタグは500ユーロ、景気後退の逆風を受ける米国通貨では、なんと600ドル以上になる。次世代のトレンディなデバイスに目がない一部のモバイルマニア以外は、ちょっと手が出ないね。

 そんなことより、吾輩の興味はすぐに会場のビュッフェに移った。テーブルの上に並んだシュリンプとラム・カバブーの一区画を根こそぎ平らげ、アイヨリソースたっぷりのニューヨーク風スライダーバーガーを次々と口へ放り込んでいたら、さすがに大食漢の胃袋もはちきれそうになった。

 それはさておき、先日潜入したイベント「Enterprise 2.0」の取材メモをチェックしていると、プロキシミックの共同創立者フィリップ・ピーパーが「グーグルに敵対するつもりはない」と話していたことに、いまさらながら首をかしげたくなった。

 創業してまだ日の浅いコンテキスト連動型広告会社のCEOは、「グーグルは検索市場におけるマイクロソフトのようなものだ」とコメントする一方で、「プロキシミックはロングテール型コンテンツプロバイダのための、Linuxライクなオールタナティブを目指す」と矛盾するようなことを述べていたからだ。

 対立するポジションの間で、心は揺れ動いているのかもしれない。プロキシミックはキーワードではなく、キャラクタパターンに適合した広告を配信する。ターゲットに正確に広告を打てるため、比較的小規模なブログやWebサイトにはグーグルのAdSenseより効果的だ、とピーパーは確信している。

 そのため、LinuxオペレーティングシステムがWindowsに飽きた人々やマイクロソフトの独占を嫌う人々に支持されているように、プロキシミックも小さな異端的なコンテンツプロバイダの収益化に活路を見出したい考えだ。

 プロキシミックがすでにグーグルとビジネス関係にあるかどうか、吾輩はピーパーに確認したが、彼はコメントを拒否した。しかしその一方で、彼は次のように述べている。「グーグルの広告をぜひわれわれのシステムに組み込みたい。彼らにはバブリッシングサイドで非常に優れた資産がある。DARTサーバを持つダブルクリックは、テキストベースの広告配信ではベストだ。もし競合しないタイプの広告と組み合わせることができるなら、敵対するのは馬鹿げている」

 どうやらプロキシミックはグーグルとビジネス関係にはないようだ。ただ、彼らが切実にそうなりたいと望んでいることも間違いなさそうだ。

[英文タイトル] Toasting a Favorite Source

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