ITサービス会社の2007年度決算が出そろった。特筆すべき点は、「売上高3000億円」を超える上位グループの中で、徐々に差が広がっていることだ。

 売上高1兆円を超すNTTデータを除くと、大塚商会(2007年12月期の連結売上高4694億円)と野村総合研究所(NRI、2008年3月期の連結売上高3422億円)の2社が一歩、飛び出した格好だ。これらを追うのが日本ユニシス(同3377億円)、TISとインテックホールディングが合併して4月に誕生したITホールディングス(IT HD、同3224億円)、そして伊藤忠テクノソリューションズ(CTC、同3192億円)の3社である。

 売上高だけ見ると、5社の差は小さいように思える。売上高の伸び率では大塚商会が8.3%増で、NRIは6.1%増だった。これに対して日本ユニシスは9.9%増、CTCが8.5%増で、むしろ大塚商会やNRIを上回る。

 だが日本ユニシスやIT HD、CTCの数値は、いずれもM&A(企業の合併・買収)を推進した結果である。M&Aを実施しなければ、2007年度決算は3社ともマイナスかマイナスに近い結果だった。

 大塚商会とNRIの2社は、M&Aに頼らずに業績を着実に伸ばし、利益率も改善している。2社ともアウトソーシングやサービス商品など収益性の高いビジネスに経営資源を注力し、事業を拡大させてきたことが奏効している。

 例えば大塚商会は、オフィス通販事業である「たのめーる」を始めとするASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)事業が業績拡大に貢献した。NRIでは証券会社向けなどに開発した共同利用型サービスやアウトソーシングが、売り上げを大きく引っ張る原動力の一つとなった。

 販売力にも差が出てきた。とりわけ大塚商会は、営業を支えるバックヤードの仕組みを充実させるだけでなく、大手ITベンダーに対する強い交渉力も持つようになった。NRIは固定顧客をしっかりつかみ、ストックビジネスを広げている。

 一方、日本ユニシスやIT HD、CTCの3社は、M&Aに多くの時間が割かれているためか、サービス商品の開発では後手に回っているように見える。最近になって新しいサービス商品を相次いで発表しているが、業績に大きく貢献するのは1年先だろう。M&Aのシナジー効果を発揮するには、もう少し時間がかかりそうだ。

 むしろ3社は、海外展開を積極的に進めることで、活路を見出そうとしている。

 日本ユニシスとCTCの場合は、インドのITサービス会社との提携を推進している。日本ユニシスは08年2月にインフォシス・テクノロジーズと、CTCは08年4月にウィプロ・テクノロジーズと手を結んだ。オフショア展開やサービス商品の開発に弾みをつけるためだ。ただし「現在はまだ調整を進めている段階で、体制固めなどを協議中」(CTC)と、詳細な内容はまだ決まっていない。

 このほかIT HDも海外展開を視野に、今後の中期経営計画を策定するという。

 ただし課題もある。日本ユニシスとCTCはパートナーとしてインド企業を選択したが、インド企業は日本企業の下請けに甘んじる考えは毛頭ない。単に日本人の技術者不足を補うための提携では、インド企業の魅力をうまく引き出せないし、成果を生まない可能性すらある。

 インドのITサービス会社を活用するには、どうすべきか。米IBMや米マイクロソフト、独SAPなど欧米のITベンダーがインド企業と提携した理由は、研究・開発の強化にあった。インド人技術者の数ではなく、技術力の高さを買っているのだ。日本企業もオフショア展開より、インド企業とのサービス商品の共同開発に注力すべきだろう。

 日本のITサービス会社の営業利益率は、わずか数%にとどまるが、インド企業は30%を超える。インド企業の優れている点をもっと学び、海外に通用するほどのサービス商品を思い切って作り出さないと、上位グループの一角を守るのも難しくなる日が訪れるかもしれない。