最終回・MBAの理想と現実――卒業して分かったことロサンゼルスMBA留学日記(1/3 ページ)

» 2008年06月23日 14時12分 公開
[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)卒業。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 私事で恐縮だが、先日MBAを卒業した。これにてようやく、2年間の留学生活にピリオドが打たれたこととなる。最終回となる今回は、ビジネススクールのメリット・デメリットについて改めて振り返ってみよう。

 本連載の第1回目、筆者は「MBAには本当に価値があるか」について書いた。その後、留学生活が進むにつれて、もっと生々しい部分も見えてきている。語学力向上、就職、勉強の内容など、さまざまな角度から、本音ベースで検証してみよう。

筆者が通っていたUSC・ビジネススクールの校舎

現実その1:やっぱり聞き取れない英語

 MBA留学したというと、「じゃあ英語はペラペラなんでしょ?」という扱いを受けることがある。例えば日本オフィスから海外に電話をかけて、外国人が出ると「あ、英語で話さないといけないんで、新崎さん、電話代わってもらえますか」と受話器が回ってくる……といった具合だ。

 MBAの学生はみんな英語ペラペラ――これは残念ながら、嘘だ。なにを隠そう、筆者は英語がしゃべれない。もちろん授業が全部英語で、教科書も英文という中、ちゃんと卒業できるだけの成績を取得しているのだから、まったくしゃべれないわけではない。それでも、ペラペラというには程遠い。

 MBAの学生にも2種類ある。もともと帰国子女で、英語はペラペラだという人間と、海外で暮らすのは初めてで、英語を必死に覚えつつ日々を乗り切っていく人間とである。後者は一般論として、英語の聞き取りにかなり苦労する。先日も入学1年目の後輩と話していたが、「ネイティブ同士の日常会話はいまだにサッパリ分からない」とこぼしていた。筆者はこれに深く同意してしまう。正直、速すぎて分からないのだ。

筆者が使っていたテキストの一部。もちろん英語で書かれている

 MBA留学する人間はTOEFLを受験し、ビジネススクールの合格基準を満たすだけの点をとっている。筆者の場合、TOEFLのCBT(コンピューターベーステスト)で270点(iBT:インターネットベースに換算すると110点)をとった。この程度の語学力の人間が2年間米国で過ごして、テレビニュースのきれいな発音の英語がどうやら聞き取れる程度。日常会話となると、また話が違うのだ。先日も、赤坂のラーメン屋でネイティブ同士が会話していたので、聞き耳を立ててみたが、何のことやらサッパリだった。しょせんは、そんなものだ。

 もちろん、ネイティブ以外の話す英語だと聞きとりやすい場合もあるし、ネイティブでも教授が生徒に話しかけるようにゆっくり、はっきり話してくれるとちゃんと分かったりする。だが、雑談ぽくバーッと話されるとお手上げ。これがMBAの現実だ。

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