ビル・ゲイツ、去る――1つの時代に幕(1/7 ページ)

Microsoftの共同創立者であるビル・ゲイツ氏は、コンピューティングを、ビジネスを、そしてわたしたちの生活をどう変えたのだろうか。

» 2008年06月30日 05時29分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

 ジョン・D・ロックフェラー、ヘンリー・フォード、アンドリュー・カーネギー、そしてビル・ゲイツ。

 今となっては、ゲイツ氏がこうした歴史上の偉大なビジネスマンと肩を並べているという事実に、異論を唱える者はいない。同氏が際だっているのは、技術的な知識と戦略的なビジネス思考、さらには非常にすぐれた交渉力のすべて持ち合わせている点だ。こうした才能を発揮した人物は、ゲイツ氏の世代には見当たらないし、過去にも数えるほどしか存在していない。

 ゲイツ氏は今もMicrosoftの会長を務めているが、日常的な業務からは6月27日をもって引退した。一大ソフトウェア帝国として名を馳せるMicrosoftは、およそ8万4000人の社員を抱え、年商680億ドルを稼ぎ出す企業へと成長している。ゲイツ氏は今後、自分の時間のほとんどをBill & Melinda Gates Foundationでの活動に充てるという。

 ゲイツ氏は約40年前に、テレタイプを介した時分割方式ミニコンピュータのプログラミングから仕事を始め、コンピューティングやビジネス、人々の生活を一変させた。そうした過程で同氏は米国一の資産家となり、現在では、往年の実業家と同様にその大半を慈善事業に捧げている。

 コンピュータ業界におけるゲイツ氏の同輩には、技術的に傑出した人物が多い。だがそんな秀才たちも、ビジネスセンスに関しては、最高クラスどころか優良レベルにも達していないことがほとんどだ。

 逆もまた然りである。すなわち、技術界にも脚光を浴びる花形事業家は数いるが、ゲイツ氏ほどテクノロジーに傾倒した人物はまず見かけない。

 しかし、10代ではまってからプログラミングを愛し続けているゲイツ氏ではあるが、ビジネスと技術を天秤にかけるときは、常に前者に、そして何より利益に重きを置くという特徴も持っている。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のシュッセル一族任命教授で、MITのCenter for Digital Business所長でもあるエリック・ブリンジョルフソン氏は、「ゲイツ氏が有している技術およびビジネスに関する知識は、一頭地を抜いている」と話す。「同氏は優れた技術的知識を持っているが、Microsoftの成功は、技術知識よりむしろ彼のビジネス知識やスキルによるところが大きい。ゲイツ氏は極めて聡明で、最新の経済理論の上を行く考え方をする。新たな実践法を開拓し、競争相手をことごとく打ち破った」(ブリンジョルフソン氏)

 その結果生まれたのが、コンシューマーゲーム機からシステム管理ソリューションまで、幅広い分野に及ぶ製品を擁する巨大ソフトウェアベンダー、Microsoftだ。10億人近いインストールベースを誇るWindowsを拠り所に、同社はWeb 2.0界における支配的立場の維持に積極的に努めている。

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